仕事に打ち込むのもいいけど……

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「KAROSHI(過労死)」「SYACHIKU(社畜)」が英語になるほど働きすぎが問題になっているニッポン。仕事依存症(ワーカホリック)になっている人も少なくない。ワーカホリックの人は、そうでない人に比べ、注意欠陥多動性障害(ADHD)や不安障害など、様々な精神障害を抱えている人が非常に多いという研究がまとまった。

専門家は「たとえ企業家として成功した人でも、精神面で問題がないとはいえない」と警告している。

ワーカホリックの半数近くは精神障害を抱えている

この研究をまとめたのは、ノルウェー・ベルゲン大学のセシリー・アンドレッセン博士らのチーム。米医学誌「プロス・ワン」(電子版)の2016年5月24日号に発表した。

研究チームは、ノルウェーの企業で働く男女社員1万6426人(男性5939人・女性10487人・平均年齢37歳)の詳細な精神面の健康データを対象に、「働きすぎ」が精神に与える影響を調べた。ノルウェーでは、企業の従業員に対する精神衛生面でのケアが厳しく義務付けられており、検診時のカウンセリングなどのデータが登録されている。

対象者全員にアンケート調査表を送り、「ワーカホリック」であるかどうかを次の7つの項目にあてはまるかで判断した。各項目について「1」(一度もない)から「5」(常にある)の5段階で評価してもらい、4つ以上の項目で「4」(頻繁にある)または「5」に該当すると、「ワーカホリック」と判断した。

(1)仕事にあてる時間をどう捻出するか考えてしまう。

(2)最初の予定より多くの時間を仕事に費やしてしまう。

(3)罪悪感、不安、無力感、憂鬱(うつ)の感情を軽くするために働いている。

(4)仕事の時間を減らすよう周囲から言われるが、聞き入れない。

(5)仕事をすることはやめさせられるとストレスを感じる。

(6)趣味・レジャー・スポーツより仕事を優先させる。

(7)仕事量が多すぎるために体の調子がよくない。

その結果、全体の7.8%(約1300人)がワーカホリックと判断された。そして、ワーカホリックの人と、そうでない人が、次の4つの精神障害の兆候をどの程度抱えているかを、アンケート調査や健康データをもとに分析した。

(1)注意欠陥多動性障害(ADHD):集中力に欠け、落ち着きがなく、衝動的に行動してしまう。

(2)強迫性障害:自分の意に反し不合理な行為を繰り返してしまう。

(3)不安障害:理由もなく不安や恐怖に襲われ、夜眠れないことが多い。

(4)抑うつ:気分が落ち込んで活動するのが嫌になる。

すると、ワーカホリックの人の半数近くが4つのうちのどれかの精神障害の兆候を抱えていた。ワーカホリックではない人と比較すると、その割合は次のとおりだった(複数の精神障害を抱える人もいる)。

(1)ワーカホリックの人:注意欠陥多動性障害(32.7%)、強迫性障害(25.6%)、不安障害(33.8%)、抑うつ(8.9%)。

(2)ワーカホリックでない人:注意欠陥多動性障害(12.7%)、強迫性障害(8.7%)、不安障害(11.9%)、抑うつ(2.6%)。

本人の性癖か、精神障害か「あいまい性」が怖い

この結果について、アンドレッセン博士はこう語っている。

「ワーカホリックの人に精神障害を抱える人が非常に多い理由に3つの可能性が考えられます。ワーカホリックが精神障害の原因であること。その逆で、精神障害がワーカホリックの原因であること。3つ目は、ワーカホリックと精神障害に共通する遺伝的な原因があることです。いずれにしても、医師の立場からすれば、どれほど成功した人でもワーカホリックの人は、精神障害の面から診る必要があります。ただし、忙しく働く人をすべて依存症と決めつけるべきではありませんし、区別がわかりにくいことも確かです」

ワーカホリックは、本人の性癖なのか精神障害なのかわかりにくい「あいまい性」に問題があるというわけだ。もし、アナタが仕事以外に夢中になるものがないとしたら、一度、「ワーカホリック7項目」の診断表で自己採点してはいかが。