今季の女子メジャー第3弾、全米女子オープンが現地7月7日(〜10日)に開幕する。

 今年の開催コースは、カリフォルニア州北部のサンマーティンにあるコルデバレーGC。サンフランシスコから南へ1時間あまり、近くにはIT企業が集まるシリコンバレーがある郊外に立地する。そんな都会の喧騒から少し離れた場所には、のんびりとした丘陵地が広がっていて、コースはその丘陵地のガーリック畑やワイナリーに囲まれた中にある。

 同コースは、ロバート・トレント・ジョーンズJrが設計。開場は1999年と歴史は浅いが、かつて男子のPGAツアー、フライズ・コムオープンが開催されてきたタフなコースだ。

 距離は長く、全長6784ヤード(パー72)。グリーンは大きなアンジュレーションと傾斜がある。ひとたび風が吹くと、その難易度はいっそう増す。

 その難コースで行なわれる全米女子オープン。今回は女子メジャー最高峰の戦いというだけでなく、リオ五輪の出場をかけた最後の決戦の場でもある。同大会終了後の世界ランキングによって、出場権を獲得する選手が確定するからだ。

 五輪の出場規定から、日本勢のリオ五輪出場枠はふたつ(※)。すでにひと枠は、今季米女子ツアー2勝を飾って、世界ランキング22位(7月7日現在。以下同)の野村敏京(23歳)で確定している。熾烈なのは、もうひと枠の争いだ。
※リオ五輪の出場資格を得られるのは、男女とも60名。7月11日時点で(1)世界ランキング上位15名(各国最大4名まで)の選手。(2)16位以下の選手は、1カ国2名が上限(15位以上の有資格者も含む)。日本の女子選手は(2)の条件に当てはまり、日本人選手の中で世界ランキング上位2番目以内に入れば出場権を得られる。

 可能性があるのは、世界ランク42位の大山志保(39歳)、同45位の宮里美香(26歳)、同46位の渡邉彩香(22歳)。3人とも、今回の全米女子オープンに参戦する。それぞれのポイント差は非常に僅差で、今大会の結果がそのまま出場権獲得につながることは間違いない。

 一歩リードしている大山は、首痛を抱えていて日本ツアーでは欠場が続いていた。しかし、五輪出場への情熱は人一倍。"最終決戦"の場となる全米女子オープンには、強行出場を決めた。

「これが、7週ぶりの試合。練習不足だけど『もうやるしかない』、そう思って渡米してきた。でも、こっちに来てからは気候の影響もあるのか、(首の)痛みはよくなってきている。五輪という舞台を目標にして、ここまでがんばってきた。こんなチャンスは2度とないので、そのチャンスをモノにしたい」

 39歳の大山。昨季5位タイと奮闘した大会で再び上位争いに加わって、悲願の五輪切符を手にすることができるのか、注目だ。

 大山に続く宮里は、今季はショットの安定感が抜群。フェアウェーキープ率は81.12%、ツアー3位と高い数字を誇る。昨季から好調なパッティングもその調子を維持している。

 だが、今季はここまで、メジャーではいい成績を残せていない。もともと大舞台で力を発揮するタイプながら、メジャー第1戦のANAインスピレーションが56位タイ、第2戦の全米女子プロ選手権(KPMG女子PGA選手権)でも50位タイと振るわなかった。その要因について、宮里は「気持ちが入りすぎているというか、自分にプレッシャーをかけすぎたりしている」と言う。

 それだけに、今大会に向けてはできる限り平静を保つように務めていた。宮里が語る。

「メジャーは、どれだけ平常心でプレーできるかが重要。あまり(メジャーということを)意識しないでやりたい」

 今季は「五輪出場」を目標に掲げてきた宮里。ここ数カ月はその話題をあえて遠ざけてきたが、最後の"大一番"を前にして、もはやジタバタすることはない。やや開き直って、こう決意表明した。

「もう何もできない。自分ががんばることしかできないので、考えすぎずにやっていこうと思う」

 現在のランキングでは、大山、宮里に続く存在だが、五輪出場にかける思いは彼女たちにも負けていないのが、渡邉だ。土壇場での逆転五輪切符獲得へ、凄まじい闘志を見せている。

 実際、そのチャンスはある。そして渡邉自身、その手応えを感じている。自慢の飛距離を武器にして、難コースを前にしてもまったく怯(ひる)むことがないのだ。

「(危険な)フェアウェーバンカーも超えていけるので、十分に戦えると思う」

 さらに、昨年までは小技が課題だったが、シーズン前のオフ、五輪代表監督を務める丸山茂樹プロに付いて、ショートゲームを徹底的に磨いてきた。その成果もあって、優勝こそないものの、今季日本ツアー(15試合出場)では一度も予選落ちがなく、トップ5フィニッシュが7回。賞金ランクは日本人トップの4位につけている。

「今季、それなりの結果が残せているのは、やっぱり小技が上達したから。100ヤード以内のウェッジショットの精度がよくなったので、バーディーチャンスが増えて、バーディーを取れる確率が上がった(平均バーディー数1位)」

 飛距離に加え、小技のレベルもアップした渡邉。五輪の出場権獲得だけでなく、今大会の"台風の目"になってもおかしくない。が、渡邉の目標は、あくまでも五輪。そのために「全力を尽くす」と笑顔で語る。

「(五輪出場を)意識しないのは無理。それでも、ようやくここまで来られたのだから、いいプレーができればいいな、と思う」

 さて、白熱するリオ五輪の出場権争いも見逃せないが、純粋に注目したいのは、総勢10名が出場する日本人選手の活躍だ。

 最も優勝に近いのは、すでに五輪出場も確定させている野村。前週のトーナメントは休養にあてて、リラックスした表情で会場入り。その後、入念に練習ラウンドをこなして、コースの状態を確認した。

「メジャーだから、やはり我慢していかないと。その辺が(勝敗を分ける)ポイントになる。もちろん、この試合は勝ちたい。そのためにも、普段の試合よりもさらにリラックスしてプレーしたい」

 前週のキャンビア・ポートランドクラシックで、今季初のトップ10入りを果たした横峯さくら(30歳)の調子も上向きだ。爆発力があって、2014年の全米女子オープンでは7位と健闘。再び上位進出なるか、期待が膨らむ。

 日本からは他に、原江里菜(28歳)、佐藤絵美(24歳)、松森彩夏(22歳)、堀琴音(20歳)、アマチュアの澤田知佳(17歳)が出場。それぞれ、世界最高峰の舞台でどんなプレーを見せてくれるのか、注目したい。

 優勝候補の本命は、メジャー第1戦のANAインスピレーションを制した世界ランキング1位のリディア・コー(19歳/ニュージーランド)と、18歳で全米女子プロを制した世界ランキング2位のブルック・ヘンダーソン(カナダ)。10代ふたりの勢いは増すばかりで、今大会も両者の争いに注目が集まっている。

 もちろん、米女子ツアーで絶大な勢力を誇る韓国勢も無視できない。ティーンふたりの躍進にストップをかけようと、実力者たちが虎視眈々と頂点を狙っている。

 例年以上に注目度が高まっている全米女子オープン。カリフォルニアの澄み切った青空の下、まもなく決戦の幕が切って落とされる。

武川玲子●文 text by Takekawa Reiko