青木玄徳 「一期一会の精神」を胸に臨む初の座長  『瞑るおおかみ黒き鴨』で再び斎藤 一に!
ミュージカル『テニスの王子様』の最強俺様キャラ・跡部景吾役でデビューして以降、なぜか次々と舞い込んできた冷静かつニヒルな役のイメージで見られることが多いという。「最近は、そういう部分が僕の本質にあるんだと思い込み始めてます(笑)」。そんな青木玄徳が、これまで演じてきた役柄の中でも特別な思い、そして今後さらに育っていくという予感を持っているのが昨年、舞台『もののふ白き虎』で演じた新撰組隊士・斎藤 一役である。続編にあたる『瞑るおおかみ黒き鴨』で再び斎藤役を任され、満を持して舞台初主演を務めることになった青木にじっくりと話を聞いた。

撮影/川野結李歌 取材・文/黒豆直樹 制作/iD inc.



維新以降、『るろ剣』以前の“知られざる”斎藤 一にワクワク!



――前作『もののふ白き虎』は幕末の戊辰戦争(新政府軍vs旧幕府軍)における会津の激戦を描いた作品でした。シリーズ第2弾となる作品が作られ、再び斎藤 一を演じると聞いたときの最初の印象は?

まず、いつの話を描くんだ? と。『白き虎』より以前の新撰組の話なのか? それとも『白き虎』の後なのか? 聞いてみたら西南戦争の話だということでびっくりしました。

――『白き虎』での会津の戦いは明治元年(1868年)。今回、描かれる西南戦争はその9年後の明治10年(1877年)ですね。明治維新の立役者・西郷隆盛が士族を率いて明治政府と戦った内戦で、斎藤は前作では敵だった山縣有朋のもとで、明治政府軍として西郷軍と戦います。

『白き虎』で斎藤は会津での戦いに加え、その後の時代に、生き残った主人公の貞吉(安西慎太郎)と一緒に酒を酌み交わしながら、過去を振り返るというストーリーテラーの役割も果たしました。この西南戦争は、前作で演じたふたつの時代の斎藤 一を結ぶ、すごく重要な位置にあるんじゃないかと思います。



――現時点(※取材が行われたのは6月上旬)ではまだ青木さんも脚本をご覧になってないとのことですが、斎藤が前作の戊辰戦争とは逆の立場で官軍の側で、どんな気持ちで戦いに臨むのか気になります!

斎藤 一と言えば新撰組の三番隊組長のイメージがありますし、その後、前作で描かれた戊辰戦争があり、さらに明治維新後には今回の西南戦争に参戦してる。“紆余曲折”って言葉がこんなにふさわしい男の人生もないですよね! どんな心情で西南戦争に従軍したのか…。

――薩摩藩の“人斬り”と恐れられた中村半次郎(松田 凌)とあいまみえることになるようですが…

かつて敵だった薩摩の西郷や半次郎を討って恨みを晴らしたいのか? それとも、長年にわたって戦ってきた彼らに、もしかしたら友情に近い感情を抱いてるのか? そこが今回、西田大輔さん(作・演出)が書かれる脚本の一番の楽しみであると同時に“問題”になる部分だなと思ってます。脚本が上がってくるのが楽しみでしょうがないです!



――斎藤と言えば、新撰組隊士としてはもちろん、漫画『るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-』(集英社)のイメージも強いですが、同作では西南戦争はほとんど描かれていません。

『るろうに剣心』の少しだけ前の時期ですね。正直、こんな若手が演じていいものか…と思うくらい。俳優としてこんなに演じがいのある役もなかなかないし、怖くもあります。

――先ほど話にも出た中村半次郎を演じるのは『仮面ライダー鎧武』(テレビ朝日系)でも共演された松田 凌さんですね。

松田くんとは『鎧武』ではほとんど一緒のシーンがなかったんですよ。約1年も一緒の作品に出ていたのに、絡んだのは最後の最後で1シーンくらい(笑)。なかなか会えなかったので、今回、ガッチリ一緒にやれるということでテンション上がってます!



――そして気になるのは、新撰組副長の土方歳三の存在です。演じるのは『白き虎』に続いて荒木宏文さん。史実では戊辰戦争の時点で土方は戦死していますので、登場は回想シーンということになるんでしょうか? 斎藤にとって重要な人物なのは間違いないですが…。

僕もかなり気になってます!(笑) 何より、西田さんは土方が大好きなんですよ。だから西田さん的に、一番おいしいところで出してくるんじゃないかと予想してます(笑)。荒木さんとまた、土方と斎藤として一緒の舞台に立てるというのも楽しみです。



「玄徳」の名の由来は、歴史上の人物にあり!



――歴史を題材にした作品への出演は『もののふ白き虎』と今回の『瞑るおおかみ黒き鴨』だけなんですね。

実は、これまで歴史ものに対して苦手意識というか、イヤだなという気持ちが強かったんですよね。この『もののふ』シリーズに出るようになって面白さに気づきましたが、以前は「昔のこととはいえ、実在の人物を演じるってかなり大変だぞ」って…。

――いまは歴女(レキジョ)と呼ばれる歴史好きの女性も増えていたり、ゲームやアニメなどを通じて見る側も歴史上の人物に対しても強い思い入れを抱いてますからね。

それこそデビュー作の『テニミュ』の跡部をはじめ、人気漫画のキャラクターを演じてきたし、それはそれですごく大変だったけど、歴史上の人物を演じるのも同じくらいプレッシャーがあるぞと(苦笑)。



――あくまでフィクションの部分や、諸説あってはっきりしないエピソードもあるので、解釈に幅は持たせやすいですが…。

だから前回「大まかな部分は外さずにやれれば!」と思ってたら、西田さんは「いやいや、もっと攻めていこうよ」って(苦笑)。

――斎藤 一や新撰組の隊士たちは、他の作品でも多くの俳優が演じてきました。

三谷幸喜さんの大河ドラマ『新選組!』(NHK)が好きでした。オダギリジョーさん演じる斎藤 一がカッコいい! あの作品も局長の近藤 勇と坂本龍馬が以前から知り合いだったとか、大胆な解釈をしてますよね。脚本家の自由な解釈に役者は乗っかって、肩の力を抜いて演じればいいのかなと思っています。

――歴史上の人物と言えば、青木さんの玄徳(つねのり)というお名前ですが、由来は『三国志』の主人公としても有名な蜀の国の皇帝・劉備玄徳が由来なんでしょうか?

