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●7nmプロセスの自前開発を目指すGLOBALFOUNDRIES
5月下旬にベルギーのブリュッセルで開催されたimecの研究計画発表会「imec Technology Forum (ITF) Brussels2016」で、米GLOBALFOUNDRIES(GF)のグローバル研究開発担当CTO(最高技術責任者)兼シニアVPのGary Patton氏(図1)が「技術で次の成長の波を起こし、電子産業を発展させる」と題した講演を行った。同氏は、元IBM半導体研究開発センター副所長として、IBMの半導体研究を主導してきた人物であるが、その後、多くの部下とともにGFへ異籍し、現在は同社の先端研究開発を指揮している。

○半導体改革のための研究テーマ

Patton氏はまず、「これから先、半導体をけん引するのは、IoTが産み出す新たな応用分野だろう。次世代IoT革命は、ネットワーク接続性(connectivity)、高集積化、そして超低消費電力設計にけん引される。伝統的なムーアの法則が未だに半導体の進歩を主導してはいるが、今後とも半導体市場が成長するためには、性能やコストを指数関数的に変えるための別のやり方も必要である」と述べ、このための半導体の先端研究テーマとして「(1)3次元トランジスタ(FinFET)の次のナノワイヤFETなどの新規トランジスタ構造(GFでは後述のように。FD(完全空乏型)SOI CMOSも候補の1つとして捉えている)、(2)デバイスを高速化するシリコン・フォトニックを利用したI/O、(3)製造コストを低減でき、サイクルタイムを短縮できるEUVリソグラフィ、(4)集積度を飛躍的に高められる先進2.5/3次元パッケージングなどがあげられる」と、具体的な重点研究テーマを挙げた(図2)。

○7nmプロセスは自社開発へ切り替え

Patton氏は、GFの社内で行っている微細化に向けた開発の状況について「GFがIBMマイクロエレクトロニクス(半導体)事業を譲り受けたことにより、IBMで45nm、32nm、22nm、14nmと開発を行ってきた技術者たちが異動してきて、今は7nmプロセス開発に従事している」と述べたほか、「14nmプロセスは、IBM買収前に、Samsung Electronicsからライセンス供与を受けていたが、現在、ニューヨーク州Maltaの工場で高歩留まりで製造されおり、IBMのサーバ用の半導体チップ製造に活用されている。IBM向けには部分空乏型SOI基板を用いていている。このほか、顧客の希望に応じるために、バルクCMOSを用いたLPP (Low Power Plus)FinFETプロセスも用意している」と複数の14nmプロセス技術を提供していることを明かす。

しかし、今後の技術ノードについては、「(Samsungからライセンスを受けることなく)IBMの協力を得て自社開発する」と強める。同氏はその理由は明かさなかったが、半導体業界内部では、「Samsungへ支払うライセンス料が高くても採算に合わない」とか、「Apple iPhone次世代モデル用A10プロセッサの生産受託にSamsusngが失敗したため、GFがSamsungのセカンドソースとして生産受託する可能性が断たれてしまい、Samsungと協業するうまみがなくなった」ためではないかと噂されている。

○IBMの力を借りて7nmでトップを目指す

Patton氏は7nmプロセス開発について「IBMからGFへ移籍したプロセス専門家に加えて、(半導体事業をGFに譲渡後も)IBMが手放すことなく運営しているAlbany Nono Technology Center(ニューヨーク州アルバ二―のニューヨーク州立大学ナノテク理工学カレッジ・キャンパスにあるIBMの先進半導体プロセス・デバイス研究開発センター)から支援を受けている。IBMとの契約により、Albany Nanotechnology Centerの業務の半分は、GFのMalta(同じニューヨーク州MaltaにあるFab 8)を支援し、残りの半分で、将来に向けた超微細加工の研究を行うということになっている」と説明した。

IBMは、すでに2015年7月に、Albanyの300mm研究開発ラインで、7nmプロセスを用いたチップ試作に成功しており、GFはIBMから移籍した多数のエンジニアの英知に加えて、IBMに残る次世代半導体研究開発陣の力も借りて7nmレースで世界の先端に躍り出たいようだ。

●なぜ、GFは7nmに賭けるのか?
○なぜGFは7nmに賭けるのか?

