ジェームズ・ボビン監督 © 2016 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved. 撮影・水田眞子

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前作『アリス・イン・ワンダーランド』から6年。

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その流れをしっかりと汲みながら、新しい風を吹き込んだ新作『アリス・イン・ワンダーランド/時間の旅』が2016年7月1日、ついに公開されました。

ティム・バートン監督の生みだした世界の、新たな作り手となった、ジェームズ・ボビン監督へのインタビューを交え、『アリス・イン・ワンダーランド/時間の旅』の見どころをお伝えします。

前作の詩的な世界を紐解く、新しく論理的な物語

作り込まれた映像美と、随所に盛り込まれた哲学的な問いが話題となった前作『アリス・イン・ワンダーランド』。

今作『アリス・イン・ワンダーランド/時間の旅』では、その後の世界を描いており、過去に囚われ、生命の危機に瀕したマッド・ハッターを、アリスが救う、というストーリーになっています。

また、前作で私たちの中に残った “不思議” や “疑問” を解いてくれる、非常に論理的な描き方が特徴です。

ジェームズ・ボビン監督は、

「小さな子供にも理解できるように作った」

と述べています。

これには、もともとTVプログラムの作り手だった、ジェームズ・ボビン監督のキャリアと考え方が、よく反映されています。

前作から続いて問いかけられる「Who are you? (お前は誰だ?)」という問いかけにも、「自分の在り方は、自分がいつも決める」という明確な答えが提示されます。

まだ何者でもないアリスより、幼い子供たちには、「これからの歩み方」を教えてくれ、もう何者かになった意識を持つ、アリス以上の大人には、「自分の意志を強く持つことへの勇気」を、改めて教えてくれます。

今作『アリス・イン・ワンダーランド/時間の旅』は、前作がよく分からなかったという人にこそ見て欲しい、新たな『アリス・イン・ワンダーランド』に仕上がっていると言えるでしょう。

変わらぬ色鮮やかなワンダーランドと、ヴィクトリア時代の女性

前作でも大きな要素となっていた、ワンダーランドの住人の、華やかで、独創的なコスチューム。

今作『アリス・イン・ワンダーランド/時間の旅』も、引き続き、コリーン・アトウッドが手がけており、魅力は健在です。

その自由でカラフルなワンダーランドの雰囲気とは裏腹に、今作『アリス・イン・ワンダーランド/時間の旅』では、ヴィクトリア時代を生きるアリスが、“女性” として社会に立ち向かう、シビアなシーンも盛り込まれています。

「女性の権利がなかったヴィクトリア時代に、自分のやりたいことを明確に持ち、現代的でモダンな考えを持っているアリスの人物像は、この映画だけではなく、ルイス・キャロルが書いた原作のアリスも同じなんだ。」

と、ジェームズ・ボビン監督。

自分と社会、そして古い考えを持った母との対峙は、今作『アリス・イン・ワンダーランド/時間の旅』の大きなテーマとなっています。

自分に嘘をつかない選択をすることで、自分らしさを勝ち取った前作のアリスは、それだけでは渡っていけない “社会” との戦いに、どのような形で決着をつけるのでしょうか?

ちりばめられたオマージュの数々に注目!

原作ルイス・キャロルの本に添えられた、ジョン・テニエルの挿絵に、大きな影響を受けたと語る、ジェームズ・ボビン監督。

テニエルの描いたオリジナルのアリスは、“テニエルアリス” と呼ばれ、現在も多くのファンがいるほか、1951年のディズニーアニメーション映画『ふしぎの国のアリス』にも多くの影響を与えています。

風刺画家であったテニエルが描いたアリスの世界は、想像上の世界でありながら、どこか現実的な劇画の要素を含んでいます。

ジェームズ・ボビン監督は、その劇画の要素に注目し、想像の世界にリアリティを盛り込むことで、よりキャラクターを生きいきと “存在” させています。

ジェームズ・ボビン監督が影響を受けた、絵画や、作品のオマージュは、今作『アリス・イン・ワンダーランド/時間の旅』のところどころに、ちりばめられています。

ディズニーの『ふしぎの国のアリス』からの影響はありますか? と聞いたところ、

「赤の女王が従えている、トランプの兵隊の動きに、アニメーションからの影響が感じられると思うよ」

とのこと。

赤の女王の従者は何者? 描かれなかった裏設定

また、赤の女王の従者として登場する、野菜で形作られた人々にも注目です。

ジュゼッペ・アルチンボルドへのオマージュでしょうか? と聞いたところ、思わぬ設定を聞くことができました。

「その通りで、アルチンボルドは自分の大好きな画家なんだ。あの野菜たちは、映画の中では描かれていないけれど、タイムが赤の女王のために、人材として育ててあげたものなんだ。」

※ジュゼッペ・アルチンボルドは16世紀のイタリア・ミラノ出身の画家。果物、野菜、動植物、本などを寄せ集めた、個性的な肖像画の製作で知られる

完璧な悪役? 新キャラクターのタイムに注目

今作『アリス・イン・ワンダーランド/時間の旅』は、アリスとマッドハッターたちだけの物語ではありません。

赤の女王と白の女王、そして赤の女王と、初登場となるヴィラン(悪役)タイムの、キャラクター同士の関係性が、多面的に描かれています。

ジェームズ・ボビン監督が「完璧なヴィラン」と表現するキャラクター、タイムですが、この優しさとも取れる一面を持つキャラクターが、なぜヴィランとして「完璧」なのか?

そこにジェームズ・ボビン監督の、ひいては『アリス・イン・ワンダーランド/時間の旅』の価値観が、凝縮されていると感じました。

こちらも要注目です。

鑑賞前に知っておくと楽しい画家たち

また『アリス・イン・ワンダーランド/時間の旅』には、赤の女王のお城の中に見られる、だまし絵で有名なマウリッツ・エッシャーのシュルレアリスムの要素や、キャスパー・デイビット・フレンドリッヒのロマンティックな風景表現など、様々な絵画作品からの影響が随所に盛り込まれています。

前作から引き継いだ世界に、こういった新たな創作のエッセンスが入る事で、アリスの世界らしい、ウンダーカンマー(驚異の部屋)のような、蠱惑的な魅力が加わったのではないでしょうか?

『アリス・イン・ワンダーランド/時間の旅』は、多面的な物語、しかし万人に理解しやすい語り口は、見る人の世代や、おかれた環境によって、さまざまな世界をみせてくれます。

鑑賞後は、一緒に見た人と “お茶会” をして、意見を交わしていただきたい、そんな作品です。

ぜひ、劇場に足を運んでみてはいかがでしょうか?

映画『アリス・イン・ワンダーランド/時間の旅』
2016年7月1日(金)全国ロードショー