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●番組同士の掛け合いにテレビの醍醐味
テレビ局が一斉に衣替えを行う春の番組改編。今回も各局、課題の時間帯に新番組を投入したり、リニューアルを図ったりと、録画視聴が増える中でリアルタイム視聴を取り込むためのタイムテーブルを作成した。この戦略を考えるのが、"テレビ局の中枢"とも言われる「編成部」。今回は、民放キー局の「編成部長」に、春改編を総括してもらい、今後の展望についても語ってもらった。

最後に登場するのは、かつての王者・フジテレビ。視聴率の苦戦が伝えられるが、視線の先にあるのは、目の前の数字だけでなく、テレビ全体の将来に向けた"未来への投資"だった――。

(視聴率の数字は、ビデオリサーチ調べ・関東地区)

――春改編の目玉は、前身から30年以上続いた『ごきげんよう』、50年以上続いた『昼ドラ』を終了させての "平日15時間生放送化"だったと思います。これを断行しての手応えはいかがですか?

その時に起こった出来事をなるべく柔軟な形、最善のスピード感で視聴者の皆さんにお届けできる体制としては、本当にいい形でインフラが整ったと考えています。熊本地震や、オバマ大統領の広島訪問など、不幸なニュースや良いニュースも含めて、われわれが皆さんに伝えたいトピックや情報が、できる限り早く届けることが、本当にやりやすくなったと実感しています。

――視聴率の面ではいかがですか?

今回の改編で、『バイキング』と『直撃LIVE グッディ!』がそれぞれ時間を拡大してつながりましたが、両番組とも少しずつ上がってきているんですね。関東だけではなく、系列局のエリアでも、数字が分かりやすく上がってきているので、そういう意味では少し手応えを感じています。

――『バイキング』と『グッディ!』が切り替わるタイミングで、坂上忍さんと安藤優子さんの掛け合いが始まりました。どこから番組が切り替わったのか分からないような演出が面白いですよね。

なかなか画期的だと思うんですが、そういった今までのテレビのルールに縛られない柔軟性や有機性が、視聴者の皆さんにとってちょっとドキドキしたりとか、何これ!?と思っていただけたりするというのも、1つのプラス要因かなと思っています。『バイキング』というバラエティに近い番組と、『グッディ!』という報道寄りの番組が、同じテーマを共有してそれぞれの見解を述べたりするということも、面白いコラボだなと思いますね。

――フジテレビさんでは、かつてニュース番組『スーパータイム』の逸見政孝キャスターが、バラエティの『夕やけニャンニャン』で掛け合いをしていたこともありましたよね。その連動感が復活したような印象です。

そういったところがテレビの強みだと思います。僕たち制作者と演者さんが同じ目的を持って、面白がってアドリブを出したり、空気感を表現したりするのは、テレビの醍醐味の1つですよね。

――プライム帯のバラエティも新番組を4本投入されました。早速、『超ハマる!爆笑キャラパレード』でアルコ&ピースの平子さん演じる「意識高い系IT社長・瀬良明正」が話題になっています(笑)

彼のキャラクターは…なんていうんですかね(笑)。開始早々からネット上での反応が大きくて、特別支持を集めるというのは、面白い現象だなと思っています。

――キャラクターが番組を超えて一人歩きしている印象です。

僕たち制作者側の手を離れて視聴者のみなさんに届いて、それがネット上の口コミだったりとか、それ以外の皆さんの生活の中での会話だったりで一人歩きして、初めて番組が完成すると思うんです。そういう意味では、早速そういう反応が出たことはすごくうれしいと思っていますが、いわゆる世帯視聴率では苦戦している状況なので、もっともっと話題づくりを工夫しなければいけないなと思ってますね。

