右サイドで好パフォーマンスを見せた室屋。後半には左SBへとポジションを変えて、怪我から復帰4戦目で90分間を戦い切った。写真:茂木あきら(サッカーダイジェスト写真部)

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 1-1の同点で迎えた45分、左サイドの中島翔哉から右サイドの矢島慎也へとボールがピッチを横断した。その脇を、右SBに入った室屋成が積極果敢な駆け上がりで追い越して行く。パスを受けると、単純にクロスを上げることはしなかった。
 
 必死に戻ってゴール前を固めるU-23南アフリカ代表の選手たちを嘲笑うかのように、マイナスに待ち構えていた矢島へのリターンパスを選択。前半終了間際に「相手ペースの流れを変えられた」逆転弾をアシストしてみせた。
 
 室屋は今年1月に行なわれたリオ五輪のアジア最終予選で5試合に先発フル出場。本大会の出場権獲得に大きく貢献した。そのまま勢いに乗るかと思われたが、2月11日の練習中に事態は暗転する。左足ジョーンズ骨折で全治3か月の診断。戦線離脱を余儀なくされた。
 
 必死にリハビリを続けて、6月12日に行なわれたJ3・藤枝戦でFC東京U-23の一員として実戦に復帰。代表ユニホームに袖を通して松本の地で戦ったゲームは、それから数えてわずか4試合目だった。しかも90分間プレーするのは初で、「終盤はちょっときつかった」。
 
 そんななかで、しっかりと結果を残すところは、さすがのひと言。U-23日本代表にとって、室屋のコンディションが上がってきたのは喜ばしいことに違いない。
 
 自身も多少なりとも手応えを感じているのだろう。「最後まで行くとは言われてなかったですけど、代表で90分間プレーできたのは自信になる。(負傷箇所は)痛みはまったくないので、問題ない」と力強く語っている。
 
 また、67分には亀川諒史に代わって松原健が投入されて、右SBから左SBへとポジションを変更。「ハーフタイムにテグさん(手倉森誠監督)から、『左をできるか』って言われたので、笑いながら『できます』って。でも、なにもしてないんで、ユーティリティ性を示せたかは分かりません」と苦笑したが、「(いつ以来かは)覚えてないくらい久しぶりだった」位置で落ち着いたパフォーマンスを披露した。
 
 もちろん、「まだまだゲーム体力や勘の部分は戻り切っていない」のは確かだ。守備時における寄せが甘いシーンも散見され、攻撃でも細かなミスがあった。「全体としたらあんまり良くなかった。アシストをしたので、それでチャラかなと思う」と反省の弁を述べたのもうなずける。

 ただ、ゲーム体力や勘は試合数をこなすことで徐々に取り戻せる。その点を考慮すれば……。「できることはやった。あとは待つだけ」。ラストスパートで遅れを挽回した男がリオ五輪本大会メンバーに入れるかどうか。すべては7月1日に決定する。
 
取材・文:古田土恵介(サッカーダイジェスト編集部)