■連載/ファイナンシャル・プランナー山崎俊輔の「フィンテック入門」

4回目は、クラウドファンディングの魅力と投資リスクについて考えてみます。

【フィンテック入門】クラウドファンディングで失敗しない上手な利用方法

■ビジネスを立ち上げるとき、銀行に頭を下げるだけが資金獲得の選択肢ではなくなった!

 ビジネスを立ち上げるとき、どうしても資金がいります。多くの場合、創業者は一定の資金を用意しますが(起業時の発行株式とする)、それだけでアイデアを形にして世に問うことができるわけではありません。

 資金を調達する仕組みとしては大きくわけて、市場に直接資金を集めに行く株式や債券の発行と、銀行等に資金を融資してもらう方法があります。しかし、無名の企業がいきなり株式や債券を上場することはできません。

 エンジェルと呼ばれるようなベンチャー企業に投資する人たちに資金を出してもらう方法もありますが、審査も厳しく、また発行株式の多くを渡すことにもなってしまい、経営の自由度は下がってしまう恐れもあります。

 かといって銀行にお金を借りるのも大変です。日本中の銀行が貸すお金は余っているというのに、担保がない場合、事業が失敗したとき資金回収が困難になることを恐れて、銀行はチャレンジを支援するリスクを取りたがらないからです。

【フィンテック入門】クラウドファンディングで失敗しない上手な利用方法

 しかし、本当にユニークなビジネスアイデアというのは評価が難しいもので、こういうシチュエーションこそ、ITと金融を変えるフィンテックの仕組みが求められるところです。

 クラウドファンディングは、企業の資金問題を解決する新しい選択肢となっています。

■直接個人がアイデアを形にする資金を提供するクラウドファンディング

 もしかするとクラウドファンディングにお金を入れたことがあるよ、という人は結構多いかもしれません。それくらい、クラウドファンディングの認知度は高まりつつあります。

 クラウドファンディングの基本的な仕組みは、ネットを通じてまだ無名の企業や個人がそのアイデアを提示、いくつかの形式で資金提供を募り、資金提供者にはアイデアが実現した場合に、その成果物を提供する形で応える仕組みです。

 Kickstarterがもっとも有名なクラウドファンディングでしょう。私たち個人としては、そこで提案されている具体的な「モノ」について先行予約の感覚で資金を投じることで、人より早く(多くの場合はさらに割安で)新商品を手にすることができます。

【フィンテック入門】クラウドファンディングで失敗しない上手な利用方法

 こうした商品については最初は一般店舗には出回りませんので、レアなアイテムを人より早く手に入れるような快感を味わうこともできます。そして、多くのクラウドファンディングのおかげで、企業は信用や実績を積み重ね、一般販売も行えるような体力をつけていくことにもなります。

 また、商品購入券のようなクラウドファンディングだけでなく、寄付をするような形のクラウドファンディングもあります。例えば、内戦で荒れ果てた外国に子どもの学校を作ろう、というようなクラウドファンディングの場合、クラウドファンディングに入金した金額と、リターンとして得られる対価(現地で生産されたグッズや感謝の手紙、寄付者の名前が刻まれた銘板など)は見合わないこともあります。しかし、これもひとつのクラウドファンディングのスタイルとなっています。

【フィンテック入門】クラウドファンディングで失敗しない上手な利用方法

 クラウドファンディングは、kickstarterのように、サイト運営者があって、一定の手数料を得つつ、クラウドファンディングのポータル的機能を担うのが基本です。代表的なクラウドファンディングとしては、CAMPFIRE、READYFOR?、COUNTDOWN、Makuake、A-portなどがあります。

 外国のサイトも日本語対応していたり、国内の運営者が管理するサイトも増えてきているので、言語の壁で心配する必要もなくなってきています。

■クラウドファンディングの課題

 クラウドファンディングは、私たち個人と起業する側をダイレクトにつなぐ、とても魅力的な仕組みです。しかし若干のリスクもあります。

 クラウドファンディングのリスクがあるとすれば、モノは届いたものの提供した資金や期待に見合う商品開発に至らなかった場合や、開発失敗どころか資金回収ができないケースが起こりうる、ということです。

 人気のクラウドファンディングとなって、資金は十分に集めたものの、プレゼンしていた内容に実際届いたアイテムが追いついていないケースについては、しばしばネットの批判を受けます。期待が大きかった分、不満が大きいものとなったため炎上してしまうようなケースです。

 資金が回収できないしモノも届かない、というケースもまれに起こります。最近ではクラウドファンディングの運営者側が一定の管理を行なうので、集金詐欺のような深刻な被害は少ないようです。

 しかし、クラウドファンディングはそうしたトラブルも起こりうることをしっかり確認のうえ入金することが必要です。結果にこだわらず応援してあげたい、くらいの資金投入にしておくといいでしょう。

 株式投資などでは有限責任、つまり提供資金以上の損失は生じないことが投資の前提となっていますが、クラウドファンディングについても、提供資金以上の追加負担を求められることは基本的にありません。リスクはありますが、むしろ応援する側にとっては安心できる仕組みと考えてみるといいでしょう。

■投資系の「クラウドファンディング」には要注意

 ところで、クラウドファンディングには「ひとくち株主」のようなアプローチもあります。ネットでクラウドファンディングと検索すると、少額から参加できる投資案件を紹介するサイトの広告が上位に表示されます。多くはローンの出資者となって借りた人の利息を分配するモデルです。

 匿名組合のしくみを用いたソーシャルレンディングの仕組みは従来からありましたが、これをポジティブイメージのある言葉として「投資型クラウドファンディング」と呼ぶことが増えているようです。

 こちらについては純粋な投資案件となります。少額投資といっても10万円単位での運用を行うことになり、購入を伴うクラウドファンディングより高額になります。また、しばしば匿名組合の破たんが生じトラブルになっているのも事実です。

 「応援の気持ち」で行なうクラウドファンディングとはまったく別ものですので注意してください。

【フィンテック入門】クラウドファンディングで失敗しない上手な利用方法

■無理のない金額で応援してみよう

 クラウドファンディングは、プレゼン次第というところもありますが、まさにネットの時代に新しいビジネスを形にする資金調達の手段といえます。大量生産、大量消費の時代に「自分らしい消費」を見つける手段にもなっています。

 最近の例ではゲーム開発者の待望の新作についてのクラウドファンディングが話題を呼びましたが、開発時点で600万ドル以上の支援がありました。これは売り上げを最初から見込んで開発に専念できるようなものです。

 新商品のアイデア提案だけではなく、アーチストの活動、NPOの活動にもクラウドファンディングはその範囲を広げています。興味があるものをみつけて、一度試してみてはどうでしょうか。

文/山崎俊輔

AFP、1級DCプランナー、消費生活アドバイザー。企業年金研究所、FP総研を経て独立。商工会議所年金教育センター主任研究員、企業年金連合会調査役DC担当など歴任。近著は『お金が「貯まる人」と「なくなる人」の習慣』