組織の中に自ら「敵」を組み込み、外部の敵を倒す法

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ルーツはカトリック教会の「悪魔の代弁者」

 今、多くのビジネスマンは、二つの戦いに追われているかもしれない。一つは勝手知ったるライバル企業との戦い、そしてもう一つは今はまだ視界に入ってきた程度だが、次世代において大きな脅威になりうる新たなライバルとの戦い。現在と未来、二つの時間軸での戦いを同時並行に行わなければならないのは、変化の速い現代社会の宿命である。

 もちろん数字的なインパクトが大きいのは前者のほうだ。しかし、次世代における戦いは、会社を二つの世代へと分断しかねない大きなリスクが存在する。その小さな綻びから、やがて企業ガバナンスをめぐる問題へとつながっていくケースも多いだろう。

 このような問題を表面化させないためには、一体どのような手を打てばよいのか? 一つの回答を示しているのが、本書で紹介される「レッドチーム」という考え方だ。レッドチームとは、シミュレーションや欠陥テスト、代替分析を組み合わせて、組織や戦略の穴を見つけるための体系化されたプロセスを指す。

 このように書くと、きわめて冷静な手法のように思えるかもしれない。しかし、そのルーツがカトリック教会の聖人認定を厳格化するための「悪魔の代弁者」という役職にあり、その後アメリカ軍にて育まれたということを聞くだけで、ただならぬ雰囲気が伝わってくることだろう。

 本書は、今や欧米の民間企業でも広く運用されるようになったレッドチームの手法を内側から明らかにした一冊である。著者は200人を超える優秀なレッドチーム実践者とその仲間へのインタビューを通して、さまざまな分野における事例を集めてきた。

 優れた経営者やマーケティングの戦略家たちが、戦争という究極の戦いから学ぶべき教訓は多い。「レッドチーム」という言葉も冷戦を境に使われ始めたものだが、標準的なプロセスとして取り入れられたのは2000年代以降である。中東をめぐる、新たな敵との非対称な戦いを通じて、その手法は磨き上げられてきた。

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