相手の必死のスライディングを躱し、GKの逆をついて得点。浅野はまさにストライカーたる働きを披露した。写真:茂木あきら(サッカーダイジェスト写真部)

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 シュート3本、1得点・1アシスト。DFふたりを引きずる力強いドリブルや、最前線からの積極的なプレッシングも披露。6月29日に行なわれたU-23日本代表とU-23南アフリカ代表の試合で、浅野拓磨は十分なインパクトを残した……ように見えた。
 
 だが、プレミアリーグの強豪クラブであるアーセナルからオファーを受けている浅野は、「満足できるものではなかった」と南アフリカ戦の出来を一刀両断する。「ゴールという形で勝利に貢献でいたのは成果として挙げてもいいかなと思うけど、もっと得点を奪えたし、ボールを失うシーンもあった」
 
 それでも、後半開始早々の48分にトドメとなる4点目を突き刺したシーンを振り返って、「植田(直通)がボールを持って、僕は『パスが出てくる』と信じて走った」と、仲間との連係に一切の不安がないことを示唆している。
 
 まさに「落ち着いていた」パフォーマンスを象徴する場面だった。植田が最後方でフリーでボールを持っているのを確認すると、まず横に動いてスペースを作り、そこにパスを呼び込むウェーブの動きで抜け出す。
 
 相手DFは、浅野の動きに釣られてサイドのスペースを警戒して身体を外に向けているが、真ん中をフィードを蹴られたために急な方向転換を強いられてミス。この点は確かに、パスの受け手と出し手の意思疎通が完璧だったと言っていいだろう。
 
 ただ、6番のモティバ・ムバロが必死に足を伸ばして植田からのフィードになんとかタッチしたため、ボールが減速。それを迎えに行った浅野のファーストタッチは、全力で戻ってきた2番のリバルド・コッツィーエ方向へと転がってしまった。
 
 まだ浅野はシュート態勢になってないにもかかわらず、コッツィーエがいとも簡単にスライディングでのブロックを試みたため事なきを得たが、DFに自ら寄って行ってしまったトラップミスは減点材料か。
 
 もちろん、滑ったDFを何事もなかったかのようにヒラリとかわして、GKの動きとは逆にシュートを打った技術には「さすが」と言うほかなく、「味方が見えていたが、自分で打つことを選択した」という言葉からは、真のストライカー然とした、ある種の風格さえ感じた。
 中島翔哉の2得点目、チーム3得点目を生んだ45+1分のアシストのシーンでも、浅野は決して慌てなかった。
 
「相手DFの後ろに隠れながらプレスに行ったので、パスの出し手から自分は見えていなかったと思う。そのままシュートまでいきたかったんですけど、ひとつ目ふたつ目のタッチが良くなかったので。
 
 (中島)翔哉だけでなく、後ろから(矢島)慎也くんが走り込んできているのも見えていて、選択肢がふたつあるなかで(中島へのクロスを選択して)しっかり合わせられたのは良かったし、決めてくれた翔哉に感謝したい」
 
 ドリブルを仕掛けるスペースも時間もあったなかで、ルックアップして状況を把握。リオ五輪のメンバー発表会見前最後の試合であることを考えれば、自分でシュートに持ち込みたくなってもおかしくない場面だが、勝利のための最善の判断をできている証拠だ。
 
「今日がアピールできる最後の試合でしたけど、今までも危機感を持って取り組めていたので、あとは手倉森監督に委ねるだけ。メンバーに入りたいと思っているし、オリンピックでプレーするイメージも自分のなかでは持っている。
 
 誰が選ばれたとしても、日本としてひとつのチームで戦うのは変わらないし、監督も何度か言っていましたが、『託される選手』と『託す選手』に分かれるだけ。発表まではドキドキがあるけど、どういう結果になっても悔いはない」
 
 54分には、ややスライド気味なダイアゴナルランでペナルティエリアに侵入すると、亀川のクロスに反応してドフリーでシュートを放ったが、惜しくも枠を外した。しかし、この決定機逸があろうと、浅野当確の情勢は覆らないだろう。
 
 選出された暁には、オーバーエイジの興梠慎三(浦和)、そして海外組の久保裕也(BSCヤングボーイズ)の壁を乗り越えなければならない。たとえ“ジョーカー”という立ち位置でも、身体と気持ちの臨戦態勢は崩さない。
 
 それは、クラブや今までのU-23日本代表で役割を受け入れてきたからではない。「置かれた環境で、目の前のことに対して100パーセントで頑張ることを常々考えている」のが、浅野という選手だからだ。
 
 サッカーへの飽くなき情熱と、ピッチ上で見せる冷静さ。そして、目に見える結果を残した試合後でも「満足できるものではなかった」と言い切る向上心の強さが、自身も代表チームも、さらなる高みへと導いて行く。
 
取材・文:古田土恵介(サッカーダイジェスト編集部)