ミロシュ・ラオニッチが、テニスの聖地で快進撃を続けている。

 ウインブルドン準々決勝で、第6シードのラオニッチ(7位、カナダ、6月27日付け、以下同)は、第28シードのサム・クエリー(41位、アメリカ)を、6−4、7−5、5−7、6−4で下して、2年ぶりに2度目のベスト4進出を果たした。今季では、オーストラリアンオープンに続いて、2度目のグランドスラムベスト4となる。

 クエリーは、3回戦で大会3連覇を目指していた第1シードのノバク・ジョコビッチ(1位、セルビア)を、2日がかりで破るというビッグアップセットを演じて勝ち上がってきた。一方、ラオニッチは、4回戦で第11シードのダビド・ゴフィン(11位、ベルギー)に対して、2セットダウンからの大逆転勝ちを収めてベスト8に駒を進めた。

 2人とも長身でラオニッチが196cm、クエリーが198cm、長いリーチから放たれるビッグサーブが最大の武器だ。

 特にラオニッチは準々決勝で最高時速225kmのサーブを決め、ファーストサーブの平均スピードは時速194kmとすこぶる速かった。ファーストサーブでのポイント獲得率は87%に達し、ウインブルドンでのグラス(天然芝)コートで強さを発揮した。

 だが、それ以上に準々決勝の勝負を分けたのはラオニッチの積極的なネットプレーだった。

「もちろんミロシュが、ビッグサーブを持っているのはわかっていたけど、彼のネットプレーに本当に感心した。ボレーのミスが本当になかった」(クエリー)

 クエリーに対してネットに出続けて、プレッシャーをかけ続けたラオニッチは、準々決勝で、サーブ&ボレーを42回試みて33回ポイントにつなげ(79%成功)、ベースラインのプレーからは47回ネットに出て35回ポイントにつなげた(74%成功)。これだけ高い確率でネットプレーを成功させたラオニッチに、クエリーが重圧を受けたのも無理はない。

 そして、このネットプレーの成功はグラスシーズンに指導を仰いだジョン・マッケンローとの取り組みがうまくいっている証しに他ならない。

 ウインブルドンが始まってからは、マッケンローには地元テレビ局BBCの解説の仕事があるため、毎回練習に顔を出すことはできない。ラオニッチがナンバー1コートでプレーをしていたときは、センターコートで同時進行のもうひとつの準々決勝をマッケンローが解説していた。

 だから、ラオニッチはマッケンローとよく電話で連絡を取り合って、助言してもらっている。ウインブルドンが始まってから、マッケンローはネットプレーの技術だけでなく、ラオニッチの試合へ臨む姿勢にも注文をつけている。前向きな仕草や表情をして、より大きな存在感をアピールし、今までとは違うラオニッチを見せることが大切なのだという。これが積極的なネットプレーにもつながり、高い成功率を導いている。ラオニッチは技術や戦術だけでなく、自分の印象にも注意を払いながら試合を進め、好結果につなげてきたのだ。

 準決勝でラオニッチは、マリン・チリッチ(クロアチア、13位)を大逆転で下した第3シードのロジャー・フェデラー(3位、スイス)と対戦する。2年前のウインブルドン準決勝でもフェデラーと対戦しており、そのときは4−6、4−6、4−6で敗れている。対戦成績は、ラオニッチの2勝9敗だが、直近の対戦である2016年のATPブリスベン大会の決勝では、ラオニッチが6−4、6−4で勝って優勝している。

 ラオニッチはマッケンローのポジティブ思考が身についてきたのか、フェデラーと対戦したかったと力強く宣言する。

「僕と僕のチームには、はっきりとした目的と同じゴールがある。だからこそ、ジョンが喜んで加わってくれたんだと思う。それらを成し遂げるためには、ベストトーナメントでベストプレーヤーを破らなければいけない。この機会を楽しめたらいい」

 ベストトーナメントである"ウインブルドン"で、ベストプレーヤーである"フェデラー"を破る――。これこそが、ラオニッチがやり遂げたいことのひとつであり、彼の真価が問われる一戦になるといっても過言ではないだろう。マッケンローの助言をラオニッチが活かして、今の勢いに乗じれば、勝機は十分にある。そして、芝の王者を破ったとき、彼のコートでの存在感はより大きなものになるに違いない。

神 仁司●文 text by Ko Hitoshi