2006年、日本開催の世界選手権(現ワールドカップ)以来となる10年ぶりの世界の舞台――。しかも、自国開催枠ではなく、自力でつかんだ世界での戦いは日本に未来をもたらすだろうか。

 オリンピック世界最終予選、通称「OQT」(Olympic Qualifying Tournament)が7月4日からでセルビア、イタリア、フィリピンの3会場で開催される。バスケットボールのオリンピック出場枠は12。現在、2014年のワールドカップ優勝国のアメリカと五輪開催国のブラジル、そして各大陸予選を勝ち抜いた計9カ国が出場を決めており、この最終予選でチケットを獲れるのはたった3カ国。大会方式は出場18カ国を6チームずつ3つの会場にふりわけ、各会場の優勝国が獲得するシステム。日本はセルビア・ベオグラードが決戦の舞台となる。

 この予選方式となって3回目。過去2大会は韓国が接戦を繰り広げたものの、アジア勢はいまだ勝ち星がなく、予選ラウンドで敗退。日本にとっては初出場で、なおかつ10年ぶりの世界戦ということもあり"未知"の大会である。また、NBLのシーズンが6月5日まで長期にわたったこともあり、練習期間もままならずに臨むことになり、長谷川健志ヘッドコーチ(HC)は「チームの結束は固く、短い時間で精一杯のことはやってきたが、正直なところ練習期間はまったく足りない」とも言う。

 参加国中、日本のランキングは最下位の48位。そんな国が10年ぶりに世界に挑むには確かに強化時間は短すぎる。個々の能力で対抗できない日本は、組織的に戦う必要があるため、チーム作りには時間を要する。昨年、18年ぶりにベスト4入りを遂げて世界最終予選の切符をつかんだアジア選手権においても、6月から準備を開始し、9月のアジア選手権中に、敗戦を修正しながらようやく粘れるチームになっていったのだ。

 それでも、チームの誰もがこの大会の重要性を理解している。長谷川HCは「その名の通りオリンピックの最終予選なのだから、そこは経験しに行くのではなく本気で勝ちに行く。そのプロセスがあってこそ、10年もの空白から世界への第一歩が踏み出せる」と抱負を語る。

 大会は短期決戦。五輪切符獲得までの道のりは、予選ラウンド2試合、準決勝、決勝の4試合のみ。日本の実力を考えれば、予選ラウンドの2試合に全力を注ぐ必要がある。FIBAランキングだけでいえば、日本は35位のラトビア、42位のチェコと相まみえ、他のグループよりは戦いやすい組み合わせに入った。

 とはいえ、ラトビアもチェコも強豪ひしめくヨーロッパでしのぎを削っているチーム。日本よりは1ランク格上であることから、今大会は「超ハードワーク」というスローガンが掲げられた。決戦を前にして、選手たちが掲げる"超ハードワーク"と10年ぶりの世界へ挑む覚悟を示しておきたい。

「日本にとって10年ぶりの世界戦だけど、未知の世界だからこそ挑戦のしがいがある。1戦1戦、チーム一丸となって最初から最後まで、自分のやるべきことをすべてぶつけて出し切る大会だと思っていて、それはみんなわかっている。オリンピックをかけて戦うことは限られたチームしかできないことなので、1試合、1試合を大切に、楽しみながら全力でぶつかりたい」(田臥勇太)

「エキシビションマッチではなく、公式戦で世界相手に戦うのは10年ぶり。この10年間で自分がどれだけ成長できているか確かめたいし、野望というか、自分の名前を上げてやるんだという気持ちがあります。日本の15番やるな、と思ってもらえるようなプレーがしたい。それには何よりもリバウンドが大切。海外と日本のリバウンドの差は跳ぶスピードや瞬発力にある。国内の感覚でリバウンドに跳んだら取れない。国際大会では相手を跳ばせないためにも、一度、相手に体をぶつけることが必要で、その強いコンタクトを1試合通してやることがカギ」(竹内譲次)

「昨年はアキレス腱を断裂したため代表戦に出られず、その影響でなかなかコンディションが上がってこなくて6月の中国遠征はチームに迷惑をかけてしまった。ずっと代表で戦ってきたので、1年ぶりに合流してもやれるイメージがあったけど、国際大会のフィジカルの強さを出すことは思った以上に大変なことだった。でもシーズン中から、ケガ明けでも世界最終予選を戦うのだと腹はくくってきたので、大会までにはベストコンディションに持っていきます。引退するまで成長したいので今大会はまだまだ成長できる機会だと思っているし、この1年代表から離れていたからこそ、やってやりたい思いが余計に強い」(竹内公輔)

「"超ハードワーク"というのはディフェンス、ルーズボール、リバウンドで相手のコンタクトに負けないことと、細かいことまでしっかりやる日本の良さを出すことを言う。去年、アジア選手権でベスト4になった以上のことを出さなければ勝てない相手と戦うのだから、超ハードワークをするのは当たり前。アジア選手権では試合の大事なところで自分の体力が続かなくて決め切れなかった。この大会では自分が大事なところで決めることが勝ちにつながる」(比江島慎)

「中国遠征での自分は0点。自分があんなプレーをしていたのでは、わざわざアメリカから帰ってきて代表に呼ばれた意味はないです。もっと得点を取って、リバウンドに絡んで、試合の大事なところで力を発揮してチームの勝利に貢献したい。世界を相手にすることは楽しみでもあるし、早く対戦したくてワクワクもしているが、世界最終予選というのは、相手が100%でくるのなら日本は120%の力を出さなければならない大会。オリンピック予選なのだから勝利にこだわり、相手選手の上からダンクをぶちかますプレーを出したい」(渡邊雄太)

 オリンピックの切符をつかみに行く挑戦であるとともに、10年間閉ざされてきた世界への扉を開ける戦いが始まる。7月4日ラトビア戦(日本時間5日午前1時〜)、6日チェコ戦(同7日午前3時〜)、日本はまずこの2戦にすべてをぶつける。

小永吉陽子●取材・文 text by Konagayoshi Yoko