【猫】プロの「ペット探偵」に聞いた! “迷子猫”捜索のコツ

写真拡大

昨今の猫ブームは「ネコノミクス」などとも呼ばれ、ほどなく国内での飼育数は1,000万頭を突破しそうな勢いだ(ペットフード協会調べ)。だが一方で、猫を飼う世帯が増えるということは、“猫の脱走・失踪”というリスクの増大も意味している。

「猫」は人間の能力を44%も上げる!? 猫にまつわる“8つの数字”

もし愛猫が突然いなくなってしまったら、どうやって探せばいいのか? プロはどのように捜索しているのだろうか? 今回はペット専門の探偵業者「ペットサーチアイ」に取材を申し込み、プロフェッショナルならではのノウハウを聞いてみた。

ペット探偵ってどんな仕事?

今回の取材に応じてくれた白根 太さんは、キャリア15年のベテラン調査員。まだペット探偵の存在を知らなかった頃に迷子犬を保護し、警察経由で無事に飼い主のもとへ届けた経験をもつ。その直後にペット探偵の求人を見つけ、運命的な出会いを感じたのが、この業界に入るきっかけになったという。

白根さんを擁する「ペットサーチアイ」の活動範囲は、おもに東京、神奈川、埼玉など首都圏。しばしば関西や中部地方まで出張してペット(犬猫)捜索を行なっている。

ペット探偵のやりがいについて、白根さんはこう語る。

「私自身も現在犬と暮らしており、家族の一員であるペットがいなくなった時のつらさ、悲しみに共感できます。そんな動物たちのために自分が役に立てることが、ペット探偵のやりがいです。

慣れない外の世界でおびえていた猫が無事に家へ戻り、ごはんを食べたりお気に入りの場所で寝たりするなどリラックスする姿を見たときは、嬉しくなりますね」(白根さん)

同時に、苦労もあるそうだ。

「猫を探すため敷地内に立ち入らせていただくなどの許可が、近所の方から得られないときは大変です。また、迷子猫のチラシをまいても情報が入ってこない場合は焦りを感じたりしますね。ほかには、捜索中は歩きっぱなしであること、季節によっては暑さ寒さが厳しいことも苦労といえるかもしれません」(同)

「ペットサーチアイ」では、大きく2通りのアプローチで猫の捜索を行なう。
1つはチラシ配布や聞き込みによる、目撃情報の収集。もう1つは猫が逃げた時の状況から、現在どのあたりに隠れているか推理しての目視確認。ごはんやマタタビなどの好物を入れた捕獲器を設置することもある。

1日あたり7時間の調査を基本とし、天候や周囲の人通りなどから捜索・巡回の時間帯を決めているそうだ。このあたりの状況判断はプロならではだろう。

気になる“調査の成功率”について、白根さんは次のように話す。

「室内飼いの猫で、いなくなった当日にご連絡いただければ9割以上は発見できます。反対にいなくなってから時間がたてばたつほど、ご依頼いただいても発見は難しくなってきます。

さらに細かいことを言えば、早めにご相談いただいても実際の捜索活動はあえて数日たってから行う場合もあります。他人の敷地の床下など人が入れないところに隠れている猫は発見しにくいのですが、猫の性格によってそこから出てくる日数が異なるので、いつ捜索するのが発見しやすいかをプロが判断するのです。

早めにご依頼いただくことで、いつどんな手を打てばいいのかを効率的に作戦だてることができます。全体としての発見率は7割ほどです」(同)

依頼は早いほど良いが、あえて捜索スタートまで数日待つ場合もある……ここにもプロの経験が生きているようだ。

ペット探偵の“秘密道具”を公開!

