F1ドライヴァーが時速320kmの世界で見ているもの

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F1ドライヴァーに視線追跡メガネをかけてもらい、走行中の目の動きを観察した。彼らの脳は訓練され、常人の5倍の速さで視覚情報が処理されていることがわかった。超人的な反応速度をもつドライヴァーの視線を、動画で紹介。

時速320kmを超えるスピードでトラックを走るF1ドライヴァーが、超人的な反応速度で何をどうやって見ているかが判明した。

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英国のテレビチャンネル「Sky Sports F1」にて、F1チーム「サハラ・フォース・インディア」のチームドライヴァー、ニコ・ヒュルケンベルグに視線追跡メガネをかけてもらった。その超人的な反応速度が、ラップタイムをミリ秒単位で削るために、どのように使われているかを突き止めるためだ。

メガネのフレームに取り付けられた5個の赤外線カメラが、ヒュルケンベルグの目の正確な位置を追跡。その情報を、前方に向けて取り付けられたカメラに中継することによって、F1ドライヴァーの実際の視線を初めてリアルタイムでとらえた動画が作成された。

スタートシグナルが赤から青に変わってから、ヒュルケンベルグがアクセルを踏むまでの時間は100ミリ秒をわずかに下回る。ちなみに、オリンピックの陸上選手がスターターピストルに対してこれと同じ速さで反応した場合はフライングとなる。人間は、100ミリ秒よりも短い時間でピストルの音を聞き取れないことが実験で示されているからだ。

聴覚信号よりも視覚信号のほうが速いが、それでもヒュルケンベルグの超人的に速い反応は、スタートシグナルの変化とほとんど同時に反応できるよう彼の脳が鍛えられていることを示唆している。

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視覚追跡メガネは、ヒュルケンベルグがトラックを回る際の目の動きも追跡した。

「とにかく端から端へ、前方を見ています」とヒュルケンベルグは言う。人間の目は一度に非常に小さな領域にしか焦点を合わせることができないが、その隙間は、脳が周辺視野を使って補っている。

F1ドライヴァーの脳は、レースを何年も続けるうちに、新しい焦点領域の処理にかかる時間を速めるように訓練されていく。ヒュルケンベルグがサイドミラーを見て何が見えるかを処理する時間は、10分の1秒。これは、人間が何かの存在を視覚的に記録するのに必要な時間の限界に近い。一般人が同じものを見ても、その情報を処理するため時間は5倍近くかかるだろう。

目は絶え間なく動き続けるが、ヒュルケンベルグがハンドルの方に目をやってボタンやスイッチ、メーターをチェックすることはほとんどない。これらの情報は脳の周辺視野によって認識されており、ドライヴァーは下を見てボタンやスイッチがどうなっているかを確認する必要がないという。