京都在住の和菓子ライフデザイナー、小倉夢桜(おぐら・ゆめ)です。

2016年も早いもので折り返しとなりました。

夏越祓(なごしのはらえ)が終わり、京都では7月1日より祇園祭の神事が執り行われ、いよいよ夏本番となります。

お寺や神社の池の水面には、馬蹄形の睡蓮の葉が一面に浮かび、葉の隙間からは綺麗な花が覗いています。気がつけば、梅雨が去り、京都らしい夏の光景を目にする時期にさしかかりました。

今回の「手のひらの幸せ」は、水面に浮かぶ睡蓮をモチーフにした焼き皮製のお菓子です。睡蓮の葉を模った焼き皮でこし餡を包んでいます。その上には、きんとんのそぼろで作られた小さな睡蓮の花があしらわれています。

和菓子職人さんによると、このようなお菓子は、最後に置く花の位置で出来の良し悪しが決まるそうです。

睡蓮の葉に対して、近過ぎず、遠過ぎず、絶妙のバランスに置くことが大切。それこそが、和菓子職人のセンスなのです。

こちらのお菓子には「水佳人(みずかじん)」という菓銘(お菓子の名前)がつけられています。美しい女性のことを「佳人」と言いますが、水面に浮かぶ美しい睡蓮の花を美しい女性にたとえてつけられた菓銘です。

水佳人

菓銘からは、言葉の持つ奥行きが感じられます。目で楽しむだけでなく、いただく前に菓銘を確認してから味わうと、新しい幸せを感じられるでしょう。

「睡蓮」と呼ばれるようになったワケ

睡蓮には「未草(ひつじぐさ)」という和名があるにもかかわらず、中国名の「睡蓮」が一般的に使用されています。「未草」という名は、未(ひつじ)の刻(午後2時頃)に咲くことに由来しています。

一方、中国名の「睡蓮」は、花が咲いている時間が短く、開いていたかと思えばすぐに眠るように閉じてしまうことに由来しています。そして姿形が、同じように水面で花を咲かせる蓮に似ていることから「睡れる蓮」と名づけられたのでした。

京都でおすすめの睡蓮スポット

睡蓮は特別な植物ではありませんので、池のあるところであれば、比較的簡単に見ることができます。京都なら「大覚寺」「龍安寺」「平安神宮」「勧修寺」で、この時期、立派な池に咲く睡蓮を鑑賞できます。

ここではおすすめの睡蓮スポットを2ヵ所紹介いたしましょう。

ひとつは「東本願寺」のお堀。京都駅から京都タワーを見上げながら烏丸通りを北へのんびりと歩いて10分足らず。お寺を囲むお堀には、街中とは思えないほどたくさんの睡蓮が咲いています。

もうひとつは、嵐山の「松尾大社」から東へ徒歩15分ほどのところにある「梅宮大社」です。こちらの神社の神苑にある咲耶池(さくやいけ)では、水面に咲く睡蓮と、そのまわりをゆったりと泳いでいく錦鯉の姿を楽しめます。観光客が少なく、とにかく静かにのんびりと過ごしたいという方には、おすすめの場所です。

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