深掘りコラム : 日焼け止めの効果の「ホントのところ」がそろそろ明らかに!

美容や健康を少しでも意識している人なら、日中のUVケア、つまり日焼け止めの使用は常識になっていると思います。肌を焼きたいとか焼きたくないという、好みの問題ではなく、肌のダメージを防ぐために。炎症、乾燥、シミ、そしてシワ、たるみというトラブルや肌老化の原因となるし、シミがやがて皮膚がんに進行する例もあります。医療的な視点でもUVケアは重要なのです。


そこで毎年のように話題になるのが「どのくらいの数値の日焼け止めを使うべきか」ということ。化粧品メーカーによっては「日常、スポーツ、リゾート」などのシーン別に簡単な目安をつくっているところもあるけれど、場所によって紫外線の強さは違うし、個々の肌質も違うのだから、あまり参考にはならないと感じています。長年この仕事をしていて「目安に従って使ったけど、焼けた・赤くなった!」という経験を何度もしているし……。



「SPF数値」の現実離れした試験法

日焼け止めに表示されている「SPF」とは、表皮深部まで届く紫外線B波を防ぐ指数。炎症やシミを防ぎたい人は見逃してはいけない表示です。ここに、15とか30、50という数値がついていますよね。「SPF1」とは「肌に何もつけずに紫外線(日光)を浴びて、赤くなるまでの時間」。日本人の場合は標準で15分といわれていますが、個人差があるので安心してはいけません。5分くらいで赤くなる人は私も含めたくさんいますし、早く赤くなる肌なら高い数値を選ばないと紫外線ダメージは防げないのです。


この「SPF」の数値は「国際SPF試験法」で定められた方法で決められています。日焼け止めのパッケージに記載しているメーカーもあるので知っている人もいるかと思いますが、「皮膚1㎠に日焼け止めを2mg塗布」して測定する。これを顔全体に換算すると0.8〜1gで、乳液状のものを手の平に出すなら、500円玉くらいの量になります。この量は、顔全体に塗る適量の倍ぐらいとイメージしていいでしょう。SPF試験法でこう決められたのは技術的な背景もあると聞きますが、ともかく“現実離れした量”で測定されているのです。このことを知らないで普通の人が普通に使っていたとしたら……表示通りのSPF表示の効果は得られるはずなどありません。多くのメーカーもこのことはもちろん知っています。


さらにいうと、日常使い用のSPF50の日焼け止めが増えているのは「つけやすい量でもUVケア効果が得られるように」という背景もあるといいます。特に、日本の日焼け止めは“薄くのびるジェルタイプ”が人気だったりするから、高SPF値でないと効果は薄いのです。SPF値については、こういう背景を知らないと効果があるものを選びにくいのが現状ですが、「現実的な使用量での効果を示そう」という動きが始まっています。



「光老化」啓発のため、立ち上がった医師たち

2015年7月にNPO法人皮膚の健康研究機構が「光老化」啓発プロジェクト委員会を発足させました。メンバーは東京女子医科大学皮膚科の川島眞教授をはじめとする5名の皮膚科医。太陽光線が皮膚の老化のみならず、皮膚がんや眼の白内障などを引き起こすことを一般に広く啓発し、「日焼け止め」を日常的に適正に使うことで「光老化」の予防が可能なことを伝えていくといいます。この、皮膚の健康のための活動は、皮膚科医と化粧品業界、製薬などの企業と共同でおこなわれていて、メディアセミナーも何度か開催されています。


セミナーの席上で出席者から「普通に使われている量だと、SPF値はどのくらいか?」と質問があり、「半分程度ではないか?(30なら15程度)」という非公式の回答が化粧品メーカーの研究者からあったけれど、委員会は「今後は明確な数値を出していきたい」と話していました。SPFの“現実的な効果”が表示され、近い将来には日焼け止めが選びやすくなるはずですが、それまでは「厚塗り・重ね塗りをしないなら、高めのSPF」を選んで“光老化”を防ぐことをおすすめします。




この記事を書いた人
海野由利子/美容・医療ジャーナリスト

宮城県出身。出版社でファッションと美容の編集を担当した後、1989年に独立。女性の美と健康をテーマに、美容医療、アンチエイジング医療、東洋医学などの分野にも取材範囲を広げている。製品開発やマーケティングのアドバイス、講演などもおこなっている。日本抗加齢医学会会員