綾野剛 、斎藤工 、新井浩文…オトコマエな蜷川実花写真集「IN MY ROOM 」

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新井浩文 、窪塚洋介 、永瀬正敏 、綾野剛 、斎藤工 、村上淳 、 MIYAVI 、渋谷慶一郎 、菅田将暉 、妻夫木聡 、金子ノブアキ 、松山ケンイチ、早乙女太一、大森南朋、竜星涼 、玉木宏 、登坂広臣、猪子寿之、村上虹郎、大東駿介、小林直己 、堂珍嘉邦 、NAOTO 、鈴木亮平 、柄本佑 、伊勢谷友介 、三浦貴大 、中村達也 、瀬戸康史、浅野忠信 、坂口健太郎 、間宮祥太朗 、成田凌、 吉村界人 、東出昌大 、窪田正孝


眼福の36体。
19歳の新進気鋭の俳優から50歳の熟した俳優たち、さらには音楽、デジタルアートのクリエーターまで、今、気になるオトコたちが完璧にラインナップされている。女性人気抜群の斎藤工や窪田正孝などは当然抑えられているうえ、朝ドラで注目された坂口健太郎からNHKの新ドラマ「ふれなばおちん」でハセキョウを誘惑する年下男役に抜擢された新鋭・成田凌の顔もある。さらにはデジタルクリエーターの猪子寿之まで。
そのひとりひとりに写真家・蜷川実花が肉薄した写真集「IN MY ROOM」は、雑誌「EYESCREAM」で連載されていた「蜷川実花のプライベートモード」を1冊にまとめたもの。それでなくても、蜷川実花の写真は濃密なので、まとめて36人だと宝物殿のようにまばゆい。

写真集を買う前に、発売に合わせて開催された写真展を見に行った。
入り口を入ってチケット買う場所のすぐそばにこんな一文が。

「その人と同じ呼吸になるように、密やかに息をあわせる 同じ膜に包まれることが出来たら、こんなに嬉しいことはない」 

会場は宝物殿というより迷宮だった。2、3人が歩くと窮屈に感じる通路状態に会場を作り込み、ジグザグした角を曲がり、入り口をくぐるたびに、またひとり、またひとりと男たちの顔とカラダが立ち現れる。
しょっぱなは、大河ドラマ「真田丸」で加藤清正役の新井浩正。その後はベッドで煙草吸う窪塚洋介、道路でしゃがむ綾野剛、ホテルでカメラ目線の斎藤工、菅田将暉の大きな瞳、雨粒越しの玉木宏、跳ぶ村上虹郎、肩を抱く鈴木亮平、クラゲと瀬戸康史、甲を噛む坂口健太郎、窪田正孝の眉間・・・各々、ドキリとする目線や仕草で、しかも大判で迫ってくる。
ドラマチックな迷宮の路地は、一部をのぞき撮影可能で、女子高生ふたりが写真を背景に自撮りしまくっていたりして、通路を一気に通り抜けるというよりも、各コーナーごとにじっくりと見たり撮ったり、写真と絡み合う時間がほかの写真展よりも長い気がする。狭い通路に観客がひしめきあって酸欠になりそうなのに、なぜか不思議に心地よい。これが蜷川実花の呼吸なのか。驚くほどゆったりと感じる、その呼吸でリズムを刻みながら見つめる眼差しに対して、オトコたちは最高にかっこいい表情になっていくのだろう(妄想)。それは、蜷川実花の見たい顔なのか、蜷川実花だけが気づいた被写体の本質なのか、明確にはならないふたつの意識が溶け合って写真に定着する(妄想)。

写真集の巻末には、蜷川実花と被写体の対話が1200字ほどでまとめてあり、展示でもその文章は読むことができる。そこで綾野剛はこんなことを言っている。
「レンズを覗いていると周りが見えなくなるからすごく危険だし、そのことを考えてやらないといけないとも思っていて(道路にいる時は実花さんの安否)を意識しながらやるわけです」。
被写体は、レンズ越しに自分を見つめ追いかける(追い込む?)蜷川実花の動きにも神経を配っている。言葉のない(多少はあるかもしれないが)、気持ちのパスをしながら、ふたりは未知なる領域へと向かっていく。その密やかな関係を我々読者はのぞき見る。
顔や仕草が素敵と思うポートレートというよりも、何かストーリーを見ているような写真もすこぶる刺激的なうえ、対談での蜷川実花の発言もいちいち興味深い。
「根が乙女なんですよ(笑)。少女マンガ気質のまま奇跡的に育ってきちゃったんです(笑)」という自己分析を読んで、ドキッとする目線とか、長い指などのパーツとか、煙草吸っている表情などが確かに少女マンガのようだと納得したり、「私、得意なんだけどね、グーグルで調べてプロファイリングするの。こういう風に撮れば素敵になるかな、とか想像するんだけど(後略)」という発言から、俯瞰とか煽りの絶妙に気持ちいい角度は考え抜かれたものなのだなあ、などと写真の答え合わせがちょっとだけできる。でもあくまでちょっと。写真はそこを入り口にして、巨大な宇宙に広がっていくので。

写真集は、36人がひとりずつきっかり4ページずつ。4ページだがもっとあるように錯覚するほどだ。
「私もいまだにカラフルでポップに撮ってくださいみたいに言われて。でも、前に撮ったのと同じようにって言われるのも嫌じゃない。だからアレンジをして、これが私の新しい“かわいいですってだしたりするんだけど、前の方がいいなって感じになったりして笑 でもそれをやらないとね(後略)」と若い俳優の悩みを、自分の悩みを交えながら聞く蜷川実花さまな感じも楽しい。天下無敵に見える蜷川実花さまも悩んで、それでも先へ行こうとしているのだ。
「私はどこまでいっても私のためにしかものをつくってないんです。(後略)」いやもうなにもかも潔くかっこいい。
(木俣冬)