豊島逸夫氏
’13年の大暴落以来、長きにわたり低迷していた金が、今年に入り急騰している。欧州に日本も続き、世界が「マイナス金利」時代の様相を呈するなか、躍進する実物資産の雄・金への投資でどう儲けるか? 徹底ガイドする

◆下げた今が絶好のチャンス!金が上昇するこれだけの理由

「昨年は金が下がる年、今年は上がる年と考えていい。昨年の金の下げは、ひとえに投資家がアメリカの利上げに怯えて、年間を通じてほぼ下げ続けたのです。というのも、金利が付かない金にとって、利上げは天敵。利上げが行われれば、当然、マネーは金利が付くドルに流れますから」

◆利上げによるドル高は金の下落要因のはずだが?

 スイス銀行金ディーラーで経済アナリストの豊島逸夫氏は、金市場が年末年始を境に一変したと言う。だが、アメリカが利上げすれば、金は値を下げるのではないのか。実際、グラフを見てもらえばわかるように金とドルは逆相関性が強いことで知られる。

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「本来、アメリカの利上げは、金の天敵となっていたはずです。ところが今年に入り、アメリカの利上げがどうやら超スローペースらしい、ということがわかってきた。利上げ自体はするものの、回数、頻度、利上げの幅のいずれもが、極めて小規模であることがイエレンFRB議長の講演から確認されました。その結果、この程度の利上げなら恐れるに足らず、という見方が市場に広まったのです。さらに、7年もゼロ金利が続いたので、ウォール街の外為や貴金属のディーラーにすれば、通貨に金利が付かないのは当たり前という認識。これまで投資銀行のトレーダーは、利率ゼロの社内金利で資金を用立てて金に投資していた。ところが今後は、少なくとも0.25%の金利がかかる……ゼロ金利の頃と比べれば、大変なコストでハンデとなります。だからこそ、昨年はアメリカの利上げに注目が集まり、大騒ぎになっていた。でも、1年もこうしたことをやっていたので、慣れたんですよ」(豊島氏)

◆金利のつかない金はデメリットがメリットに

 ヘッジファンドなどの機関投資家は、利上げを見越してドルを買ってきていたので、実際に利上げされてもそれほどドル買いは進まなかった。むしろ、利益確定の売りの機会を窺っていた彼らは、今年に入るとドルを売り、一方でショートしていた金を買い戻し、金はV字回復の軌道に乗った。

「さらに、欧州と日本はマイナス金利を導入したので、金利が付かない金のデメリットがメリットに転じたのです。例えば、マイナス金利の国債を保有すると、金利を支払わなければならないが、金を持っていてもその必要はありませんからね」(スイス銀行金ディーラーで経済アナリストの豊島逸夫氏)

 そして年初、金に追い風が吹く。米利上げにタイミングを合わせるように、世界経済を牽引する中国市場が不調を来し、各地で地政学的リスクが火を噴いたのだ。ICBCスタンダードバンク東京支店長の池水雄一氏が言う。

「中東ではサウジアラビアがイランと断交、中国では上海株が急落、北朝鮮では核実験……投資家を不安にさせるリスクが表面化しました。特に、中国発の世界同時株安が、投資家心理に与えた影響は大きい。そんな状況で何に投資すべきかと考えた結果、金にマネーが流入してきたわけです」

 金にポジティブに働く要因は、まだ潜んでいる。豊島氏が続ける。

「中国経済は依然として先行き不安。それに、アメリカの大統領にトランプ氏が選ばれるリスク。こうした株式市場を暴落させかねない大きな不安定要因は、金が上昇する追い風になります」

 現在、金価格は1300ドルの大台に迫った後、調整が入り、1200ドル台前半を緩やかに下げている。