写真提供:マイナビニュース

写真拡大

情報通信研究機構(NICT)と国際電気通信基礎技術研究所(ATR)は7月1日、白黒の縦縞を見ているときと、赤色を見ているときの低次視覚野の脳活動を対応付けるようにトレーニングすると、物理的には白黒の縦縞が赤みを帯びて見えるようになる技術を開発したと発表した。

同成果は、NICT 脳情報通信融合研究センター 天野薫主任研究員らの研究グループによるもので、6月30日付の米国科学誌「Current Biology」に掲載された。

複数の感覚入力や感覚属性をペアにして呈示すると一方だけで他方が想起される「連合学習」という現象の例として、犬に餌を与える前にベルの音を鳴らすことで、次第にベルの音を聞くだけで唾液を分泌するようになったというパブロフの条件反射などが有名である。こういった連合学習は、大脳皮質頭頂葉、前頭葉、海馬など比較的高次の脳領域で起こるとこれまで考えられてきた。

しかし、同研究グループは今回、連合デコーディッドニューロフィードバック(A-DecNef)法という非侵襲的な脳活動操作技術を開発し、視覚野の入り口にあたる低次視覚野において方位と色の連合学習が生じることを明らかにした。

具体的には、まず被験者が赤色および緑色の画像を見ている際の脳活動をfMRIによって記録し、初期視覚皮質における脳活動から、見ている色を推定するデコーダーを作成。続いて、白黒の縦縞を見ている際の脳活動をfMRIによって記録し、その脳活動が赤色を見ているときの脳活動に近いほど丸が大きくなるようなフィードバックを被験者に与えた。

一方、被験者は、白黒の縦縞を見ながら、縦縞が消えた後7秒後に出てくる丸のサイズを大きくするよう指示されており、試行錯誤しながら円を大きくする方法を3日間模索した。

この結果、被験者は、白黒の縦縞を見ているときの脳活動と赤色を見ているときの脳活動が連合され、白黒の縦縞が赤く見えるようになった。これにより、方位と色の連合学習が、視覚処理の入り口にあたる第一次視覚野、第二次視覚野という低次視覚野で生じている可能性が示唆されたといえる。

同研究グループによると、同手法は、現在、強迫性障害や心的外傷後ストレス障害(PTSD)などの精神疾患の治療への応用が試みられており、将来的には脳梗塞などによる大脳損傷によって生じる色覚異常の治療法にもつながることが期待されるという。

(周藤瞳美)