週末は温泉に

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「温泉入浴が動脈硬化の予防につながる可能性がある」という研究成果が示された。悪玉コレステロール値を下げるというのだ。

温泉は日本各地で湧出している。習慣的に入ることで、リラックスや疲労回復にとどまらない効果を発揮してくれるかもしれない。

温泉入浴習慣がある男性は悪玉コレステロール低い

研究は、東京都市大学人間科学部教授で温泉療法の専門医である早坂信哉氏が2016年5月14日、日本温泉気候物理医学会・学術集会で発表したものだ。静岡県熱海市の協力のもと、14年度に同市特定健康診断を受けた1092人の市民にアンケート調査を実施。(1)週1回以上の温泉入浴習慣の有無、(2)性別、(3)65歳以上・未満、でグループ分けし、健康診断項目を統計学的に分析した。

その結果、65歳未満では、温泉入浴習慣がある男性は、ない男性に比べて「悪玉コレステロール」の値が低かった。65歳以上では、温泉入浴習慣がある女性は、ない女性に比べて「善玉コレステロール」の値が高かった。

悪玉コレステロール値が高いと動脈硬化を引き起こす危険性が高まる。逆に、善玉コレステロールは悪玉コレステロールの働きを阻止し、動脈硬化を防ぐ。早坂氏は「温泉入浴習慣がコレステロール値に影響し、健康効果をもたらす可能性が示された」と述べている。

療養目的での短期間の温泉入浴は、昔から「湯治」として行われてきた。温泉には、塩化物泉や二酸化炭素泉といった「泉質」ごとに、切り傷、皮膚炎、関節リウマチといった適応症があり、環境省が通知する基準にもとづいて、各温泉施設が療養効果をもたらす適応症を掲げている。中には動脈硬化を掲げる施設もある。

ただ、早坂教授によると、

「適応症としての動脈硬化への効果は、温泉入浴前後の一時的な状態を比較してのもの。今回のように、習慣として温泉入浴を続けることで、長期的にコレステロール値に変化が見られるというのを、1000人を超える大人数のデータで示したのは初めてです」

という。一方で、「悪玉コレステロール値が低下するからといって、ただちに週1回の温泉入浴が動脈硬化予防になるかと言うと、可能性はあるかもしれないが、まだ分からない」とし、今後の研究対象に挙げている。

研究は「スタート地点」

長期的にみて悪玉コレステロール値を下げる方法でよく言われるのは、食事や運動だ。サンマやサバ、イワシといった青魚に多く含まれる栄養素のDHA(ドコサヘキサエン酸)とEPA(エイコサペンタエン酸)には、悪玉コレステロール値の低下と上昇予防効果がある。厚生労働省は「日本人の食事摂取基準」(2015年版)で、健康増進のため1日1000ミリグラム以上のDHAを摂取するよう推奨しているが、実際は、年齢層にもよるが300〜500ミリグラムしか摂取できていないという。

中性脂肪が多いと悪玉コレステロールも増えるが、中性脂肪を落とすには日々の有酸素運動が有効だ。ところが、ランニングで燃焼させるとなると20分以上、ウォーキングでは30分以上が最低ライン。同時に疲労もたまるので、忙しいビジネスパーソンが継続するには難しいかもしれない。

その点、「週1回の温泉入浴という方法は、比較的実践しやすいのではないか」と早坂教授は述べる。日本には2万7000か所以上、1400以上の市町村に温泉の源泉があり、手軽に利用できる温泉施設も増えている。週末に疲れた体を癒しに温泉に行けば、ストレスの軽減にもつながる。

今回の研究では、水温や入浴時間、泉質による違いといった、具体的な温泉入浴方法までは比較できていないが、早坂教授は「これはスタート地点。これから詳細な研究を進めていく」と意欲を示している。