Patton氏は「なぜ、7nmプロセスに賭けるのか」との問いに「それは非常に魅力的だからだ」と答え、その理由を「微細化のスピードは鈍化している。現状の16/14nm、10nmといったプロセスノード名はマーケティングのためのツールにすぎず、微細化により新たな価値を生みだしているとは言い難い状況だ。2年ごとにコストを35%ずつ下げ、性能を20%ずつ上げることのできた時代は20nmで終わってしまった。各社はFinFETを導入することで、やっと14nmを実現しているが、コスト低減はできていない。GFとライバル関係にあるTSMCやSamsung Electronicsは10nmプロセスの実現を目指して競い合っているが、中途半端なプロセスだ。14/16nmプロセスを基準にすると7nmプロセスこそが次の技術ノードとしてコストや性能改善の希望が持てる」と説明する。

○2020年から製造導入を目指すEUVリソグラフィ

同氏はさらに「オランダASMLによるEUVリソグラフィの開発が遅れてしまっており、仮に7nmプロセスを用いた製造に使えなくなって、液浸ArFで多重露光を使わねばならなくなったとしても、微細化効果で7nmウェハ製造コストは下げられる」とするほか、「EUVリソグラフィは2020年から製造に使われるだろう。少量なら2018〜19年に使用が始まるのではなかろうか」とEUVの導入についての予測を述べた。

なお、GFは、ニューヨーク州立大学Polytechnic Institute(SUNY Poly)と共同で、ニューヨーク州の首都AlbanyにあるCollege of Nanoscale Science & Engineering(CNSE)キャンパスにAdvanced Patterning and Productivity Center(APPC:5億ドル投資し5年契約)を設立し、同キャンパスに自社の研究施設を設置しているIBM、東京エレクトロンなどと協力し、ASML製の量産用EUV露光装置の早期実用化を目指している。

○FD-SOIでも差別化はかる

そうした一方でGFは、22nm完全空乏型シリコン・オン・インシュレ―タ(FD-SOI)プロセスにも力を入れている。「22FDX」と名付けられた22nm FD-SOIプラットフォームを有し(図3)、リスク生産を2016年内に始めて、2017年には量産体制を敷く計画だ。同社の顧客は、FD-SOIの利点として、低消費電力、高性能、低リーク電流、それに、トランジスタ性能を顧客が変えられる基板バイアス効果をあげているという。

Patton氏は、「高い電流駆動力を備えたFinFETプロセスは、特に先端大規模チップに適している。一方で、IoT向けなど低消費電力が重視される小規模チップにはFD-SOIが選択肢になる。22FDXは、プレーナ型CMOSプロセスと同等のコストで、FinFETと同等の性能を実現できるので、FD-SOIの方が安くつく場合が多い」と述べ、今後も両者を共存させてファウンドリのビジネス展開するため、FD-SOIのさらなる微細化を検討している」と述べた。 さらに同氏は、主流のFinFETとFD-SOIに加えて、新材料・構造を用いた縦型FETや横型FETなどの新奇デバイス研究にも取り組んでいることを明らかにした(図4)。

IBMの半導体事業譲渡を受けた直後のGFは、余剰資産・人材に苦しみ、同時に、親会社のアラブ首長国連邦アブダビ政府系資本も原油価格暴落に苦しんだため、一時は外国資本への身売り話も出ていたが、最近は、中国本土への半導体工場進出を電光石火で決めたりIBMとの協業で技術力を強化して、名実ともにグローバルな規模のファウンドリになろうとしている。

(服部毅)