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●脳の驚くべき力と脳が招く恐怖の病
フジテレビは7月2日、『知られざる脳の真実!! 世界を変える奇跡の力〜今夜解き明かされる人類のフシギ〜』と題した土曜プレミアムを放映。脳がもたらす不思議な現象や、驚くべき脳の力を持った人々を紹介した。

番組では「音」を頼りに世界を"見る"ことができる全盲の男性や、脳の異常によって長期間にわたり眠ってしまう女性、認知症の症状を改善できる可能性を秘めた物質などが取り上げられた。放映後には、いまだ謎が多い脳の秘められた機能を目の当たりにした視聴者からのさまざまなコメントが、インターネット上にあふれていた。

○すべての物が幾何学的に見える男性

まず紹介されたのは、視界に映るすべての物が幾何学的に見えてしまうという男性。見た風景を瞬時に数式に変換し、コンピューターグラフィックスさながらの精巧な幾何学模様を描くことができる。ただ、物を見ると目ではなく脳が疲れてしまい、物が多すぎるといらだちを覚えるため、部屋には必要最低限な物しか置けないといった"弊害"もあるという。

この男性の脳を検査したところ、計算や図形の処理と関係がある左脳の頭頂葉が活発になっている一方、右脳は反応していなかった。これは、左右どちらかの脳しか反応しない「サヴァン症候群」によく見られる特徴。映画「レインマン」でも取り上げられていた同症候群は、自閉症や知的障害などを有する人にみられ、特定の分野で並はずれた力を発揮するという。

患者の多くは先天性ながら、この男性は脳にダメージを負ったことに伴う後天性のサヴァン症候群で、世界で30人ほどしかいないとのこと。ただ、その男性は「新しい視覚の世界」を受け入れ、今の見え方を最大限に楽しもうとしていた。

○何日にもわたり一日中眠る女性

続いて「クライネ・レビン症候群」、通称「眠れる森の美女症候群」の女性が紹介された。一度眠りに就くと数週間から数カ月間も眠りっぱなしでいることもあり、1年のうち3分の2を眠りに奪われているという。患者は100万人に2人ほどでティーンエージャーに多いそうだが、詳しい原因はわかっていない。

20代のその女性は16歳で発病して以降、病気のせいで外出をほぼすることがなくなった。症状が出始めるととたんに眠くなり、しゃべり方も小さな子供に退行したかのように幼くなる。まるで別人のようなしゃべり方が1カ月ほど続くときもあり、その間の記憶は本人にはない。

彼女の脳を調べたところ、脳内の側頭葉と後頭葉を接合する部分に異常が見られたという。そして脳全体に感覚を伝える視床が炎症を起こすことで、強烈な眠りに引きずりこまれ、過剰な睡眠に陥ってしまうとのこと。だが、治療次第では改善に向かう可能性もあるそうで、その女性は失った時間以上のものを得ようと前向きな笑顔を見せていた。

○音で世界を見る男女

「エコーロケーション」を得意とする全盲の男性を取り上げたチャプターでは、人は視覚を失っても人生を十分に謳歌(おうか)できることがわかった。全盲の男性は、自らが発した音が対象物に当たったときの反響音で対象物の位置や大きさを知るエコーロケーションを通じ、木の太さや壁の位置、階段の段差なども把握していた。まさに「音で世界を見ていた」のだ。

その男性は、自身と同じ境遇の人にエコーロケーションを教えているそうで、今回は全盲の元パラリンピックメダリストの日本人女性を指導。最後は2人してバンジージャンプを楽しみ、視覚が奪われたとしても毎日の日々をより良いものにするのは可能だということを、身をもって証明していた。

●脳機能を"回復"させる可能性を秘めた物質の正体
○冬虫夏草由来の物質が海馬に与える影響

最後は脳機能を"回復"させる可能性を秘めた「X物質」に焦点が当てられていた。X物質とは、カイコのさなぎで培養した冬虫夏草に含まれる物質。その活躍が期待される疾病の一つとして挙げられていたのが認知症だ。

既に認知症患者への臨床研究も始まっており、番組ではアルツハイマー型の認知症と診断された90歳以上の男性を紹介。同物質の服用を1年ほど前から開始しており、家族も効果を実感しているとのこと。現時点ですべての患者に効果は確認されていないが、岩手医科大学神経内科の寺山靖夫教授は「半信半疑で(投与を)始めたというのが実際のところですけれども、実際に認知症の例では明らかに効果が出ている」と話す。

風邪をこじらせて脳炎と診断された50代男性も、自身の記憶を取り戻すためにX物質の使用を始めた一人だ。

脳炎発症の4カ月後に撮影したMRIでは、脳内にある記憶と感情に関わる部分・海馬がはっきりと委縮していた。そのせいで多くの記憶が失われ、新たな記憶の維持も困難になったとみられている。事実、その男性は現在の日本の総理大臣の名前や、その日の日にちを答えることができていなかった。

このように損傷を負った脳の修復は医学界の課題とされているが、X物質は「海馬の機能回復」という点から期待されている。先行研究において、海馬が傷ついたマウスに5週間にわたり冬虫夏草を投与したところ、傷が消えたことが確認されている。研究チームは、冬虫夏草に含まれるX物質が脳に栄養を送り込む「グリア細胞」に作用して傷を修復、神経細胞の働きを回復したのではないかとみている。

○「このような技術が広がれば」

まだまだその機能の全容が解明していない脳の知られざる一面を紹介した同番組。放映後は「とても興味深い。脳の力」「脳科学の番組を見てるけど、すごくワクワクする」と、その神秘の力に感嘆している読者のコメントがインターネット上にあふれていた。

また、「エコーロケーションの技術が広がるといい。こういう番組も続けてほしい」「頑張って治ってほしい」などのように、エコーロケーションの認知度向上や技術支援の輪の広がり、そして病で苦しむ人の症状改善を祈る声などもみられた。

私たち一人ひとりの個性の違いは、各々の脳に影響されている部分も少なくない。それだけ興味深い存在であるにも関わらず、これだけ科学が発達した現代においても、脳の世界は解明されていないことだらけだ。

だが、本来は野生動物が持つ能力として知られているエコーロケーションを人間が習得したように、今回放映された同番組は、あらためて人間の脳の無限の可能性を感じさせてくれたと言えるだろう。

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