ドラマなどの影響で「探偵といえば秘密道具」というイメージがあるかもしれないが、実際にペット探偵でも、長い調査経験に裏打ちされた数々の道具が活用されている。代表的な5種類のアイテムを教えてもらった。

【1】捕獲器

警戒心が強い猫を捕まえるための装置。猫の通り道か寝床、ほかの猫があまりいないところ、ある程度奥まっているが遠くから目視確認できるところ、地面に置いて安定するところ、雨に濡れないところなどを選んで設置する。

【2】洗濯ネット

猫を無事保護したときに入れる、キャリーバッグの代用。

【3】懐中電灯

夜間、建物の隙間など猫が潜んでいそうな暗がりに光を当てて捜索するためのもの。猫は物音のする方をたいてい見ているので懐中電灯の光を反射して目が光り、遠くからでも存在を知ることができる。LEDLENSERやMAG-LITEなどのブランドで、光が強くまっすぐに届くものがオススメ。「ペットサーチアイ」では雨天でも使える防水機能つきのものを使用している。

【4】マタタビ

ほとんどの猫の好物。携帯に便利な粉末タイプを用意している。

【5】ボイスレコーダー

飼い主が猫を呼ぶ声をあらかじめ録音しておき、捜索時に役立てる。

こうした数々の道具に、プロとしての知識・経験が加わり、一般人が探すよりも高い発見率が見込まれるのだという。

「屋外に出たことのない臆病な家猫の発見率は、特に大きな違いがあります。一般の方が一度チェックした場所を、プロが再度見てみたら猫が隠れていたということも多いです。経験から猫が潜みそうな場所のパターンがわかり、視野に入った猫の体の一部分(背中の丸みや光る目など)を目に留めるからです」(白根さん)

自分で迷子猫を探すコツ(捜索編)

ここからは、飼い主自身が迷子猫を探す方法について、プロのアドバイスを紹介していく。

まず、もっとも多いと思われる「完全室内飼いの猫が、閉め忘れた玄関や窓から脱走してしまった」ケースでの探し方。

室内飼いの猫を探す場合

外に出た経路付近の敷地内を目視で確認
→隣近所にチラシを配布
→近所を目視確認
→警察、動物愛護センターに連絡(人懐っこい性格の場合)

ちなみに警察へ連絡する理由は、猫を保護した人が拾得物として届けているかもしれないからだ。同様にけがをして動物愛護センターに収容されている場合もあるので、連絡は欠かせない。

「屋外に出たことのない猫であれば、建物敷地内など近いところにいることが多いです。外の世界に耐性がないので、じっとして周囲を観察している状態です。なので逃げた方向がわかる場合は、姿を消した先で猫が隠れそうな近辺の隙間を探すのがベストです」(白根さん)

続いて、「外飼いの猫がしばらく戻ってこず、失踪と判断した」ケースでの探し方。

外飼いの猫を探す場合

近辺にチラシを配布
→近辺を目視確認
→警察、動物愛護センターに連絡(人懐っこい性格の場合)
→保健所/清掃局に連絡

清掃局への問い合わせは最悪のケース(事故などで死亡して回収された場合)を想定している。いつも2〜3日で帰ってくるはずの猫が帰ってこない場合、残念だが交通事故などにあっていることもあるそうだ。

一般的に成猫より子猫のほうが活動範囲が狭いため、捜しやすい。そして郊外・田舎と都市部では、都市部のほうが捜索難易度は低いという。

「道が広かったり車や人通りが多ければそこは通過していないと判断したり、家の区画がはっきりしていれば、潜んでいるエリアが絞りやすいです。また、都会であれば目撃情報も集まりやすいです。その反対に、山に逃げ込んだ猫を探すのはかなり難しいですね」(白根さん)

こうした「室内飼いと外飼いの違い」「成猫と子猫、都会と郊外の違い」などを意識しながら探せば、プロでなくてもある程度は効率的な捜索ができるだろう。

さらに白根さんは、プロならではの観点からアドバイスをくれた。

「猫の捜索は、その性格に合わせた適切な範囲で行なうことが大切です。たとえば臆病で活動範囲の狭い猫なのに、隣町までチラシを配ってしまうと、誤報が入ってきて混乱することもありますので」(同)

最近はTwitterなどのSNSでも「迷子猫の情報をください!」とメッセージを流すことができるが、上記と同じ理由で、白根さんは直接的な効果を疑問視している。

「完全室内飼いの猫の捜索範囲は半径約50〜100メートルと大変狭いため、町内単位以下の情報共有でないと効果は薄いと思われます」(同)

