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米国航空宇宙局(NASA)は7月4日(米国時間)、2011年に打ち上げた木星探査機「ジュノー」の、木星周回軌道への投入に成功した。探査機の木星周回軌道投入は、1995年の「ガリレオ」以来約21年ぶり。ジュノーは今後、約1年8カ月にわたって木星の観測を行い、その起源と、現在までの歴史を解明することを目指す。

ジュノーは2011年8月6日、フロリダ州にあるケイプ・カナヴェラル空軍ステーションから打ち上げられた。その後、2013年10月9日に地球スウィングバイを実施するなど、約5年をかけて徐々に木星へ接近した。

そして米太平洋夏時間の7月4日9時30分(日本時間7月5日11時30分)、ジュノーは木星の周回軌道に入るためのエンジン噴射を開始した。エンジンは約35分間にわたって噴射を続け、12時5分に完了した。その後、噴射の完了を示す信号が発信され、約8億6900万km離れた地球まで約48分かけて到達。ジュノーを運用するNASALジェット推進研究所(カリフォルニア州パサデナ)にその信号が届くと、運用室は歓声につつまれた。

NASAのチャールズ・ボウルデン長官は「独立記念日(7月4日)はいつもお祝いごとであふれています。しかし、私たちは今日、このアメリカ誕生の日に、新たな意味を付け加えることができました。ジュノーの木星到着です」と語った。

また、ジュノーの主研究者を務めるスコット・ボルトン氏は「7月4日という日に、窓のない運用室に閉じこもこることになりましたが、まったく気になりません」と冗談を飛ばしたあと、「ミッション・チームのみんなは良い調子でいました。ジュノーもすこぶる元気です。私たちは素晴らしいことをやり遂げました。今日は素晴らしい日です」と述べた。

ジュノーは木星を南北に回る軌道を周回する。現在は一周するのに約53日かかる軌道に乗っており、この間に観測機器などの校正が行われる。そして今年10月19日には、エンジンを噴射して軌道の高度を落とし、約14日で一周する軌道に乗り、約1年8カ月にわたって科学観測を実施する。

運用終了後の2018年2月20日には、木星の大気に突入して破壊処分される。これは生物が存在している可能性がある木星の衛星に、万が一にも落下し、汚染しないようにするためである。

○ジュノー

ジュノーは、NASAの大規模な宇宙探査計画「ニュー・フロンティアーズ」の第2弾として計画された探査機で、木星の起源と、現在までの歴史を解明することを目的としている。

木星には1995年に到着したガリレオが周回軌道から観測を行ったほか、土星探査機「カッシーニ」や冥王星探査機「ニュー・ホライズンズ」が木星の近くを通過した際にも観測が行われているが、これまでの探査は、木星とその衛星、つまり木星系がどうなっているのか、どのような衛星があるのか、といったことに主眼が置かれていた。しかしジュノーは初めて、木星の重力場や磁場、大気の組成や厚さ、さらに中心部にある核など、木星そのものを徹底的に探査する。

ジュノー(Juno)という名前は「JUpiter Near-polar Orbiter」(木星を極軌道付近から観測する周回機)の頭文字から取られている。また、ローマ神話に搭乗する女神ユーノーにも由来する(ジュノーはユーノーの英語読み)。ちなみにユーノーは主神ユーピテルの妻であり、ユーピテル(英語読みでジュピター)は木星のことでもあるため、つまり夫(木星)の元に妻(ジュノー探査機)が行く、という洒落にもなっている。

衛星の本体は高さ3.5m、直径3.5mの六角柱の形をしており、その壁面にはチタン製の厚さ約1cmのぶ厚い装甲が貼り付けられている。木星には強力な磁場があり、それが太陽から飛んでくる荷電粒子などを捕えることで強力な放射線帯が形作られている。放射線は探査機の電子機器に悪影響を与えてしまうため、この装甲によってジュノーを守るのである。しかしそれでも十分ではなく、運用期間は20カ月ほどと見積もられている。

