専門誌では読めない雑学コラム
木村和久の「お気楽ゴルフ」連載●第61回

 とあるコンペでの出来事です。直接、私は関わっていません。あくまでも人から聞いた"事件"を、まずは紹介させていただきます。

 知り合いが、同伴プレーヤーのボールを探しに林の中へと入っていったときのこと。みんなで探したけど、なかなかボールは見つからず、「これはロストボールですね」とボール探しを諦めかけたとき、突如林にボールを打ち込んだ当事者が「ボール、ありました!」と叫んで、涼しげな顔をしてそのボールを打ったそうです。

 そこは、散々探した場所。「突然ボールが現れるわけがない」と知り合いは言います。

 おそらく"卵を産み落とした"のでしょう。つまり、ポケットから他のボールを出して、何食わぬ顔をしてプレーを再開した、というわけです。知り合いもすぐにそう思ったそうです。

 さあ、こんな場面に出くわしたら、あなたならどうしますか?

 JGA(日本ゴルフ協会)に告発文を出しますか?って、それは大げさですね。手紙をもらったJGAも困惑するでしょうし。

 決定的な現場を見ていないので、100%別のボールを落としたとは言い切れません。でも、状況証拠的には、限りなくクロに近いグレーです。

 正義感の強いその知り合いは、まず幹事のところに行って、こういうことがあったと報告。そして、「うまく対処してください」とお願いしたそうです。

 しかし幹事は、「現場を押さえているわけじゃないから、どうしようもないよ。あまり揉(も)めたくないから、スルーでいいんじゃない」と、うやむやにしてしまったとのこと。

 まあ、知り合いの正義感野郎は、当然納得していませんでしたが、状況証拠で犯人扱いしてもね、なんだかなって思いますよね。

 で、私の判断ですが、考え方としてはその幹事さんと同じです。「揉めたくない」というのが、一般的な考えではないでしょうか。我々は、全英オープンに出場しているわけではないので、コンペでの不正を正すよりも、人間関係にひびが入るほうが嫌ですからね。

 じゃあ、偶然決定的な証拠、すなわちポケットからボールを落としたところを見てしまったら......、そのときはどうするか?

 見てしまったほうもバツが悪いので、私だったらニヤッと笑って、「じゃあ、昼メシでもおごってもらおうか」と言います。相手からしてみれば、不正の現場を見逃してもらえるなら、昼メシなんて安いものでしょう。そして、「これでもう優勝はないから、あとで適当に叩いてね」と言えば、相手もしぶしぶ従わざるを得ないでしょう。

 私もこれまで、何度もマナー違反や不正を見てきましたけど、その人と二度とラウンドをしない、というわけではないので、余計なトラブルは避けたいです。

 先日、ショートコースで3度打ちする人には意見しましたが(※6月2日配信「ショートコースで『3度打ち』ってどうなの?」参照)、それは無関係な人だからです。でも、まがりなりにもコンペの同伴プレーヤーなら、他にも共通の知り合いがいるわけで、そちらの人間関係を重視したいです。

 不正で一番多いのは、ボールを打ちやすい場所に移すことです。ディボットや深いラフとか、打ちづらいときにこっそりボールを動かす。もちろん、「スルーザグリーンは6インチリプレース」というルールを適用しているならば、ボールは動かせます。しかし、そんな取り決めもないのに、動かしてしまう人がいます。

 特に、そこそこ上手い人がやりがちです。ラウンド前、「今日は調子が悪いので、ボールは6インチ動かしますので、よろしく」と言えば済む話じゃないですか。そのひと言が言えないんですな......。

 細かい話をすれば、赤杭の外から打つときはクラブフェースをソールしてはいけないのに地面を触っているとか、"2度打ち"したのに申告しないとか、そんな不正はちょくちょく見ます。それらはやっているほうも気づかないんでしょうが、そこら辺は相手の"ゴルフ修練度"が低いと思って、スルーします。

 逆に、パターを打つときにボールに触れてしまった際、みんなが見ていることもあって、「今、ボールにパターが触れてしまいました」という正直者がいます。ただこれは、故意でなければ、ルール的にセーフです。パターを打つとき、ボールに触れても、ボールが動かない限り、何ら問題はないのです。

 もはや都市伝説となっている、こんな話もあります。

 某大先生がゴルフをしていて、林の中にボールを探しに行くときは、一緒に探してはいけない、という暗黙のルールがあるとか。それは、大先生が好きなようにボール探しができないから......というか、小細工しづらいからであって、同伴者はなんとなく遠巻きに探すふりをするんだそうです。

 ゴルフが"紳士のスポーツ"から、単なる"庶民のレジャー"になって久しいです。そんな状況にあって、厳密なゴルフをしても始まらないでしょ。人間関係が何よりです。

 他に正す不正はいっぱいあると思うんですよ。政治家の政治資金の使い方とかね。

木村和久(きむら・かずひさ)
1959年6月19日生まれ。宮城県出身。株式をはじめ、恋愛や遊びなど、トレンドを読み解くコラムニストとして活躍。ゴルフ歴も長く、『週刊パーゴルフ』『月刊ゴルフダイジェスト』などの専門誌で連載を持つ。

木村和久●文 text by Kimura Kazuhisa