弁護士・柳原桑子先生が堅実女子のお悩みに答える連載。

今回の相談者は、結婚はしたものの夫が彼女の家に入りびたりで、ほとんど家に帰って来なくなってしまったという千佳子さん(36歳・マスコミ関連会社勤務)。

 「どうしても結婚したかった時期に、出会い系アプリで知り合った夫と結婚して5年になります。最初の1年間は楽しく結婚生活を送っていたのですが、私が彼のケータイを見ていることがバレて険悪な雰囲気になり、夫が家出してしまいました。

最初は実家にいたようなのですが、その後彼女ができたようで、4年間はその女性の家にいて、実はほとんど会っていません。しかし私は“既婚者”という社会的信用を得たいので、夫とは絶対に離婚をしたくありません。

でも夫はそう思ってないみたいで、自分で浮気をしたにもかかわらず、私に対して離婚してくれと言ってきます。どうも相手に子供ができたようです。

先に結婚したのは私で、私は4年間も夫以外の男性と恋愛していませんし、離婚も絶対にしたくありません。夫とは一緒に住まなくてもいいし、愛してもいないし好きでもありませんが、離婚はしたくありません。

もし裁判ということになった場合、夫の身勝手な要求が認められることがあるのでしょうか。これに対して私はどのように応戦すればいいのでしょうか。

弁護士・柳原桑子先生の回答は……!?

結婚して5年なのに、たった1年しか同居していない夫と離婚したくないという千佳子さんに対し、柳原桑子先生のアンサーは以下。

夫が不貞行為をし、別居しているという状況において、夫の離婚請求は原則として認められません。

なぜかというと、婚姻関係を破たんさせる行為をした者(有責配偶者)からの離婚請求は信義則(社会共同生活において、権利の行使や義務の履行は、互いに相手の信頼や期待を裏切らないように誠実に行なわなければならないとする法理のこと。信義誠実の原則ともいいます)などに反するからです。

ただ、夫婦の別居が長期間におよんでいて、よりを戻す余地はなく、未成熟な子どもがいなく、不貞された側の配偶者が経済的にフォローされるなどして困窮しているというものでもない場合には、離婚が認められる可能性があります。

別居が長期間といえるかどうかは、一律に何年という決まりがあるわけではなく、婚姻期間全体の中での同居期間との比較において個別に判断されます。

本件では、5年間の婚姻期間の中1年間の同居に対して、4年間の別居というのは、決して短くはありません。経済的諸事情が不明でもあるし、現状でどうかとの確定判断はしかねるものの、今後別居が継続していけば、もっと別居期間が長くなるので、夫の離婚請求が認められる方向に近づくと思います。

今すぐの話としては、有責配偶者からの離婚請求は認めないという主張で反論することになると思いますが、ご自分の人生として、裏切り行為をし、戻って来ない夫と夫婦であることを続けていくことについて、それが本当に都合良いことなのかどうか、慰謝料を請求して離婚に応じるということも検討に入れて、この機会に再考してみたらよいと思います。

手を離したら幸せになるもしれないと思いながらも、既婚者というステイタスに執着してしまう。



■賢人のまとめ
自分にとって何が幸せかどうかを考えて、人生の進路を決めるのもアリだと思いますよ

■プロフィール

法律の賢人 柳原桑子

第二東京弁護士会所属 柳原法律事務所代表。弁護士。

東京都生まれ、明治大学法学部卒業。「思い切って相談してよかった」とトラブルに悩む人の多くから信頼を得ている。離婚問題、相続問題などを手がける。『スッキリ解決 後悔しない 離婚手続がよくわかる本』(池田書店)など著書多数。

柳原法律事務所http://www.yanagihara-law.com/