民間税調(座長=三木義一・青山学院大学長)が記者会見し、逆進性の高い消費税に依存せず、富裕層への所得税や資産税の強化、法人税の引き上げが必要と訴えた。写真は右から田中秀明明治大教授、三木座長、水野和夫法政大教授、青木丈氏(弁理士)、戸田智彦氏(弁護士)。

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2016年6月30日、納税者の立場から税制を論議する民間税調(座長=三木義一・青山学院大学長)主要メンバーは、日本記者クラブで会見し、参院選を前に「投票を前に税のあり方を選挙で問い直そう」と提言した。「格差を是正し、安定した社会にするためには税制や社会保障制度の再分配機能が活性化しなければならないが、現実にはますます弱まり、むしろ格差を広げている」と分析。税制や社会保障制度の再分配機能の活性化が急務であり、逆進性の高い消費税に依存せず、富裕層への所得税や資産税の強化、法人税の引き上げが必要と強調した。また国民が知らないうちに、参院選を前に票を目当てに酒の安売り業者を締め出す改正法を成立させたのは「時代錯誤」と批判した。

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記者会見に臨んだのは三木座長のほか、田中秀明明治大教授、水野和夫法政大教授、青木丈氏(弁理士)、戸田智彦氏(弁護士)。

提言要旨は次の通り。

選挙が近づき、各政党は票を得るため、支持を得やすい甘い政策を実施しがち。5月27日に全政党が賛成して成立した酒税法改正がその典型で、安売りを行う業者に対して、酒の販売免許の取り消しを可能にする内容。「町の酒屋」を救済するために販売免許制度の強化を行うというのは、時代錯誤としか言いようがない。この法案は昨年議員立法として与党が提出、その時代錯誤ぶりが批判されていたが、選挙前になって票目当てに再び提出し、与野党全政党が賛成し成立してしまった。問題は、販売免許制度という規制強化について消費者の意見を聞くことなく、国民が知らないうちに法律を改正したことで、とても民主主義とは言えない。

今年1月オックスファム(国際協力団体)が世界の上位1%の富裕層の所有する資産の総額が他の99%の所有するそれよりも多くなったこと、格差社会が拡大していることを明らかにした。さらに2016年4月、「パナマ文書」がICIJ(国際調査報道ジャーナリスト連合)によって公表され、各国の主要政治家がタックス・ヘイブンを利用している実態が明らかになった。資本主義社会はどうしても格差を生み出す制度なので、格差を是正し、安定した社会にするためには税制や社会保障制度の再分配機能が活性化しなければならないが、現実にはますます弱まり、むしろ格差を広げている。富裕層への所得税や資産税が形骸化し始め、法人税も国際的割引競争にさらされ、消費税のような逆進性の高いものに依拠せざるを得なくなっているからだ。

こうした傾向を変える必要があり、それを可能とするのは、選挙を通じての主権者の意志である。国民の生活を中長期的により豊かにするためには税制や歳出はどうあるべきなのか、主権者としての国民は冷静に考える必要がある。税制を、役人や政治家だけに任せるのではなく、主権者である私たちが自らの問題として考え、その意志を、選挙を通じて示すべきだ。

民間税調は、(1)税制を決めるのは何よりも主権者である納税者自身である、(2)国民経済を健全に発展させるためには、経済成長に伴う格差の是正が必要である―と考える。(八牧浩行)