X線天文衛星「ひとみ」が残したデータから新発見。ペルセウス座銀河団の高温ガス運動は予想より穏やかだった

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宇宙航空研究開発機構(JAXA)が、X線天文衛星ASTRO-H「ひとみ」が通信途絶に陥る前に試験観測していたデータの研究結果を発表しました。ペルセウス座銀河団を観測したこの分析結果からは、銀河団の中心にある巨大ブラックホールからのジェット噴流が周辺の高温ガスに考えられていたほどの影響を与えていなかったことがわかりました。分析研究にあたったのはASTRO-H「ひとみ」のプロジェクトメンバー250名からなる研究チームで、衛星に搭載していた軟X線分光検出器(SXS)を使い打ち上げ約1週間後から試験的に観測していた合計23万秒にわたるペルセウス座銀河団の観測データを調べまとめました。

ペルセウス座銀河団には100以上の銀河があり、その中心付近は強大な重力によって引き寄せられたガスが5000万度という高温になっています。またその中心にある巨大ブラックホールからは宇宙ジェットと呼ばれるほぼ光速の高エネルギー粒子が放出されています。これまでのX線観測では、この宇宙ジェットが周囲の高温ガスを押しのけているのが確認されており、これにともなって高温ガスが激しく動いているものと考えられていました。

ところが、従来の20倍の高解像度を持つASTRO-H「ひとみ」搭載のSXSで観測したデータを分析すると、銀河団中心から10万〜20万光年あたりでは宇宙ジェットの力よりも高温ガスの熱的な圧力のほうがはるかに高いことが判明し、意外とジェット噴流がガスに影響を与えていないことが判明しました。

この研究結果は7月7日付のNature誌に掲載され、世界に配信されました。JAXAはASTRO-H「ひとみ」が通信途絶になるまでに「複数のX線天体に対して全観測機器で試験観測中だった」としており、今後も新たな研究結果が発表されることも考えられます。

ただ、これらはすでに失われた衛星が残したデータをもとにしたもの。この研究をもとにもう一歩踏み込んだ観測をしたり、当初予定していた巨大ブラックホールが銀河形成に果たす役割および引き起こされる時空の歪みの研究、さらにダークマターや暗黒エネルギーが宇宙の形成にどんな役割を果たしたかといった研究を遂行するには、代替の新たなX線天文衛星の登場を待たなければならないのかもしれません。