また本体には、9.00 x 2.65mの太陽電池パドルが120度ごとに3枚装着されている。太陽電池のみの面積の合計は60m2にもなり、これまでに打ち上げられた宇宙探査機の中で最も大きい。これは地球の近くであれば約14kWの電力を生み出すだけの規模であるものの、木星では太陽光が弱くなるため、約400Wにまで落ちてしまう。

これまで、木星よりも遠くへ飛行する探査機はすべて、この太陽光の弱さを嫌って、RTG(Radioisotope Thermoelectric Generator)、いわゆる原子力電池が使われていた。RTGはそれ単体で発電できるため太陽光がなくとも使え、また熱を出すため探査機の保温にも使うことができる。

しかしRTGによる発電のために必要なプルトニウム238が開発当時、生産中止で不足しつつあったこと、また技術の進歩によって効率の良い太陽電池が開発されたことも手伝い、ジュノーでは初めて太陽電池が採用されることになった。なお、プルトニウム238はその後、再生産が始まっている。

また、ジュノーは探査機自身が回転することで機体を安定させるスピン安定方式を採用しているが、3方向に飛び出した巨大な太陽電池パドルは、回転の安定化にも役立っている。

なお、3枚の太陽電池パドルのうち、1枚の先端には太陽電池ではなく、磁力計が取り付けられている。これは磁力計を探査機からなるべく離れた位置に設置することで、探査機自身が発する磁場の影響をなるべく防ぐためである。またスピン安定を損なわないよう、質量のバランスは他の太陽電池パドルと同じになるよう造られている。この磁力計では木星磁場を詳細に観測することを目指している。

探査機本体でひと際目立つ笠のような部品は、地球と探査機で交信を行うハイゲイン・アンテナで、またその電波を用いて、グラヴィティ・サイエンス(Gravity Science)と呼ばれる実験が行われる。これは電波のドップラー効果を利用し、木星の重力が探査機の動きにどのように影響を与えたかを調べ、さらにしこから木星内部の構造をを探るというものである。

本体の側面に取り付けられた板のような部分は、マイクロ波放射計(Microwave Radiometer(MWR))で、木星大気を最大550kmの深さまで見通し、動きや組成を観測する。

JEDIと呼ばれる装置は、宇宙を飛ぶ粒子と木星の磁場との関連性を探る。JEDIとはJupiter Energetic Particle Detector Instrumentの略だが、スター・ウォーズに登場するジェダイにも掛けられている。

JADEはJovian Auroral Distributions Experimentの略で、木星大気に衝突している粒子を特定する。

ウェイヴズ(Waves)は木星磁気圏における電波とプラズマ波を観測し、木星の磁場と大気、磁気圏との相互作用を探る。

UVS(Ultraviolet Imaging Spectrograph)は紫外線撮像分光計の略で、木星のオーロラの紫外線写真を撮影する。

ジェイラム(JIRAM)はJovian Infrared Auroral Mapperの略で、大気の表面から50から70kmの深い所までを観測し、大気と磁場、磁気圏との相互作用を探る。

ジュノーカム(JunoCam)は可視光で木星の大気、また極地域の広角写真を撮影する。このカメラは科学目的というよりは、教育・広報を目的に開発、搭載されており、木星の美しい写真を撮影することを目指している。

ジュノーの打ち上げ時の質量は3625kgで、製造はロッキード・マーティン・スペース・システムズが担当し、運用はNASAジェット推進研究所(JPL)が担当している。

【参考】
・News | NASA's Juno Spacecraft in Orbit Around Mighty Jupiter
 
iContact&utm_medium=email&utm_campaign=NASAJPL&utm_content=juno20160704
・Jupiter Orbit Insertion Press Kit
 
・Mission Fact Sheet
 
・How to watch Juno's orbit insertion | The Planetary Society
 
・Juno has arrived! | The Planetary Society
 

(鳥嶋真也)