■NBA10大「B級」ニュース@後編

 歴史に残るファイナルで幕を降ろした2015−2016シーズン。NBAファンの間で話題となった小ネタを掘り返してみた。今シーズン、気になったニュースはどれ?

(6)自宅に監禁してまで残したかったビッグマンとは?

 おそらくこの「監禁騒動」がなければ、今季の勢力図は大きく違っていたはずだ。

 昨夏、ダラス・マーベリックスはFAの目玉だったロサンゼルス・クリッパーズのリバウンド王、デアンドレ・ジョーダン(C)を熱心に勧誘した。オーナーのマーク・キューバンとリック・カーライル・ヘッドコーチ(HC)はジョーダンと食事しながら説得に当たり、エースのダーク・ノビツキー(PF)も休暇を切り上げて交渉の場に出席。その甲斐あって、ジョーダンはマブスとの契約を口頭で約束したという。

※ポジションの略称=PG(ポイントガード)、SG(シューティングガード)、SF(スモールフォワード)、PF(パワーフォワード)、C(センター)。

 しかし、FAの正式契約が解禁となる7月9日の前日、クリッパーズのスティーブ・バルマー・オーナーとドック・リバースHC、クリス・ポール(PG)、ブレイク・グリフィン(PF)、ポール・ピアース(SF)らが総出でヒューストンにあるジョーダンの自宅を訪ね、再契約の説得に当たったのだ。このとき、玄関のドアをイスでブロックし、ジョーダンを監禁しているように見える写真を、グリフィンがツイッターに投稿。グリフィンのツイッターは、「人質にするのはやめろ!」「警察に通報するぞ!」などのツイートで荒れに荒れた。

 その後、ジョーダンは何事もなかったようにクリッパーズと再契約。契約前日になっての口頭合意の反故(ほご)は、今年風にいうなら、「不適切であるが違法ではない」といった感じか。だが、すでにFA市場に目ぼしいビッグマンは残っておらず、マブスの失望はいかほどだったか......。

 最終的にクリッパーズは53勝29敗でウェスタン4位、マブスは42勝40敗の6位でプレーオフ進出。ジョーダンの決断次第では、両チームの順位は逆になっていたかもしれない。ともにプレーオフでは1回戦敗退だったのが、マブスにとってはせめてもの救いか?

(7)ドリームチーム崩壊。リオ五輪が不人気なワケ

 リオ五輪開幕まで残り1ヶ月強に迫った6月23日、決断を保留していた今季NBAファーストチームのレブロン・ジェームズ(クリーブランド・キャバリアーズ/SF)と、カワイ・レナード(サンアントニオ・スパーズ/SF)が、ともに「チームUSA」への参加辞退を表明した。

 これによって今回のアメリカ代表は、レギュラーシーズンMVPのステファン・カリー(ゴールデンステート・ウォリアーズ/PG)、リーグナンバー1ポイントガードのクリス・ポール、次代を担うアンソニー・デイビス(ニューオーリンズ・ペリカンズ/PF)、さらにはジェームス・ハーデン(ヒューストン・ロケッツ/SG)、ラマーカス・オルドリッジ(スパーズ/PF)、ブレイク・グリフィンといったスター選手が不在となった。また、コービー・ブライアント(ロサンゼルス・レイカーズ/SF)の代表入りを期待するファンも多かったが、「若手たちの番だ」と語って辞退している。

 辞退した選手の多くは、「シーズン中のケガのため」「家族との時間を大切にするため」という理由だが、レブロンやラッセル・ウェストブルック(オクラホマシティ・サンダー/PG)などは、現在ブラジルで猛威を振るうジカ熱を懸念していたとも一部報道されている。

 一方、出場組で注目を集めるのは、アテネ五輪から4大会連続出場となるカーメロ・アンソニー(ニューヨーク・ニックス/SF)だ。リオ五輪でアメリカが優勝すれば、カーメロは男子バスケットボール史上最多となる「3つ目の金メダル獲得」という快挙達成となる。カーメロはジカ熱の不安について、「チームドクターや現地にいた医者、妻とも話し合って決めた」と、熟慮の末の判断だったことを明かした。

 マイケル・ジョーダンやマジック・ジョンソンなどが出場し、"ドリームチーム"と呼ばれた1992年のバルセロナ五輪以降、チームUSAが金メダルを逃したのはアテネ五輪の一度だけ。レブロンやカリー不在のチームUSAに暗雲が漂う。

 スターターを予想するなら、カイリー・アービング(キャブス/PG)、クレイ・トンプソン(ウォリアーズ/SG)、ケビン・デュラント(ウォリアーズ/SF)、ドレイモンド・グリーン(ウォリアーズ/PF)、デマーカス・カズンズ(サクラメント・キングス/C)といったところか......。早くも前言を撤回したい。「歴代最強」とは言わないが、このチームもかなり強い。

