ジョジョの赤ちゃんエピソードは心臓に悪い


赤ちゃんは人の心を和ませる癒やしであり、未来を背負う人類の宝。こんにちわ赤ちゃん、私がママよ〜とうたわれた母性本能をジョジョ流に翻訳すると「あたしィィィの赤ちゃあァァァん!」。赤ちゃんはゾンビ化したママが美味しく頂きましたという風に、荒木飛呂彦ワールドでは出るたびに心臓にとても悪い。


第三部でもたまたまセスナに乗り合わせた赤ん坊、その正体は「デス13」のスタンド使い。ジョセフおじいちゃんの相手をするのは疲れるのによ〜と内心でボヤき、生後11ヶ月なのに喫煙をすぱーっとキメるワルの中のワルだ。

夢を支配できるデス13は「夢の中で殺された本体は現実に死亡する」ということで最強最悪の敵だったが、花京院の機転で逆転されてお仕置き。ベビーフードに自分が下から出したブツを入れられて、ある意味リタイアよりもキツイ仕返しをされていた。

もちろん無垢で罪のない赤ん坊もいる。子供にされたポルナレフの世話を見ていたお姉さんが、10数秒もスタンド攻撃を受けたせいで胎児まで戻り、今はまだ生きているが母体内ではないからじき死ぬことに……。赤ん坊が出てくるエピソードはいつも「どうやってアニメ化するんだ」とファンに心配される作品、それが『ジョジョの奇妙な冒険』!!

第13話は、こんな話


音石明を捕まえて、無事に弓と矢を回収した承太郎と仗助達。新たに生み出されたスタンド使いの心配はあったが、ひとまず平穏に戻った杜王町。しかし、仗助には大きな問題があった。生まれて初めて会った父・ジョセフとギクシャクして、打ち解けられないのだ。母を遠くから見るだけという条件付きで自宅に連れて行こうとしたが、耳は遠いわ、勝手に長距離バスに乗ろうとするわと振り回されっぱなし。そのとき、ジョセフは近くにスタンド使いがいると言い出すのだった。

第三部からの伏線を回収


さわやかに流れる杜王町RADIO。続いては「悩めるロンサム・ボーイ」さんからのお便り。付き合ってる彼女と全然連絡取れなくてブルーなんです……前回ラストの「手首だけ女子」のことだ!  いつも不吉なイベントと繋がってるラジオ番組である。
前回倒したスタンド使い、音石明による盗みの被害総額がざっと5億円という下りは、原作では康一くんのモノローグ。それを仲間との会話にアレンジして「留置所にいる音石に尋問しに行く承太郎」もビジュアル化された。

「承太郎が牢屋の外に立って音石と向き合う」という構図は、ちょうど第三部初めの「牢屋の中でやさぐれていた承太郎」に対応するかたちだ。あの頃の承太郎はスタンドで盗みもやらかしていて(まだ制御できてなかったのでノーカンだが)音石に対して「お前が言うな」じゃないか?とツッコむのも楽しい。牢屋が誰よりも似合うヒーロー・空条承太郎!

音石は懲役3年で刑務所送りという軽い判決に、割り切れなさそうな億泰の顔に味がある。兄貴を殺したが仇が殺人も問われず窃盗だけなんて……と複雑な面持ちから「このケーキ、すんげえうまいぜ!」とコロッと忘れてる無邪気さも含めて最高だ。

その前フリになってるジョセフの「日本のコーヒーはうまいのう」は、アニメ版の第三部で来日したときの「日本のコーヒーはマズい」を拾っている芸の細かさ。どちらもアニメオリジナルの台詞で、スタッフはいい仕事してますね。

ジョセフ・ジョースター、老いてますます健在


今回のメインテーマ、それはジョセフと仗助の親子の絆だ。
「遠くから見るだけっすからね。お袋にはよー。決して話しかけたりしないことっすよ」
『俺よ。あんたのこと「ジョースターさん」って呼ばしてもらうよ」

二人きりになったジョセフに対して、仗助は冷たい台詞を言い放つ。

でも、仗助が自分の命を顧みずに友を助ける熱いハートを持ってるのは、これまで付き合ってきた視聴者にはよく分かっている。「初めて会った人」であり「血のつながりある実の父」を前に距離感がグチャグチャ。しかも母を取り乱させたくないから……と肉親への思いやりが、逆に口ぶりを冷たくしているのだ。