そうです。父が付けたんですが、どんな思いで劉備の名前を選んだのか? ちゃんと聞けないままに父は死んでしまって…。それはちゃんと聞いておくべきだったという後悔があるんですが。

――お父さまは『三国志』がお好きだったんですか?

吉川英治さんの小説『三国志』が大好きだったんです。僕も父の死後に一度、読み始めたんですが、途中でどうしても読み進められなくなりました。劉備はすごく偉大な人物で、その名前を父が付けてくれたかと思うと、その本当の意味を知るのが急に怖くなってしまって…。



――歴史上の人物を演じることに、強い責任を感じるというのも…

おそらく、そのことが強く影響してるんだろうなと思います。

――さらにプレッシャーをかけるようで恐縮ですが、『白き虎』とは異なり、今回は斎藤 一が主役です。舞台初主演となりますが、特別な重みがあるのでは?

……(苦笑)。西田さんが「シリーズ1作目は勢いで花開くものがある」とおっしゃってました。逆に3作目なら、過去の2作があるので、もう少し気楽に臨めそうだし、実は2作目って一番ハードルが高いんじゃないかと。やばいですね。ただ、西田さんと僕なら、なんとかやれるんじゃないかっていう気持ちもあるんですよね。

――頼もしいです! これまで舞台でいろんな座長を見てきたと思います。積極的に周囲を引っ張り、鼓舞する座長もいれば、黙って背中で引っ張るようなタイプの方もいるかと思いますが、青木さんはどういうタイプの座長になりそうですか?

それがね…まったくイメージができないんですよ(苦笑)。自分が座長でいる姿が。まさか自分が主演をやることになるとは…。とはいえ、舞台で僕が常々、最も大事なこととして感じているのが“一期一会”の精神。型を決め過ぎずに、そこでの出会いを大切にしていけたらと思います。



実は、熱烈なゲーマーだった!?



――青木さん自身のこれまでの人生、キャリアについてもお話を伺います。小さい頃はどんな子どもでしたか?

僕ね、“自我”と言っていいのか…人生で覚えている最初の記憶が3歳なんです。

――ずいぶん早いですね。

(人差し指、中指、薬指を立てて)手で「3」というのを作れたのがまさに3歳のときで。「3歳」って手を出して天井を見上げたのを覚えてます。ただ、その後の記憶があるわけじゃないんですけどね(笑)。小さい頃は、元気でスポーツの好きな活発な子でしたね。



――クラスでも元気に動き回っていた?

リーダーってタイプではなかったんですけどね。背も高いし、勉強もそこそこできて、スポーツも、わりと何でもできたのでうるさく走り回ってるクラスの男子の典型のような(笑)。

――子どもの頃の将来の夢は?

小学生の頃は、ゲームを作る仕事に就きたかったですね。

――これまでスポーツ好きを強調してましたが、まさかのゲーム?(笑)

前振りじゃないですよ(笑)。実はゲームも大好きで。ちょうど『ポケモン』が流行り始めた頃でしたが、僕は『ドラクエ』が大好きで、ああいうロールプレイングゲームを作りたいと思ってました。スポーツは好きだったけど、プロの選手になりたいと思ったことはなかったんです。でも、ゲームに関しては、面白いゲームを自分の手で作ってみたかったんです。

――かなりのゲーマーだったんですか?

コアなゲームが好きだったし、ゲームを選ぶとき、制作会社で選んでましたからね。スクウェア・エニックスがまだスクウェアとエニックスという別々の会社で、僕は『ドラクエ』(旧エニックス)だけでなく『ファイナルファンタジー』(旧スクウェア)も好きだったんですが、この2つの会社にトライエースという会社が関わると面白いソフトになるぞって気づいて、そこの作品を追うようになったり。

――なかなかマニアックな…(笑)。いまでもゲームはお好きなんですか?

中学で一度、ゲームから離れてしまったんですが、大人になってまたやるようになって、『ドラクエ』を始めるとなかなか寝れないんですよ(苦笑)。だから、台本を覚えないといけない期間はやらないようにしてます。「この日、台本が届くはずだから、それまでにクリアを…」って(笑)。



――中学時代は、ゲームから離れて、何に熱中してたんですか?

ファッション関連ですね。スニーカーに熱中して、エアジョーダンを集めたり、デニムにハマったり。「Levi's」の“e”が大文字か小文字かで年代が違うと知って「こんなに奥が深いのか!」と感動して、さらに突き詰めたり。

――興味を持つと、とことん突き詰めたくなる?

そうなんですよ。多趣味ではあるんですけど、ハマるとガーっと集中して短期間で極めたくなっちゃう。

――部活はやってたんですか?

小中高とずっと陸上をやってました。小学生の頃はハードルの選手だったんですが、続けるには専門のコーチが必要なんです。中学の部活の顧問は陸上に詳しい先生ではなかったのでスプリント(短距離走)に転向しました。高校ではまたハードルに戻ったんですが、こう見えてけっこう、速かったんですよ(笑)。