頭痛にくわえ、もっと心配な病気まで

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頭の片側がドクンドクンと脈打つように痛む片頭痛(偏頭痛)。女性に多い病気の1つだが、片頭痛持ちの女性がさらに気が重くなるような研究報告が発表された。

片頭痛の女性は心筋梗塞や狭心症などの心臓病にかかるリスクが高いというのである。

心臓に悪影響を与える点では、喫煙や高血圧並み

日本頭痛学会などによると、片頭痛は日本人全体の8.4%(約840万人)がかかっており、女性は男性の3〜4倍も多い。特に若い世代に多く、30代女性の約20%、40代女性の約18%が片頭痛に悩まされている。脳内の血管がなんらかの原因で拡張すると、その周囲を取り巻いている脳神経の中で一番大きい三叉神経が圧迫され刺激を受ける。そして、炎症物質が放出され血管の周りに炎症が起こり、ズキズキ痛むのだ。片頭痛にも様々なタイプがあり、なぜ血管が拡張するのかについても諸説があり、はっきりしていない。

女性にとってショッキングな研究をまとめたのは、米ハーバード大学付属ブリガム・アンド・ウィメンズ病院のチームだ。英医学誌「ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル」の2016年6月号に発表した。

研究チームは、米国看護師健康調査に登録された25〜42歳の女性看護師11万5541人のデータを対象に、片頭痛と心血管疾患(心臓病や血管の病気)の関連を調べた。このうち片頭痛と診断された女性は1万7531人(15.2%)で、20年間の追跡期間中に、その中で1329人が心血管疾患を発症、223人が死亡した。

様々な要因を考慮したうえで、片頭痛の人とそうでない人との心血管疾患の発症リスクを比較すると、片頭痛の人はそうでない人に比べ、心血管疾患全体のリスクは50%高かった。個別の病気では、心筋梗塞が39%増、脳卒中が69%増、狭心症が73%増、心血管疾患による死亡が37%増だった。

研究チームのレベッカ・バーチ医師は「この数字は、女性の片頭痛が心臓病の危険因子であることをはっきり示す結果になっています。心臓に悪影響を与える喫煙や高血圧、高コレステロール症と同じように注意しなくてはいけません」とコメントしている。

片頭痛の原因は、心臓に開いている「穴」だった?

実は、片頭痛と心臓病の関連が指摘された研究は、これが初めてではない。2010年2月に発表された米アルバート・アインシュタイン医科大学の研究によると、片頭痛の人は、そうでない人に比べ、心臓発作を起こすリスクは2倍高い。また、片頭痛には前兆を伴うタイプと伴わないタイプの2種類がある。前兆には、チラチラする光、ギザギザに走る光などが見える神経症状を起こす人が多い。こういった前兆を伴う片頭痛の人は、心臓発作を起こすリスクがさらに3倍に跳ね上がった。

なぜ片頭痛の人は心臓病になりやすいのだろうか。両研究とも因果関係を説明していないばかりか、片頭痛の原因自体に定説がないので、はっきりしたことはわかっていない。ただ、アルバート・アインシュタイン医科大学の研究では、同時に行なった調査で、片頭痛の人はそうでない人と比べ、糖尿病や高血圧、高脂血症、肥満などの危険因子を持つ率が約50%高かったという。片頭痛の人にはもともと心臓病になりやすい体質の人が多いようだ。

ところで最近、片頭痛と心臓の意外な関係が明らかになった。2015年5月、岡山大学が片頭痛患者の治療のため、心臓に開いている穴をふさぐ手術(カテーテル方式)を行なうと発表した。それによると、心臓には4つの部屋があるが、胎児が胎内にいる間は右心房と左心房を隔てる壁に「卵円孔」(らんえんこう)という小さな穴が開いているという。普通は出産前に閉じてしまうが、約15〜25%の人は「卵円孔」が開いた状態で生まれ、成長する。

普通なら心臓に戻ってきた血液は肺に送られ、不要物を取り除いた後、酸素を取り込み、体のすみずみに行き渡る。しかし、「卵円孔」が開いていると、血液がそのまま穴を通って脳や体中に送られてしまう。穴が大きすぎると、静脈にできた血栓(血の塊)が穴を通って直接脳に送られ、脳梗塞を起こす恐れがある。片頭痛も穴を通過した血液内の不純物が原因とみられるのだ。

特に、「チラチラ光って見える」などの前兆は、脳の視神経の中枢をこうした血液が刺激している可能性がある。「前兆のある」片頭痛の人で穴が開いている人の割合は、「前兆のない」片頭痛の人や、片頭痛ではない人の約2倍というデータもある。

岡山大の調査によると、過去に脳梗塞の治療のために「卵円孔」をカテーテルでふさいだ人の半数が片頭痛の持ち主だった。しかも、そのほとんどが穴をふさぐと片頭痛が消失、または改善した。つまり、心臓に開いた穴(卵円孔)が、片頭痛を引き起こすと同時に、脳や心臓の病気を引き起こしている可能性があるわけだ。

「心配しすぎないで運動や食生活を見直そう」

いずれにしろ、アルバート・アインシュタイン医科大学のリチャード・リプトン博士は、片頭痛の人々にこうアドバイスしている。

「片頭痛の人は、過剰に心配する必要はありません。心臓病のリスク増が見つかったとはいえ、実際の患者の数はとても少なく、片頭痛持ちの人の4.1%が心臓発作を起こしただけです。亡くなった人はもっと少数です。定期的に運動をして、正しい食生活を続ければこのリスクはさらに減らすことができます。この研究があなたの健康を改善できる動機づけになることを願っています」