30日、水野和夫法政大教授は記者会見で、アベノミクスについて「事態は悪化しており、破たんの方向だ」と言明。日本の財政健全化の意志が弱いとみれば、外国人投資家はそれにつけこんで、「大惨事を引き起こすことで利益の極大化を図る」と警告した。

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2016年6月30日、水野和夫法政大教授は、納税者の立場から税制を論議する民間税調が日本記者クラブで行った会見で、安倍政権の経済政策アベノミクスについて「事態はますます悪化しており、破たんの方向に進んでいる」と語った。国債発行残高に占める外国人保有比率が上昇しており、日本の財政健全化の意志が弱いとみれば、外国人投資家はそれにつけこんで、「大惨事を引き起こすことで利益の極大化を図る」と警告した。

水野教授はマクロ経済、国際金融を文明史論的な視野から見た著作で知られ、『資本主義の終焉と歴史の危機』『人々はなぜグローバル経済の本質を見誤るのか』など多くの著作がある。

発言要旨は次の通り。

国債発行残高に占める外国人保有比率が上昇している。日銀「資金循環勘定」によると、16年3月末時点で外国人は日本国債を110兆円保有し、国際発行残高1075兆円のうち10.2%を占めている。最近のボトムは2002年3月の3.5%だったから、この14年間で3倍近くもシェアが高まった。外国人保有比率が何%になったら国家債務危機が起きると決まっているわけではない。日本政府は新興国の経済低迷リスクがあるという理由で財政再建計画を先送りしたが、その一方で外国人投資家の日本国債売りによる国債利回りの上昇リスクを、日本は抱えたことになる。

インフレや経済成長率とは関係なしにリスクプレミアム(リスクに応じて期待する上乗せ収益)が上昇し国債利回りが上昇すれば、手が付けられないことは2011年以降のギリシャ危機で証明済みだ。ギリシャの場合、2008年の時点で外国人保有比率は8割を超えた。日本はまだ10%台なのでギリシャと違って安心とは言えない。日銀が保有している364兆円(シェア33.2%)を除くと、外国人保有比率は15%にまで既に高まっている。日銀の異次元金融の出口が見えない中で日本銀行の国債保有残高は前年比で3割強増加しているため、外国人投資家が従来と同様前年比で10%増やしたら、市場における実質的なシェアは1年で約3%ポイント上がり、2年後には実質的なシェアは2割を超える。

消費税の引き上げの是非は、もはや景気回復の妨げになるという次元を超えた問題になっている。国債市場で外国人投資家がある一定のシェアを握れば、日本の破綻などおかまいなしに国債売りを仕掛けることで巨額の利益を得ることが可能となってしまう。2005年8月、ニューオリンズを襲ったハリケーン・カトリーナのときに保守派がとった行動を、ナオミ・クライン(カナダの著名ジャーナリスト)は「大惨事便乗型資本主義(ショック・ドクトリン)」と称している。

日本は財政健全化の意志が弱いとみれば、外国人投資家はそれにつけこんで、大惨事を引き起こすことで利益の極大化を図る。そうした行動は倫理的には当然非難されるべきものだが、「パナマ文書」でみられたように租税回避は違法でないということで各国政府はいまのところ有効な手段を講じていない。

21世紀は良くも悪くも「犬の尻尾(金融経済)が犬(実物経済)を振りまわす」金融優位の時代となった。世界的な危機は瞬時の国境を超える資本移動によって起きるのであって、税率の引き上げで起こるものではない。国家の危機はなにも戦争だけではない。仮に集団的自衛権で日本の安全を高めたとしても、消費税引上げ延期は外国人にどうぞ「大惨事」を引き起こしてくださいと宣言しているようなものだ。

もし消費税を引き上げたくないなら、法人税の税率を現政権発足時の税率に戻すべきだ。それでも足りない税収部分は租税特別措置の見直しで補填する必要がある。21世紀は格差がますます拡大する方向にある。主権者として、我が国の税財政のあるべき姿を考え、日本社会を安定した社会に変えるべきだ。

事態はますます悪化しており、安倍政権の経済政策アベノミクスは破たんの方向に進んでいる。(八牧浩行)