NHK 大河ドラマ「真田丸」(作:三谷幸喜/毎週日曜 総合テレビ午後8時 BSプレミアム 午後6時)
6月26日放送 第25回「別離」 演出:渡辺哲也


いやあ、盛り上がりましたね、石田三成(山本耕史)の水垢離。
誘われたときはやらないと断り、その後、やっぱりやりにくる時間差攻撃及び、実戦にはあんなに弱いにもかかわらずカラダは鍛えているギャップが一層、三成の魅力を上げました。
ついでに言うと、利休役の桂文枝も切腹シーンでちらっと胸元を見せます。腹までは見せないなどの配慮もあったせいか、72歳にしてはなかなかいいカラダに見えました。芸を極めている人ってすべてにおいてエネルギッシュなんですねえ。

豊臣秀吉(小日向文世)が天下統一を完成させた天正19年、状況は徐々に悲劇へと向かっていた。
1月22日、秀吉の弟・秀長(千葉哲也)が死亡。52歳。
2月28日、千利休(桂文枝)が切腹。70歳。
8月5日、捨から鶴松に名を改めた秀吉の子供が病気で死亡。2歳と2ヶ月。
秀吉の周辺から徐々に人がいなくなっていく。
秀長は秀吉に利休の処分を勧め、秀吉の年齢(55歳)のことも考慮し、「今後は誰かひとりに力が集まるようなことがあってはならない」と助言する。
「兄上がいなくなっても私が鶴松を支えられる」と言っていた長秀だったが、彼も鶴松も秀吉より先に死んでしまう皮肉な流れに。なんてこった。
秀吉のような狂人と天才は紙一重みたいな人物の生は短く燃焼し、一代で終わってしまうものなのかもしれない。
それに比べて真田昌幸(草刈正雄)は、沼田城を信幸(大泉洋)に、岩櫃城をようやく再会した松(木村佳乃)と茂誠(高木渉)夫婦に預けてリスクを分散している。
そして家康も虎視たんたんと自分の出番を待っている。
鶴松の見舞いにやってきた昌幸と家康(内野聖陽)が別々の間で、今後の秀吉に関して同じような話をしているところが交互で映る。さすが抜け目のない武将たち、潮目が変わり、自分たちにチャンスがやってきたことを見逃さない。
とはいえ、ひとりがこの話をすると単調な状況説明のようになってしまうところを、真田と徳川に二分させる構成に。これこそ「誰かひとりに力が集まるようなことがあってはならない」という秀長の考えと一致しているではないか。
それぞれ話した後に、別の方角から部屋を出てきて、昌幸と家康が出くわすことで、分散させた話を一本に統合するのも巧い。
関ヶ原の戦いに向けて、着々と事態が進行している重い時間の中に、前述の三成ターンや、薫(高畑淳子)と片桐且元(小林隆)の薬草コント(といっていいのか)、信幸と稲(吉田羊)とこう(長野里美)の三角関係コント(これはコント扱いでいいよね)などを練り込んで、これまたシリアスと笑いでリスク分散させた上に、商売人の利休に金の話を、城を守っている信幸にも金の話をさせて、戦には金も重要であることも、袖の下をさらりと潜り込ませるように重要なことをそっと書き込んである。
こうして三谷幸喜の鮮やかなテクニックに酔いしれながら観ていると、25話が向かった先はこの上もなく深刻なクライマックスだった。

ロウソクの火のみの薄暗がり、馬のおもちゃを前にした秀吉が信繁(堺雅人)に問う。
「教えてくれ 鶴松は なんのために生を受け、なんのために死んでいくんじゃ」
信繁は「良くないことを口にするとそのとおりになると言います。良いことだけを考えましょう」と言って、
未来のことを想像させる。
「元服されるとなんという名前になるのですか?」「奥方はどうされるのです?」などと話してしていると、次第に気持ちが明るくなっていく(これ、日常、いやなことがあった時の参考にしたい)。
だがしかし・・・祈りも虚しく、鶴松は息を引き取る。
鶴松が好きだったでんでん太鼓をかすかに鳴らしながら、亡骸の前に力なく座り込む秀吉・・・それを映すカメラもじょじょに引いて行き・・・・
一方・母の茶々(竹内結子)は、「だって死んでしまったんですもの 横にいたって仕方がないでしょう。
皆死んでしまう わたくしの大切な人たち・・・」と竹内の真骨頂・美しい虚無顔をするが、それだけではなかった。
肩を落として廊下を歩く茶々の前に寧(鈴木京香)が現れて、すれちがいざま抱きしめる。
すると、茶々を覆っていた鎧が壊れて、カラダの中から悲しみが溢れ出した。泣くというよりも叫ぶように、あーーー、と何度も何度も声を絞り出す竹内結子。
鈴木京香の母性的な包容力も圧倒的だし、竹内結子の泣きも真に迫る。エヴァンゲリオンVSゴジラみたいなツワモノたちの演技対決だった。

鶴松の死は利休の祟りなのではないかと城ではまことしやかに語られているが、利休の死のきっかけを作ったのは茶々(淀殿)。悪気があってか偶然か謎ではあるものの、利休に似た木像を大徳寺の山門に飾ったのは、茶々の言動が引き金だった。彼女のことを「おそろしい」と言うきり(長澤まさみ)。豊臣家の悲劇は、茶々によって大きくなっていくのだろうか。
「鶴松の死は大きな影を落とした だがそれはさらなる悲劇の序章に過ぎない」と重く有働由美子が語ったあとの次回予告が、やたら陽気な「瓜売」。どこまでも裏切ってくれる「真田丸」。
(木俣冬)