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東京工業大学(東工大)は7月5日、火星の衛星「フォボス」と「ディモス」が月の起源と同じように巨大天体衝突で形成可能なことを明らかにしたと発表した。

同成果は、東京工業大学地球生命研究所の玄田英典特任准教授らの研究グループによるもので、7月4日付けの英国科学誌「Nature Geoscience」オンライン版に掲載された。

火星の赤道面を円軌道で回っている衛星フォボスとディモスは、火星質量の約1000万分の1、半径10km程度と非常に小さく、半径1000kmを超える月とは大きく異なっている。火星衛星は、そのいびつな形状と表面スペクトルが、火星と木星の間に存在する小惑星と類似していることから、小惑星が火星の重力に捕獲されたものがその起源であるとする「捕獲説」がこれまで有力とされてきた。

一方で、捕獲説の場合、現在の衛星の軌道を説明することは極めて困難であることが指摘されており、巨大天体の衝突により形成された火星北半球のクレーター「ボレアレス平原」の存在からも、巨大天体衝突によって火星衛星が形成されたとする「巨大天体衝突説」が提案されていた。

今回、同研究グループは、ボレアレス平原を形成する巨大衝突過程の超高解像度3次元流体数値シミュレーションを実施。この結果、巨大衝突による破片の大部分が、火星近傍にばらまかれたことで厚い円盤が形成された。さらに、火星の自転速度と衛星の公転速度が一致する共回転半径のわずか外側まで少量の破片がばらかまれ、薄い円盤が形成された。同円盤の約半分は火星から、残りの半分は衝突天体の物質から作られることもわかっている。

次に、円盤進化の詳細な数値計算を行ったところ、内側の重たい円盤からフォボス質量の約1000倍の巨大衛星が短時間で形成され、残った内側の円盤との重力的な相互作用によって、より外側に移動し、その過程で円盤外縁部を重力的な効果でかき混ぜることで、外側に2つの小さな衛星(フォボスとディモス)の集積を促した。その後、共回転半径の内側に存在する巨大衛星は火星重力によって引き戻され、火星と合体することで、現在観測されるフォボスとディモスのみが残ることが明らかになった。

今回の研究によって、火星衛星が巨大天体衝突によって形成可能であることが明らかになったが、同研究グループは、これは必ずしも火星衛星が捕獲起源であることを否定している結果ではなく、実際にどちらの説が正しいのかを決めるためには、火星衛星の物質を地球に持ち帰り、詳細に分析する必要があると説明している。

(周藤瞳美)