孫正義氏ならマンUも買える?

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 2年7か月ぶりに「1ドル=99円台」をつけた6月24日は、英国のEU離脱決定による先行き不安を受けて世界中の株式市場が急落し、「暗黒の金曜日」と称された。

 とりわけ日本では、輸出産業への向かい風となる円高が急激に進んだことを受け、〈アベノミクス直撃を警戒〉(日経新聞朝刊、同25日付)といった悲観論が広がっている。

 しかし、国際金融アナリストの堀川直人氏は「この円高は日本経済全体としては、むしろ歓迎すべきこと」と正反対の見方をする。

「『円』の価値が上がったことのメリットは非常に大きい。簡単にいえば、価値の高い『円』を持っている日本人、日本企業はドルやユーロで買い物をする時に得になる。企業にとっては海外への投資やM&Aを進め、グローバル化をはかる絶好のチャンスです」

 昨年12月の為替相場は1ドル=123円台だったので、たった半年で日本円は米ドルに対して約2割も価値が高くなった。つまり、

《米ドルでの買い物は「2割引き」になった》

 ということである。ユーロをはじめとする他の主要通貨も同様で、英ポンドでの買い物は1年前と比べれば“3割引き”というバーゲンセール状態なのである。

◆孫正義氏がマンUのオーナーになる日

 サッカーのイングランド・プレミアリーグの名門「マンチェスター・ユナイテッド」を買収するケースを考えると、「強い円」の威力はわかりやすい。

 マンUは2012年にニューヨーク証券取引所に上場しており、この6月末時点での時価総額は約26億ドル。この額でマンU株をまるまる買い占めようとしたら、半年前なら約3200億円かかったところが、今は約2600億円で済む。

「ドルの買い物は2割引き」になり、約600億円も“値下がり”したのである。このバーゲンに乗らない手はない。

「2003年にロシア人石油王のアブラモビッチ氏が名門クラブ・チェルシーを買収し、世界にその名を轟かせましたが、マンUならそれ以上のインパクトがあり、オーナーは海外市場で一気に信用力を高められる。孫正義氏あたりなら、ソフトバンクを世界的なブランドにするために仕掛けても、おかしくないでしょう」(専門情報サイト『フットボールチャンネル』編集長・植田路生氏)

 折しもソフトバンクは中国電子商取引大手・アリババやゲーム子会社の保有株を売却し、2兆円近いキャッシュを調達したばかり。新たな大型投資案件を探す局面だ。

「マンUの放映権料は欧州でも最高水準で、ビジネスとしてのうまみは大きい。また、毎夏のシーズンオフにはスポンサー企業のある国に出向いて親善試合をするので、日本人、日本企業がオーナーになれば、当然、毎年日本に来るでしょう」(植田氏)

 恩恵はサッカーファンにも及ぶ。こうして「強い円」を最大限に活かせば、日本経済には全く違った地平が見えてくる。

※週刊ポスト2016年7月15日号