――改編発表の際に、今の時代にあえて土曜19時にネタ番組を投入することについて「フジテレビがやらなければ」と強い決意で話していられましたよね。

今、若い世代の視聴者の方がテレビから離れ気味と言われていますけど、若い人たちも年月がたてば、中年層・高齢層になっていきますから、未来を考えた時に、どうしても今やらなければいけないチャレンジがあります。刹那的に今の世帯視聴率だけをとるというのは、たぶんテクニック的にはできなくはないのですが、未来への投資を考えなければいけないと思うんです。そういう意味で、『キャラパレード』というのは、今のテレビを取り巻く環境の中でチャレンジと映っていると思うのですが、僕らはそれを自覚してあえてやっているんです。

――水曜22時の『モシモノふたり』も若い層を意識した番組ですよね。

はい。新感覚のものを提案することで、F1(女性20〜34歳)・F2(女性35歳〜49歳)・ティーンはもちろん、若い男性の視聴者の皆さんの反応も見てみたいというところですね。火曜19時の『そこホメ!?』、金曜19時の『金曜日の聞きたい女たち』もそういう考え方でやってますが、苦戦していることは確かです。でもここで僕たちが迷ったりブレたりして、小手先の世帯視聴率をとりにいくと、本当に未来が分からなくなってしまうんです。今やっているトライを、苦戦しながらも、確固たる決意を持って実行中というところですね。

●とんねるず・めちゃイケ・スマスマは「僕らの誇り」
――次の月9ドラマ『好きな人がいること』も、昨年7月クールで若者の強い支持を受けた『恋仲』チームの制作陣で、まさに若い人を狙っていますよね。世帯視聴率は9〜10%台でしたが、今回そのチームでもう一度チャレンジするというのは、まさにその決意の表れということでしょうか。

僕は世代別のマーケティングというのはあまり好きではなくて、年配でも気持ちが若い人っているじゃないですか。僕なんか47歳ですけど、精神年齢はだいぶ若いと思っていて(笑)、何歳だからということではなく、若い人には刺さりたいんだけど、年配の方にもちゃんと響いてくださる方がいると信じて、こういうコンテンツはやっていきたいと思っています。

――そのドラマですが、4月クールは正直苦戦という結果だったと思います。

月9・木10・日9それぞれの枠(※)で思いを持ってやっているんですけど、今は視聴者の皆さんに、テレビの前に座って見てもらうには、ものすごく刺激的だったり、飛び道具があったり、何だこれ!?という違和感だったり、作品性というより企画性が高いもの、つまり見る前の話題性がすごく大事になってきていると思っています。フジテレビのドラマは、決して他局に比べてクオリティが劣っているとは思わないのですが、最初に見てもらうための入口を、もっともっと僕ら編成がうまく打ち出す必要があるのかなと思っています。

(※)火10は関西テレビ制作、「オトナの土ドラ」は東海テレビ制作
――そこを踏まえて、7月クールのドラマへの期待はいかがですか?

今、テレビよりもネットの方が生活者の皆さんに近いという危機感を持っています。そこでテレビがあらためて視聴者の皆さんと距離を縮めるには、どれくらいリアリティがあって、共感してもらえるかということがポイントになると思うんです。

そういう意味では、月9の等身大の若者たちの恋愛模様。木10『営業部長 吉良奈津子』で松嶋菜々子さんが演じる子育てと仕事の両立という世の中の女性たちが多く体験するようなストーリー。日9『HOPE〜期待ゼロの新入社員〜』も、Hey! Say! JUMPの中島裕翔さん演じる自信のない青年が、ひたむきに仕事に向き合いながら会社の中で自分のポジションを作っていくという作品で、今の若い人たちが自分を投影してもらえる部分がたくさんあると思うんです。その共感という部分はすごく意識して作品を並べているつもりですし、期待したいと思いますね。

――フジテレビさんの改編といえば、毎回長寿番組の『とんねるずのみなさんのおかげでした』『めちゃ×2イケてるッ!』の存続云々が騒がれますが…。

ことあるごとに面白くネット上を騒がせたりしていますが、誰も言っていないことが勝手にニュースに踊るのが不思議ですけどね(笑)。まことしやかに終了することになっていたことは、大変心外です。もちろん以前に比べて視聴率はとりづらいし、苦労している部分はたくさんありますけど、フジテレビの新卒採用の面接官をやっていると、やっぱり『とんねるず』『めちゃイケ』って圧倒的な人気なんですよ。逆に言うと、そういう番組が今すごく少ないんですよね。

――"そういう番組"とは?

