連続テレビ小説「とと姉ちゃん」(NHK 総合 月〜土 朝8時〜、BSプレミアム 月〜土 あさ7時30分〜)第13週「常子、出版社を起こす」第80話 7月5日(火)放送より。 
脚本:西田征史 演出:大原托


戦後編に入ったら、戦後復興、出版社つくって、明るくゴーゴーかと思っていたら、またまた暗い話。
女学校時代の親友・綾(阿部純子)との9年ぶりの再会は、しょんぼりしたものだった。
戦争で夫も実家も父も亡くした綾は、女手ひとりで幼子(可愛い!)を育てていた。
彼女に浴衣などを差し出せるくらいなので、なんだかんだ言いながら、小橋家は恵まれているみたいだ。
綾に恩を返そうと、鉄郎から譲ってもらった布をもって家を訪ねるとそこでは絵に描いたようにいじめを受けている綾がいた・・・。
見ていていたたまれないのは、小橋家のまわりには透明のドームがかぶっているかのように、悪意が届かないようになっていること。嫌な目にあってもすぐに救われてしまう小橋家に比べて、まわりの人ばかりが、理不尽に意地悪だったり、不幸が継続していったり。は! まさか! 
とと(西島秀俊)が結界でも張っているのか!

裕福で聡明なお嬢様だった綾が苦労している姿を見て、「女って損ね」とぼやく鞠子。
だが、すっかり白髪も混じった鉄郎(向井理)は違う考えをもっていた。
常子(高畑充希)を連れて街に出て、人々を見ながら「おれはこれ見ると胸が高鳴るんだよ、みんな生きてるって感じがするじゃあねえか」と嬉しそう。
「女が、男に言われるままじゃねえ」「女だけで守り抜いたってことが自信つーかよ強さに繋がったのかもしれねえな」「女にチャンスが回ってきたんだ」と完璧にぺらっぺらな説明台詞を延々語る向井理がお気の毒でならない。だから、あんた(向井理のことではない、鉄郎のこと)は何してんだって話だ。そんなこと言える立場なのか。
時として、人物の思いも過去も語らず謎のままにしていくことは物語の魅力になるものとはいえ、笑いで落とすわけでもなく、たまに出てこさせてこんなふうにえらそうな講釈を垂れさせるのだったら、もう少し、鉄郎のキャラを描いてもいいのではないか。いや、待て。鉄郎はぺらっぺらな男で、女たちの苦しみも悲しみも何も気づけないということなら成立する。それにしても、こんなに戦争のことを簡単に描いてしまっていいのだろうか。この、こんな感じでいいでしょ感覚は、新国立競技場に聖火台置き場を設計し忘れたり、公費で「クレヨンしんちゃん」やガリガリ君買っちゃう感覚と並んで何か薄ら寒い。
常子は純粋なので、そんな鉄郎にツッコムこともなく、話を真に受け、このまま甲東出版で働くべきか悩み始めるのだった。
向井理、白髪を混ぜて老いた雰囲気を出している。口調が前より静かなのは、戦争で元気をなくしているからと思ったら、それもまた老いの表現のひとつなのかもしれないが、本人も腑に落ちてないだろう。それもまた見ていていたたまれない。綾の幼子をあやしている時だけ、自然な空気でホッとした。
赤ちゃんや動物がいると場が和むのだなあ。
(木俣冬)