南アフリカ戦で2ゴールを挙げ、矢島から「10番」を奪還。慣れ親しんだ背番号で待ち望んでいた世界との戦いに挑む。 写真:茂木あきら(サッカーダイジェスト写真部)

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 7月1日、リオデジャネイロ五輪に臨む日本代表の最終メンバー18人が決定し、チームの立ち上げから攻撃を牽引してきた中島翔哉は、見事ブラジル行きの切符を手にした。6月29日の南アフリカ戦では2ゴールをマーク。健在ぶりをアピールしている。

 2014年の富山時代は選手と監督、2015年からはFC東京で選手とコーチとして信頼関係を築き、中島も「思ったことを言ってくれるのでありがたいです」と感謝する安間貴義コーチ(兼FC東京U-23監督)に“サッカー小僧・中島翔哉”を語ってもらった。

【リオ五輪PHOTO】正式登録メンバー18人が決定!

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 今回、翔哉がオリンピックの最終メンバーに選ばれたということで、指導者として、そして同じ“サッカー仲間”として、とても嬉しく思います。

 彼を見ていれば、サッカーが好きだと分かる。「〇〇の試合の〇〇を観た」「あの試合は〇〇だった」と、話す内容や質問がサッカーの話ばかり(笑)。他にも、ちょっとしたすれ違いでもドリブルで抜きに来たり、急にワンツーをしてきたり、すぐにボールで絡んできます。靴が茶色く汚れている時があるんですが、あれは絶対にどこかの公園でサッカーをやってきている。余っている時間はすべてボールを触りたい――。出そうとしていなくても、(サッカーが)好きなオーラが滲み出ているんです。

 翔哉との出会いは、私が富山で監督をしていた2012年まで遡ります。10月の天皇杯3回戦(清水×東京V)に白崎(凌兵/清水)を見に行った時、(東京Vの)トップ下にピッチを縦横無尽に動き回って、ドリブルでグイグイ仕掛けていた小柄な選手が翔哉でした。近年はパスを志向するスタイルが主流のなか、「突破」という自分の特長を出そうとする面白い選手がいるなと。
 その後、14年に期限付き移籍で富山に来てくれたのですが、久々に翔哉を見たら、身体が全部外に向いてしまっていて、自分から前に持ち出そうという彼の良さが薄まっていました。おそらく、パスで(ゲームを)組み立てないと試合に出られない背景もあったのでしょう。富山はプロビンチャで個に秀でたタレントが豊富なわけではありませんでしたから、「どんどん仕掛けていってほしい」と話をしました。
 
 自分の良さを出そうと、とにかく仕掛けることを最優先で勝負をしてくれました。もちろん、上手くいく時も上手くいかない時もありましたが、当時の富山はそれぞれのキャラクターを大事にすると同時に、昔から在籍してきた選手が輪を大事にしていた。そういった環境がトライする姿勢を支えていたというか、やりやすかったはずです。振り返れば、翔哉にとっては富山への移籍がひとつの転機だったと思います。
 
 15年からは、FC東京でコーチと選手の関係になりましたが、端から見ていて、普段の練習からより質の高い選手とやれているので、翔哉の欲しいタイミングでボールが出て来ることが増えましたね。しかも、良い質と良い質を組み合わせれば、自然と“ユーモア”が生まれる。彼の言う「楽しむ」感覚がまた味わえているのは大きいです。
 
 東京には(東)慶悟、梶山(陽平)とオリンピック過去2大会の歴代の10番がいて、簡単にはポジションを奪えません。今はレギュラーを勝ち獲るための準備をしている状況ですが、彼の良いところは、サッカーに対する情熱がブレないだけでなく、常に上を見ている。よく「安間さん、すみません。俺、J1に出るから、J3には出られません」と言っていますよ(笑)。毎回、J1の試合メンバーから外れれば悔しがるし、かと言ってふて腐れるわけでもなく、J3でもやるべきことをやります。
 
 4月に怪我(右膝内側側副靭帯損傷)をした時も、弱音を吐いたことはありませんでした。故障箇所が膝となれば、普通はリオに行けるか行けないか、気になったり不安になったりするところです。でも、「間に合います」、「オリンピック行きますよ」と、リオに行く前提で日々のリハビリに精を出していました。一歩間違えれば、慢心と捉えられてしまうのかもしれません。でも、決してそうではなく、実際に最終メンバー入りを果たしているので、自分を信じて疑わないことがどれだけ大事か分かって頂けるのではないでしょうか。
 これは僕の持論ですが、日本ではお互いを意識し過ぎて、“世間”で生きている選手が多い。でも、「俺はこういうプレーをする」、「勝つために必要なら俺はこれをやる」としっかりした個が集まっているのが海外。いわば“社会”で生きているわけです。(海外へと羽ばたいて行った)武藤(嘉紀/マインツ)も、(太田)宏介(フィテッセ)もそうでしたし、翔哉もその素養は備えていると思います。
 
 オリンピックでは相手もフィジカル的に手強くなりますが、翔哉は小回りが利くし、テクニックもある。一瞬のスピードだったり、仕掛けるタイミングは、アフリカ、ヨーロッパ、南米にはあまりないタイプ。アジア最終予選の準々決勝・イラン戦で左サイドからカットインしてシュートを決めたドリブルあたりは効果的かなと。
 
 翔哉自身、海外の選手のほうが真っ向勝負をしてくれる分、かわしやすい、抜きやすいと「対世界」に自信を持っています。「試合に出てしまえば自分のモノ」というくらいに思っているかもしれません。自分のストロングポイントをどんどん出して、思い切って勝負してほしいです。
 
 きっと翔哉は無我夢中で戦うでしょう。彼が精一杯やれば、自然とチームを引っ張ることになると思います。オリンピックは通過点であって、行って終わりではなく、行って何をするかがすごく大事。リオで新しい刺激を感じ取って、『次に向かうべき場所を決めて来い!』と思っています。
 
取材・構成:小田智史(サッカーダイジェスト編集部)