安倍政権が地方創生のために設立した人材サービス会社、日本人材機構の小城武彦社長が「都市から地方へ、人の流れを変える―地方創生『課題』から『希望』へ」と題して講演した。写真は講演会の模様。

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安倍政権が地方創生のために設立した人材サービス会社、日本人材機構の小城武彦社長が「都市から地方へ、人の流れを変える―地方創生『課題』から『希望』へ」と題して講演した。長年、東京一極集中の弊害と地方振興が叫ばれる中で是正されない要因として、地方経済の厳しい現状を列挙。「地方こそ、新しい日本。都市圏から優秀な経営人材を送り込み、地方の企業と地域を活性化したい」と力を込めた。

日本人材機構は、官民ファンドである地域経済活性化支援機構の100%子会社。安倍晋三政権の掲げる「地方創生」を人材面で支えようと、有能な人材の大都市圏から地方への転職を進めるため、昨年8月に設立された。短期間で結果を出すことを目指す一方、民間派遣会社への圧迫を避けるため7年で使命を終える「時限会社」とした。

小城氏は、通産省(現経済産業省)で13年勤務した後、カルチュア・コンビニエンスクラブ(CCC)の役員・代表を務め、産業再生機構主導のカネボウ再建に同社代表取締役として力を発揮。さらに丸善CHIホールディング(旧丸善)社長に就任、出版業界の構造改革に取り組んだ。

講演要旨は次の通り。

地方には有力な中堅・中小企業が多いが、その大半が後継者難に直面。将来の事業計画や成長戦略の選択肢を十分に描けないなどの悩みを抱えている。地方の企業に対し、東京の大企業などで財務や管理部門の経験を積んだ幹部人材を紹介・派遣し、経営成長戦略などを立案し主導してもらうのが狙いだ。大都市には地方企業の転職情報がほとんどないため、情報を発信し、必要に応じてコンサルティングサービスや経営改善ノウハウを提供する。

長年、東京一極集中の弊害と地方振興が叫ばれているが、是正されない要因として、地方経済の厳しい現状が挙げられる。すなわち製造業の海外移転が進んだことや、公共事業の縮小などにより、地方製造業や建設業の雇用吸収力が低下、労働集約型サービス業による雇用吸収が進み、労働生産性や賃金水準が下落。これに伴って労働力が流出するという「悪循環」に陥っている。

米国と比べ日本は、製造業では高い生産性を誇るが、国内総生産(GDP)・就業者数で7割を占め、地域経済を支えるサービス産業を中心とした非製造業の生産性は低い。こうした現状を打破するためには、地方の産業の生産性改善による賃金水準の向上が不可欠だ。

地方産業の生産性向上に向け、(1)事業モデルの改革(2)事業プロセスの刷新(3)新規事業進出(4)海外進出など新市場開拓―などが必要だ。地方の企業にあまりいない「知見・経験」を持った「都市圏の経営幹部人材」の派遣を提案したい。

都市部から地方へ人材が流れていくことが日本の「新しい常識」になるようにしたい。地方と大都市の給与格差についての先入観が大きいこともネックとなるが、当社の報酬設定は弾力的だ。大都市で年収数百万円の部長クラスの人材に、地方企業が1000万円以上を提示した例もある。企業規模の小ささは、事業運営のリアリティーの高さ、全体感や仕事のスコープの広さに通じる。オーナー系企業には決断の速さや、成長を実感しやすいという長所があり、「やりがい」や「生きがい」が大きい。

民業でうまくいっていない部分に、(地域経済活性化支援機構など)官製ファンドからお金を入れて、うまく回る世界を作る。この流れができ上がったら、7年時限の当社(日本人材機構)は撤退する。国が一時的に関与するのは民業圧迫にはならず、適切だと思っている。都市圏から経営人材を送り込み、地方の企業と地域を活性化したい。「地方こそ、新しい日本」であり「優秀な人材」の投入により地方創生を実現したい。(八牧浩行)