リオ五輪の開幕まで、およそ1ヶ月――。国内最後となるテストマッチで、日本は本大会に出場する南アフリカに4−1で完勝した。

 もっとも、長距離移動のためにコンディションが整っていない南アフリカをホームで迎え撃ったわけだから、勝つのはある意味当然のこと。チームを率いる手倉森誠監督にとってより重要なのは、7月1日のメンバー発表に向けて、負傷者の回復具合を確認すること、当落線上にいる選手たちを見極めることだったはずだ。

 負傷者の回復という点において指揮官を喜ばせたのは、中島翔哉と室屋成の復活と、そのパフォーマンスだろう。

 右ひざ内側側副じん帯損傷から復帰した中島は、2トップの一角として先発。矢島慎也とのコンビネーションで左サイドから切り崩しただけでなく、ゴール前の危険なポジションに飛び出して2ゴールをマーク。後半はサイドハーフも務め、90分フル出場を果たした。

 背番号を10から13に"格下げ"して奮起を促した指揮官も、この活躍には「本当に普段、試合に出てない選手なんだろうか。切れ味もあるし、好調だった」と目を細めた。

 左足ジョーンズ骨折から復帰した室屋は右サイドバックとして先発し、45分には右サイドを突破して矢島のゴールをアシスト。67分からは「久しぶりだった」という左サイドバックでもプレーし、ユーティリティ性もアピールした。

 試合後、指揮官の「彼らが連戦に耐えられるくらいのコンディションまで、向上させて維持できるかというところについては、こっちが計算してあげないといけないだろうなと思っている」という言葉を聞くと、中島と室屋が選出される可能性は高そうだ。

 一方、本大会のメンバー選考に関しては、「ここにきて、悩んだ状況で記者会見するとは思っていなかった」と指揮官は、頭を悩ませていることを明かした。

 本大会にエントリーされるのは、最終予選の23人より5人も少ない18人。これまでの選手起用や、南アフリカ戦のパフォーマンスを踏まえれば、18人中15〜16人はすでに「当確」のように思われる。指揮官の頭を悩ませているのは、おそらく残り2人か3人ではないか。

 GKは、今回の南アフリカ戦に選ばれた櫛引政敏と中村航輔で間違いないだろう。櫛引は鹿島アントラーズで試合に出られていないが、最終予選で正GKを務めたように、代表チームにおける実績は申し分ない。一方、中村は負傷のために最終予選を欠場したが、昨季はアビスパ福岡で、今季は柏レイソルでレギュラーとしてピッチに立っているため、実戦経験では櫛引をしのぐ。

 センターバックはオーバーエイジの塩谷司と、南アフリカ戦では51分からキャプテンマークを巻いた常連メンバーの植田直通。そして、5月末に負った左ひざ内側側副じん帯損傷からの復帰に励む岩波拓也の3人。ただし、バックアップメンバーとの入れ替えが可能なため、岩波を本メンバーとして、南アフリカ戦でフル出場した中谷進之介をバックアップメンバーとして選出し、岩波の回復が間に合わなければ、中谷と入れ替えるというプランもあるかもしれない。

 サイドバックは左のスペシャリストであるオーバーエイジの藤春廣輝、今回の南アフリカ戦で復活を強く印象づけた室屋、両サイドバックをこなせる亀川諒史の選出を予想する。

 続いてボランチだが、おそらく指揮官が頭を悩ませているひとつが、このポジションではないだろうか。ともにA代表に選出されている遠藤航と大島僚太の選出はかたいとして、3人目を誰にするか。守備力を考えれば、南アフリカ戦で先発した井手口陽介の存在が心強い。一方、大島が不在の際に攻撃の組み立て役を託すことを考えれば、最終予選のイラク戦での決勝ゴールが印象強い原川力になる。

 ただし、攻撃の組み立て役という点では、矢島もこなすことができる。そこで浮上するのが、橋本拳人だ。鋭いアプローチからのボール奪取は井手口にも劣らず、サイドバック、センターバック、サイドハーフでもプレーできるユーティリティ性も魅力。さらに身長181cmと、チームに高さをもたらせるのも大きい。果たして、指揮官はどんな答えを出すのか。

 攻撃的MFは、南アフリカ戦でも活躍した矢島と中島、ザルツブルクでプレーする南野拓実の選出は揺るぎないだろう。FWはオーバーエイジの興梠慎三、最終予選で3ゴールを奪ったこのチームのエースの久保裕也、アーセナルへの移籍が取りざたせれている浅野拓磨の3人。とりわけ浅野のスピードは、世界の列強と戦ううえで大きな武器となる。スタメンで起用して序盤から相手を撹乱するのもいいし、試合の流れをたぐり寄せるため、スーパーサブとして途中から起用するのもいい。

 こうして見ると、ボランチの3人目を除いて残る枠はひとつ。ここに"エクストラ"の能力を持つ攻撃のカードが選ばれるのではないか。その候補者は3人だ。強烈な"左足"が武器で、プレースキッカーとしても期待できる野津田岳人。浅野に負けずとも劣らないスピードを備え、スーパーサブとして期待できる伊東純也。最終予選でもスーパーサブとして活躍し、ゴール前に飛び出してゴールを陥れる豊川雄太の3人だ。

 いずれも南アフリカ戦に出場し、持ち味の一端は見せたものの、結果を残すことはできなかった。3人とも試合後には、悔しさを滲ませている。

「少し不完全燃焼というか、悔しさは残る形だったので、最初の入りから少し力が入り過ぎたというのはあったのかなと思います」(野津田)

「サイドに流れて起点を作ってクロス上げて、チャンスは作れたんですけど、シュートを打つ場面はあまりなくて結果を出せなかったので、ちょっと悔しいです」(伊東)

「国内合宿はケガで全部辞退してきて今回やっと出られたので、何かしらアピールして結果を残したかったですけど、それが残せなかったのは悔しいです」(豊川)

 この3人の"スペシャルな能力"については、手倉森監督も十分理解しているはずだ。グループリーグで対戦するナイジェリア、スウェーデン、コロンビアとのゲームプランを想定したうえで、指揮官はどの切り札を選ぶのか――。

 18名の五輪戦士は、いよいよ7月1日に発表される。

飯尾篤史●取材・文 text by Iio Atsushi