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ルネサス エレクトロニクスは6月28日、同日行われた株主総会ならびに取締役会にて、かねてより予定していた呉文精氏の代表取締役社長兼CEOへの就任が承認されたと発表した。

就任に際して会見を行った呉氏は冒頭、半導体業界は1980年台の総合電機メーカーを中心とした垂直統合型(IDM)、台湾や米国を中心としたファブレス、ファウンドリによる水平分業とビジネススタイルの中心が変化し、2000年代に入ると、アナログ半導体やパワー半導体といった専業メーカーの躍進が目立つようになってきたことに触れ、「あるセグメントに特化して、経営資源を集中させていった企業が勝ち残ってきた。ルネサスも総合電機メーカーから飛び出し、独立系半導体専業企業となり、現在、マイコンを中心にセグメントに特化する形で戦うようになってきた」とルネサスが業態変化を果たし、現在、成長に向けたアクセルを踏むフェーズに突入したことを強調した。

産業革新機構を中心とした第3者割り当て増資を2013年に実施して以降、同社は製品ラインアップの整理、生産拠点ならびに人員の整理といった構造改革を実行してきた。その結果、2013年10月時点では注力するべき製品の割合は65%であったが、現在はそれが91%まで高まり、競争力が出てきたほか、呉氏も「ルネサスの場合、競争力のない比較的古い設備が多すぎた」と語るように、ファブライト化を進めることで、22ラインから12ラインまで生産ライン数を減らし、固定費の抑制を実現しており、それらの結果として、2016年3月期業績として、営業利益率15%を達成したとする。

また、「為替変動への対応力として、営業利益率が10%だと、為替の動き次第で利益がゼロになる可能性もある。4〜5%の利益率であれば赤字にもなる。そうした意味では少なくとも10%。グローバルの勝ち組半導体企業は15%以上を達成しており、そこを狙っていくためには、これを維持することが目標となる」とし、変革を進めてきたこれまでの経営層の努力に賛辞を贈った。

では呉氏は、これからのルネサスをどういった方向へ導こうとしているのか。「ルネサスのことも半導体のことも勉強を始めたばかり」と謙遜する一方で、「半導体のプロではないから、(技術などに関する)細かいことは聞かない。そうした知見はすでに社内に十分ある」と、ルネサス従業員には力があるとし、「実行力があるし、着実に成果をあげる。工場の数が減り、人員も減ったが、生産品質は向上しているし、新規のデザインインのペースもむしろ増している。こうした環境は非常にすばらしいことだと思う」と客観的に見ても、すでに会社としての実力は付いているとの見方を示す。

そうした地力を踏まえ、「選択と集中により、売り上げが7000億円を切るところまで低下している(2016年3月期)。元々は統合以前の3社(日立製作所、三菱電機、NEC)それぞれで7000億円程度ずるあったわけだが、グローバルで戦うためには、もう1度成長を果たさないといけない。営業利益15%を維持する前提で、開発費を絶対金額で確保し、もと来た道を戻るのではなく、戦略セグメントをはっきりさせて、そこに向かって進んでいく」と、売り上げの拡大に舵を切ることを明言。「これまでも競争力のあるところは伸ばしてきたが、世界一を目指すまで行けていなかった。そうした部分をより伸ばしていく」と方向性を示すも、「(方向性を)間違えたくない、という想いが社内でまだ強い」という社内の事情も吐露。そうした社内に対し、「ワールドカップに行きます、という話をして、これくらいなら予選突破はできます、というレベルであれば、そもそも出場しなくて良い。必ず、こういった戦い方であれば優勝できる、というレベルの戦いを目指そう」といった例え話を交え、「優勝」という2文字を目指した道筋を明確に示す取り組みを進めているとした。

最後に呉氏は、「(グローバルを舞台に競合と戦って)勝つ自信はある。石にかじりついてでも勝ってみせる。例えば現状、日本の半導体や家電メーカーの競争がスポーツの試合だったとしても、なりゆきで行けば優勝を狙える、という会社は少ない。しかし、本当の会社経営は、自らが実行プランを作って、信念と情熱で未来を作っていくものだ。競合他社の状況と合わせてみても、ルネサスが負ける要素は何一つないと思っている。人材、技術ともに良いものは揃っており、それを1つにまとめることができれば、自らが決めたセグメントで勝てる」と社長就任に際しての抱負を語り、日本にマイコンを中心としたロジック半導体を産業として残せるかどうかの戦いを世界に挑むビジネスとしての体制の構築を進めていくとし、今年中の具体的な数字的を含めた経営方針などの話を出していきたいとした。

(小林行雄)