赤ちゃんが睡眠中に突然死…。 原因はセロトニン不足!?

写真拡大

 

さっきまで元気だった赤ちゃんが、睡眠中に突然死亡してしまう…。そんな恐ろしい病気「乳幼児突然死症候群(SIDS)」。 生後2〜6ヵ月ごろまでの赤ちゃんに多い病気で、日本ではおよそ6,000〜7,000人に1人の割合で発症しているのだそう。病気の原因や治療法について研究が進む中、近年「『SIDS』の発症は脳内のセロトニン量が関係している」という発表が注目を集めています。

 

睡眠中に「SIDS」で突然死した赤ちゃんには“セロトニン”が少ない

 

「SIDS」を解明する上で1つのポイントとなったのが、脳内の中でも特に「脳幹下部のセロトニンの量」。脳幹下部は血液循環や体温調節など、生命活動を維持する上で重要な自律神経の中枢を担っているため、「この部分のセロトニン量が減ると、呼吸がうまくできなくなるのではないか」と考えられたのです。

 

そもそもセロトニンとは、ドーパミンやノルアドレナリンと並ぶ神経伝達物質の1つ。体内の中でも最も多く存在するのが腸の中で、セロトニン全体の約80%を占めており、腸内環境を整えて消化吸収を助ける働きを持っています。また、全体の8%を占めている血液中のセロトニンは血管の収縮作用に深く関わっているとか。さらに、脳内にも全体の2%と割合は少ないもののセロトニンが存在し、体内時計の調節や覚醒状態を保つなど睡眠リズムの形成に関わるほか、睡眠ホルモンのメラトニンを作る上でも重要な役割を持っています。このセロトニンの生成で欠かせないのが、乳製品や卵などに含まれる必須アミノ酸のトリプトファンです。

 

2010年、「米国医学協会誌」でセロトニンとトリプトファンの関係についての研究が発表されました。「睡眠中に『SIDS』で死亡した赤ちゃん」と「他の原因で死亡した赤ちゃん(対照群)」を対象に、セロトニンとトリプトファン水酸化酵素の量を調べました。
この結果、「SIDS」群は対照群に比べて、呼吸のコントロールを司る脳幹下部でセロトニン量が26%、トリプトファン水酸化酵素は22%少なく、セロトニン受容体の量も不足していることが判明。セロトニン不足が赤ちゃんの睡眠中の呼吸機能に何らかの影響を与えていることが推察できる結果となったのです(※1)。

 

無呼吸から回復するカギは“セロトニンと受容体”

 

さらに、アメリカ・ニューハンプシャー州でダートマス大学医学部チームが、セロトニンと呼吸の関連性についてラットを使った研究を行いました。実験では、生後7〜21日の赤ちゃんラットの気道に水を少量注入し、喉の化学反射である反射性無呼吸を誘発させた上で、脳幹の一部にセロトニンとその他の物質を注入して時間を計測。すると、セロトニンを注入した時には「反射性無呼吸の時間が10秒から2秒に短縮された」と言います。これにより、「セロトニンが赤ちゃんの睡眠や覚醒、正常な呼吸を取り戻す上で重要な役割を持っている」との結論が導き出されたのです。

 

ただしこの結果は、特定のセロトニン受容体タイプ「5-HT3」が活性化した場合に限り、「SIDS」がすぐに解決されるわけではないようです。とはいえ、受容体「5-HT3」は無呼吸心停止状態から自然回復する作用の発動に深く関わっていると考えられ、「SIDS」を予防する上で重要なキーとなることは間違いないと考えられています。「5-HT3」の仕組みやセロトニンが不足する原因についてはまだ研究中だそうですが、今後の発表に期待が高まります。(※2)。

 

現在では、「SIDS」の予防策として「添い寝やうつ伏せ寝をしない」「受動喫煙を避ける」などさまざまなアドバイスがされています。しかし将来、セロトニンの減少を食い止めるための手段が確立されれば、たとえうつ伏せで窒息状態になってしまったとしても、自然と赤ちゃんが目を覚まして泣き声をあげたり、もがいたりできるようになり、赤ちゃんが睡眠中に窒息して死亡するという悲劇はなくなるかもしれませんね。

 

●眠れないのはオトナだけじゃない!乳幼児の睡眠不足が深刻化していた

●5歳までに寝付きが悪いのを直さないと危険! 子どもの睡眠習慣チェック

●赤ちゃん(1〜6か月)とママの睡眠

 

参考
※1 Sleep Review/Serotonin Reduces Apnea, Could be Clue to SIDS
AFPニュース/低セロトニンが乳幼児突然死症候群の原因か、米研究結果

 

photo:Thinkstock / Getty Images