人工知能、戦闘機バトルでも人間を打ち負かす

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人工知能開発を行うPsibernetix社のシステム「ALPHA」が、米空軍研究所の空戦シミュレーターで元米空軍大佐に勝利した。このAIは、将来的には人間の操縦士を助けるアシスタントとして応用されるという。

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人工知能(AI)開発を行うPsibernetix社のAIシステム「ALPHA」が、米空軍研究所(AFRL)の訓練シミュレーターで行われた複数回の模擬戦闘で、元米空軍大佐のジーン・リーを打ち負かした。

シンシナティ大学出身の研究者で、Psibernetix社の創設者であるニコラス・アーネスト博士によると、このAIは、操縦士にリアルタイムでアドヴァイスするデジタルアシスタントのような役目を果たす可能性があるという。

Psibernetix社が商業化を目指すALPHAは、人が行うすべてのことを代行するわけではない。現代の戦闘機にはさまざまなセンサーが搭載されており、そうしたセンサーから送られてくる大量のデータをさばくのに役立つだろうと、アーネストは説明する。

ALPHAのAIシステムは、グーグルやフェイスブック、マイクロソフトのような大手テック企業が開発するAIシステムとは異なる。グーグルなどは、人の脳の仕組みにヒントを得たニューラルネットワークを利用している。それに対してALPHAは、「ファジィ論理」に基づいている。アーネストによると、これは脳の仕組みを模倣するのではなく、人の思考方法を模倣するものだという。

ファジィ論理に基づく制御システムは何十年も前から存在し、工業用の制御システムなどに利用されている。だが、スケーラビリティがないことが(普及の)妨げになってきたとアーネストは言う。こうしたシステムは、ごくわずかな入力情報に基づいて予測を立てるのは得意だが、入力情報が増えると、システムが複雑化しすぎて現行のコンピューターでは対処できなくなるのだ。

アーネスト博士がシンシナティ大学で開発したアプローチ「遺伝的ファジィツリー」(Genetic Fuzzy Tree)によって、ALPHAは何百もの入力情報に対応できるようになった。このアプローチは、入力される諸情報の関係性を維持しながら、大きな問題を小さな問題に分割するものだ。そのため、訓練段階では低価格のデスクトップPCで扱うことができる。訓練が終われば、スマートフォンのような性能の低い小型コンピューターでも利用が可能になるという。

研究結果は『Journal of Defense Management』にて掲載されている。