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Apple Musicの提供が始まって1年が経つ。サービスのウリの一つとして「人の手によるキュレーション」があり、「For You」で薦められるプレイリストのおかげで、筆者の音楽の趣味の幅もかなり広がったのだが、実は、この人力のレコメンド機能、アップルが提供しているサービスの中で、Apple Musicだけが専売特許としているわけではない。iBooksやiTunes Storeの映画ではどのようなセレクションがされているのかをじっくり紹介していこう。

とはいえ、まずはApple Musicについて触れないわけにはいかない。Apple Musicは、ストリーミングを中心とした定額制の音楽サービスで、グローバルで3,000万曲を超える楽曲を揃えている。いつでもどこでも音楽が聴き放題で、最初の3カ月は無料で利用できる。iOSデバイス向けの「ミュージック」アプリを起動すると、初期設定画面が表示され、登録を行うと「あなたのお気に入りをおしえてください」「あなたのお気に入りを選択してください」と、好きなジャンルにミュージシャンやバンドをチョイスするよう促されるので、気になったらバブルを1回、大好きだったら2回タップしていく。作業が終わった後、画面下部の「For You」タブを押すと、あなた向けのプレイリストが提示されているはずだ。

最初から好みの楽曲が提示されていると思うが、聴いたアルバムや曲に「♥」することで、精度はさらに上がる。筆者も、Ólafur ArnaldsやMax Richterの曲を「♥」しているうちに「For You」で「エレクトロなクラシック音楽」といった、それっぽいプレイリストが提案されるようになった。

ジャンルごとに用意されているプレイリストは音楽に精通した担当者(「APPLE MUSIC EDITOR」)に依るものであるが、彼らは「For You」だけでなく、「New」のタブでも選曲を手がけている。さらにメディアのキュレーターによるプレイリストも楽しめ、日本では最近「CINRA.NET」が公式キュレーターに選出されている。また、ChloéやAlexander Wangなど、ファッションデザイナーによるプレイリストの公開も目立つようになっている。

続いて、iBooksでのレコメン機能について見ていこう。iBooksでもApple Music同様、人の手によるセレクションがなされている。iBooksアプリを起動したら、画面下部の「☆(おすすめ)」」をタップしてみよう。ここで紹介されている書籍は、すべてエディターによってセレクトされている。例えば、「今月のベストブック」では、毎月刊行される作品をエディターがすべて読んだ上でピックアップされており、推薦のコメントも全部エディターが書いている。

また、時勢に合ったトピックを立てていて、今なら「憲法を知る」「EU/イギリス」というテーマで作品が紹介されている。「憲法を知る」の中味を見てみると、長谷部恭男、小林節、樋口陽一、といった国民安保法制懇のメンバーでもある憲法学を専門とした法学者の著書から、石破茂のような、文化資本少なめな右派の政治家の作文まで、多様な言説を拾い上げられるバランスの良い棚揃えとなっている。売れているからといって、政治的に偏った書籍でラインナップを固めないというところは高く評価されてしかるべきである。

現在、「コレクション」では「LGBT」をキーワードにした作品が紹介されているが、ここでは、ブックだけでなく、映画、音楽も含めた提案がなされている。このように横断的に紹介された作品に触れることで、より理解を深められるというわけだ。

iTunes Storeの「映画」コーナーも、エディターによるキュレーションが効いている。

「今週の映画」と題して毎週水曜日にピックアップされる一本は、100円でレンタルできるのだが、その時その時に合った話題の作品(例えば、今週だったら週末に『インデペンデンス・デイ:リサージェンス』が劇場公開されるから『インデペンデンス・デイ』といった具合。先に観ておけば予習できる)を紹介しているのが特徴だ。ライトなユーザーなら、ここを毎週チェックするのをおススメする。

対して、名作映画の掘り起こし「Essentials」では、ミケランジェロ・アントニオーニの『欲望』といった映画ファン向けの作品が紹介され、「スタッフのおすすめ」では、エディターの「ならでは」な作品がセレクトされている。ITジャーナリストではなく、映画批評家である筆者は(最近、殆ど批評を書いてないが)、いつもここのセレクションが気になっている。「スタッフのおすすめ」では、アカデミー賞脚本賞ノミネートの『ナイトクローラー』やカンヌ国際映画祭審査員賞に輝く『Mommy/マミー』に、ノミネート全部門でアカデミー賞を受賞すべきだった『6才のボクが、大人になるまで。』のほか、劇場未公開作品の『イット・フォローズ』まで、さまざまな作品が選ばれているが、明らかな駄作は『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』くらいで、あとは月に10本以上観てるシネフィルなら納得のラインナップとなっている(ここまで「この映画、最高です!」みたいな感想しか言ってなくて申し訳ない)。

さらに「コレクション」では、よりマニアックな特集が組まれている。「人気監督のデビュー作」と題して、15人の映画監督の長編デビュー作にスポットを当てた特集は、パッとパケ写を見て、あれっ!? これ誰だっけ? となる作品もあれば、えーっ? この作品だった? となるのもあって、観る前からすでに面白い(ちなみに「この作品だった?」となったのは全部、日本では劇場未公開作品だった)。デヴィッド・フィンチャー、スパイク・ジョーンズ、ミシェル・ゴンドリーといったMV監督上がりの作家を中心に取り上げているので、スタイリッシュな映像を楽しみたいという向きにも良いセレクションと言えよう。15本の中から、先ほどの「今週の映画」風にお勧めするとしたら、『アリス・イン・ワンダーランド/時間の旅』が公開中の、ティム・バートン監督の劇場未公開作『ピーウィーの大冒険』だろうか。Apple Music同様、「発見」のある映像体験がiTunes Storeの「映画」コーナーのエッセンスなのだ。

キュレーションからは離れるが、iTunes Storeではパッケージ販売に先行した配信や特典映像を観られる「iTunes Extra」コンテンツも用意されているので、こちらもあわせてチェックしておきたい。iTunes Store独占配信のコンテンツもあったりするので、これは見逃せない。

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昨年、筆者はApple Musicのキュレーションで食っていける新しい職業が生まれるのではないかと書いたが、既にそうなっていた。しかも、Apple Musicだけでなく、iBooksでも、iTunes Storeの「映画」でも。こう書いているうちに、自分もそのエディターの仕事に関わりたくなってきてしまっている。DVD/映画情報誌の編集に携わってたこともあるというのはもちろんだが、何よりも楽しそうだ。しかし、マイナビニュースが公式キュレーターに選出される可能性は無いに等しい。うーん、どうしたら良いのだろう? アップルに転職するか……あっ! 分かった!! CINRA.NETに移籍したらいいのか!!!

(稲葉雅己)