こと室内飼いの猫に限っては、インターネットの「全国どこでも瞬時に情報が届く」メリットを活かしにくいようだ。むしろ限られた猫の行動範囲を、じっくり巡回して目視で探すことが発見への近道と言えるだろう。

「ただし、SNSで呼びかけることがまったく無意味とは思いません。直接的な保護につながる情報がなかったとしても、身近な友人知人の猫が行方不明になってなんとかしたいと思った経験から、ご自身の近所で猫を探しているチラシに協力しようという気持ちになる人が増えてくれるならば、ペット探偵業界としてはインターネットの効用があると考えます」(同)

自分で迷子猫を探すコツ(捕獲編)

迷子になった愛猫を発見したら、次は捕まえて自宅へ連れて帰らなければならない。ただ、これが意外と難問。特に室内飼いの猫だと慣れない外の世界に警戒心を強めていることもあるので、うかつに接近すると逃げられてしまうかもしれない。

この捕獲方法にもノウハウがあるそうだ。

「理想的な捕まえ方は、猫の方から来てくれることです。ごはん、飼い主の声、おもちゃなど、猫が興味を持つものを使ってこちらに集中させることに成功すると、その場から逃げる可能性が低くなります。あせって捕まえようとすると逃げてしまうので、猫から飼い主に歩み寄ってくれるまでなるべく待ちます」(白根さん)

それが難しいなら、前述したペット探偵アイテム「捕獲器」を使う方法もある。この場合は、プロに依頼して設置してもらうことになる。

「ほかの猫が入ってしまうこともあるので約30分おきに様子を確認します。捕獲器の周辺に人の気配があると入ってくれないので、遠くから目視確認できる場所に仕掛けます」(同)

いずれにしても、猫を刺激しないよう気をつけることが大切だという。

「猫の様子と周囲の状況をよく観察します。捕まえる前にある程度時間をとって猫とコミュニケーションするため、猫が必要以上に緊張しない状態になれる静かな環境が理想です。猫がおびえていると物音などの些細な刺激でも逃げてしまうため、その場所での捕獲をあきらめるときもあります」(同)

手を尽くして猫を捕まえても、それですべて終わりではない。迷子になっている間、どんな危険にさらされていたかわからないからだ。

「連れ戻してしばらくは、外傷や歩き方の不自然さがないか、室内で落ち着くことができるかを観察します。異常や気になる点があればかかりつけの獣医へご相談ください。見た目に異常がなくても感染症の可能性もあります。また、人間のミスで脱走が引き起こされた場合は、再び同じことが起こらないように再発防止対策をしてください」(同)

ここまでやって、迷子猫の捜索は一段落したと言える。未経験者にとってはかなり重労働になりそうだが、愛猫のためなら労を惜しんでいる場合ではない。すべて自分でできるなら自分で、時間や体力に不安があるならプロに依頼して、早期の発見に努めたい。

最後に、ペット探偵へ依頼するときのアドバイスを、白根さんに教えてもらった。

「依頼時に必要な情報は、猫の特徴がわかる写真(顔、全身、背中からしっぽの3枚があればベスト)、毛色や目の色や首輪などの特徴、猫の性格を表すエピソード(飼い方や生活背景)などです。飼い主さんがパニックにならずに、いつもの猫の様子を思い出して話してください。

また、信頼できる業者の選び方としては『猫のいなくなった状況や性格を細かく質問してくる』『調査の方針を説明してくれる』かどうかを基準にすると良いでしょう」(同)

■取材協力 ペットサーチアイ 白根太調査員
ペット探偵歴15年。東京、神奈川、埼玉、千葉など首都圏を中心に、全国の迷子猫を探す日々を送る。
写真から猫の特徴をとらえ、3次元のイメージを持つことが得意なため、会ったことがない捜索対象の猫とほかの猫を区別できたり、身体の一部しか見えない状態でも発見につなげられることが多い。