今の時代、生活に役立つとか、情報性があるようなバラエティが全盛だと思うのですが、いわゆる王道のエンタテインメントというものに関しては、僕らが灯を絶やすわけにはいかないんです。世帯視聴率のことだけを考えると、やっぱり灯が絶やされがちなんですよ。でも、僕らフジテレビが辛抱して、新しい笑い・新しいバラエティの王道を続けていけば、まためぐりめぐってお客さんも戻ってくると信じています。そのためには、ずっと同じことをやっていてはいけないと思うので、その辺の努力が足りないとか、最近つまらなくなったという意見があれば、ものすごく真摯に受け止めたいと思います。

――昨今隔週2本撮りのバラエティがほとんどの中で、『とんねるず』も『めちゃイケ』も、それから『SMAP×SMAP』も、収録日を週2回もとっていますよね。

テレビの世界も、コンビニエンスに撮って出していくということが、時代とともに主流になってきている中で、視聴者の目に触れない部分で時間とカロリーをかけて汗をかいている部分は、これみよがしに見せるものではないですが、やっぱりそれだけのことをやって、笑いやエンタテインメントを作っているということは、僕らの誇りではありますよね。

昔、お正月にやっていた『新春かくし芸大会』は、タレントさんと制作者が何カ月も日々汗をかいていたんです。そうやって、コンテンツに手間をかける番組って、年々なくなってきているのですが、やっぱり必要だと思うんですよね。そうしないと制作者も育たないし、業界の未来にもつながっていかないと思うので、すごい重要なポイントだと思います。

もちろん、他局でも汗をかいているなというのは、画面から伝わってくるので、そこはリスペクトします。そうじゃない番組が数字をとってると「くそっ!」って思いますけど(笑)。僕らの番組でそれが伝わっていないとすれば、努力が足りないと思うので、そこは反省すべきポイントだと思いますね。

――他局で言うと、日本テレビさんの好調な『ザ!鉄腕!DASH!!』や『世界の果てまでイッテQ!』は、汗をかいているように見えますよね。

汗かいてると思いますね。純粋にそこはリスペクトしますし、負けてられないなという思いもありますので、僕らは僕らのやり方で違う汗のかき方をして、いつか日曜日の強い牙城を崩したいなと思います。

――今年ももうすぐ『FNS27時間テレビ』(7月24日18:30〜25日21:24)の季節ですが、以前亀山千広社長が会見で「もう一度しっかり考えるところに来ている」と"見直し"発言をされました。それを踏まえて、やはり今年も放送するという意図は?

"見直し"というのは、やる・やらないという話ではなくて、『27時間テレビ』という考え方・コンセプト・姿勢を考え直すタイミングに来ているということです。今年の27時間テレビは、その趣旨をしっかりと打ち出していきたいと思っています。

――夏といえば、こちらも恒例になりました大型音楽特番の『FNSうたの夏まつり』(7月18日11:45〜23:24)も、今年は11時間に大幅にスケールアップしての放送ですね。

夏ですし海の日ですし、視聴者の皆さんに休日を目いっぱい楽しんでいただきたくて大スケールアップしました。これでもか!という超豪華なキャスト、規模感、さまざまな趣向を凝らした演出でお届けするので、ぜひご期待いただきたいと思います。

――あらためて今後の秋改編も見据え、意気込みをお願いします。

偉そうな意味ではなくて、本当にこのまま刹那的な視聴率だけをとりにいくと、テレビの未来は描けないと思っています。ネットの人たちもテレビの話題をしていることが多いので、テレビに関心がないわけでは決してない。だから、僕らはリアルタイムで見たい!と思ってもらえるための番組開発やサービス、工夫を今まで以上に実行しなければならないと思っています。テレビがつまらないと言われればそれは期待の裏返しだと捉え、その期待に応えられるタイムテーブルを作っていきたいと思います。

(中島優)