(8)ローズがニックスを立て直す。古豪ついに復活か

 「特別なことが起ころうとしている」。現地、6月24日のニューヨーク・ニックスの入団会見で、デリック・ローズ(PG)は新天地について、そう語った。

 しかし疑心暗鬼どころか、もはや人間不信レベルのニックスファンは、手放しに喜んだりはしない。1990年代、マイケル・ジョーダン率いるシカゴ・ブルズの好敵手だった時代は、はるか昔。2011年にカーメロ・アンソニーが加入して大きな期待が寄せられるも勝てず、2014年にフィル・ジャクソンが球団社長に就任して期待されるも強くならず......。ファンは何度、歓喜と失望を繰り返してきたことか。

 そういう背景もあり、ローズの加入だけで喜ぶほどファンはピュアではない。新たに就任したジェフ・ホーナセックHCも、前キャブスHCのデイビッド・ブラットや、前インディアナ・ペイサーズHCのフランク・ヴォーゲルとの交渉に失敗した末の「第3候補」だったとも言われている。ただし、ロビン・ロペス(C)をブルズに放出することに成功したニックスは、サラリーキャップに余裕がある。すでにジョアキム・ノア(C)と契約を結び、さらなるFA選手の獲得も目指しているという。

 また、今季オールルーキーチームに選出されたクリスタプス・ポルジンギス(PF)は成長著しく、ローズが以前の輝きを取り戻せば、来季大きく飛躍する可能性もある。1999年、第8シードからNBAファイナルまでたどり着き、「ミラクル・ニックス」と呼ばれたときのように、奇跡的な快進撃を期待したい。

(9)相思相愛なレブロンとナイキ。ついにジョーダンを超えた?

 昨年12月、レブロン・ジェームズとナイキが超大型契約を締結した。契約年数は、「レブロンの一生涯」。つまり、引退後はもちろんのこと、命の続くかぎりスポンサー契約を締結したこととなる。

 ナイキが「生涯契約」を結んだのは、同社44年の歴史で今回が初めて。マイケル・ジョーダンとさえ結んでいない契約を、レブロンと結んだのだ。発表当初、ナイキは契約金額を非公開とし、「選手個人との契約額としては、ナイキ社史上最大のもの」とだけ報じられていた。

 さまざまな推測が飛び交うなか、有力だった契約金額は「4億〜5億ドル(約400億〜500億円)」。しかし今年5月、ラッパーのカニエ・ウェストが、「レブロンとナイキの契約は10億ドル(約1000億円)」と発言した。「カニエの発言は真実か?」との質問を受けたレブロンの代理人マーベリック・カーターは、明確な返答は避けたものの、天を指差し、「素晴らしい契約だ。ナイキは契約には大満足している」と笑って答えている。

 ナイキがレブロンと生涯契約を結んだ背景には、ステファン・カリーを逃したことへの反省があるだろう。カリーは幼少期からNBAデビュー後も一貫してナイキのシューズを履いていたのだが、デビュー数年はケガがちだったため、2013年にナイキはカリーとの契約を見送る。そのタイミングで手を差し延べたのが、急激に市場を拡大してきたアンダーアーマーだ。

 同年の秋、年間400万ドル(約4億円)以下の金額でカリーと契約。今の活躍を思えば、破格の安さだ。そして契約直後、カリーはオールスター出場を果たし、今や押しも押されもせぬNBAの顔となった。2024年まで契約を結んでいるアンダーアーマーとの金額は明らかにされていない。レブロンとの生涯契約は、ナイキの意地の表れだったのかもしれない。

(10)ダンク最新事情。次の時代を担う「王者」は誰だ!

 長年、マンネリ化が叫ばれていたダンクコンテスト。昨年は彗星の如く現れたザック・ラビーン(ミネソタ・ティンバーウルブズ/PG)が長い滞空時間を存分に発揮したダンクで「ビンス・カーター以来の衝撃!」と称され、栄えある新ダンク王となった。

 ラビーンは今年2月のスラムダンクコンテストも制し、マイケル・ジョーダン(1987年〜1988年)、ジェイソン・リチャードソン(2002年〜2003年)、ネイト・ロビンソン(2009年〜2010年)に続く、史上4人目の連覇を達成。しかし、ラビーン以上に今年のダンクコンテストを沸かせたのは、準優勝のアーロン・ゴードン(オーランド・マジック/PF)だ。

 ファンの度肝を抜いたのは、決勝ラウンド2本目にゴードンが見せたダンク。助走をつけたゴードンは、マスコットが頭上に掲げたボールを片手で掴むと、同時に「パイクジャンプ(※)」でマスコットを飛び越え、さらにボールを両足の下をくぐらせてダンクを叩き込むという離れ業をやってのけたのだ。

※パイクジャンプ=両足を揃えながら前方に突き出して跳ぶジャンプ。閉脚屈伸跳び。

『ESPN』によると、マスコットの高さはおよそ7フィート7インチ(約231cm)で、その高さを走り高跳びのバーに想定すると、ロンドン五輪の銅メダルの記録になるとのこと。今すぐゴードンに背面跳びを覚えさせて、リオ五輪に送り込むべきではないだろうか......。冗談はさておき、今年のダンクコンテストは「至上最高」の呼び声も高い。ラビーンは21歳で、ゴードンはさらに若い20歳。来年のダンクコンテストで、ぜひ再戦が実現することを願うばかりだ。

水野光博●文 text by Mizuno Mitsuhiro