雰囲気コチコチで「無理なもんは無理」だった人間関係に降ってわいたのは、新手のスタンド使い。

地面についた手形から「透明なスタンド使い」を察知した冴えは戦いの年季の違い、老いてますます健在……なのだが、息子の仗助には「幻覚や幻聴まであんのかよ」と誤解される悲しさ。しょうがない、さっき札幌行の長距離バスに乗り込む大ポカやらかしてましたし。

久しぶりのジョセフのスタンド・ハーミットパープルは、透明のスタンド使いが犬に噛まれる前にキャッチ。丸裸の赤ん坊がここにおるんじゃ! 生まれついての「物を透明にする」能力と見抜いたまではいいが、今触ってみたら女の子じゃったと。そうそう、男と女の見分け方は股の間に……とノリツッコミする仗助。やっぱり親子だな!

おむつや哺乳びんに詳しくなれるアニメ


「原稿返却します。単行本用の修正お願いしますね先生」

そうやって「来週出る人」から始まるBパート。一言も喋らなかったが、原稿の封筒に「集英社」と書いていただけで満足度は高いし、後々の「赤ん坊」と縁がある話の伏線にもなっているのも見逃せない。しかし「あの人」であれば、その場で原稿の直しを完了させそうな気もしますが。

赤ん坊は丸裸だし、おしめやミルクも用意しないといけない。赤ん坊グッズの店に行く親子だったが、一緒に店に入ることを拒否った仗助の言い分が妙にリアル。「噂になるぜ、16歳の不良が赤んぼ孕ませたとかなんとかよ〜」とか本当にありそうだよ!

そしてジョセフVSプロ店員の息詰まる頭脳バトル……にはならず、ボケかけたジョセフが一方的に押されまくる哀しさ。大人用オムツを買いに来たと勘違いされる元・少年マンガの主人公というね。

股オムツはおむつカバーが必要だけどパンツタイプより経済的、哺乳びんの吸口にはチュパトレニー(原作ではチュチュトレニー。実在の商品名)やドイツ製のヌークス(同じくヌーク)と、おむつや哺乳びんに詳しくなれる少年マンガ原作アニメ。全39話しかないんですよね、ここを忠実に再現してる余裕があるんでしょうか……。

命がけで深められた親子の絆


店員の言いなりで「ぜんぶ買い」したジョセフ。100円が0.8ドル(1ドル125円の円安!)だった当時としても13万円以上とスゴイことになってますが、こう見えてもニューヨークの不動産王なのでご安心を。

透明のままだと連れて歩けないからと赤ん坊にファンデーションを塗ってやり、仗助に褒められると口紅を塗って遊び始めるジョセフ。

「やると思ったぜ……褒められると図に乗るタイプだこのジジイは」

ええ、若い頃の修行時代からそういう人なんですよ。

知らない人に触られるストレスからパワーアップしてしまい、なんでもかんでも透明にしたあげく、水の中に転げ落ちてしまう赤ん坊。ポイ捨てタバコから守ろうとした拍子に、ベビーカーが走り出すきっかけを作ってしまったジョセフはあたふたするばかり。

(こいつがヨタヨタしてたからこうなったんだぜ…このおいぼれじじぃ〜! このイイカゲンな男がおれの父親だと〜 イイカゲンだからお袋を16年も放っておいて平気だった)

仗助の中でドン底まで落ちたジョセフ株は、次の瞬間に爆上げ。手首を切って水に浸かり、血で色を付けて「透明になっていく中心」を見つけた……!

見たこともない(透明だし)他人の子供のために命を捨てる覚悟、すぐさま妙案を思いつく頭のキレ、何より「カッコつけたかったんじゃよ、おまえの前で」という決めゼリフ。老いてますますカッコいいジョセフ!

さらにCM明けのCパートは、まるまるアニメオリジナル。服を脱いだ仗助の肩には、ジョースター家の証である星のアザ(原作では見せていない)。そして自分が貸したクレカで支払ったレシートに気づく。じゅ……13万円!?  俺の死ぬ気でためた貯金が…あのジジィ〜!!  やっぱりジョセフがカッコいいまま終わるわけがないのであった。
(多根清史)