photo by Heinrich-Böll-Stiftung via flickr(CC BY-SA 2.0)
 2016年6月9日、著名投資家のジョージ・ソロス氏が長い休止期間を経てトレーディングを再開したと報じられた。(参照:ウォール・ストリート・ジャーナル)

 「世界経済見通しに対する懸念から、大きな市場変動が目前に迫っている可能性があると予想し、トレーディングへの関与を強めている」という。

 3月31日時点のソロス・ファンドのポートフォリオ(参照:ナスダック)を見ると、北米のゴールドストライク、コルテス、南米のパスカラマ、ヴェラデロなどに主要金山を持ち、確認埋蔵量ベースで世界最大の産金会社であるバリック・ゴールド(ティッカーシンボル:ABX、本社カナダ)の株式保有を0株から1900万株に増やし、金額ベースでポートフォリオ中1位の銘柄とした。他の銘柄の売買動向を含めて総括すると、今年1月〜3月の動きでは、ソロス・ファンドは米国株を売却し、金と金鉱株を購入した。

◆ジョージ・ソロスの見立てと、金と金鉱株の動き

 米国株を売却し、金と金鉱株を購入したソロスであるが、世界経済に関する彼の見立てはどうなっているのだろうか?ソロスの見立ては、一言でいえば「悲観」である。それも、中国経済に関する「悲観」と、英国およびEU諸国に関する「悲観」が主要な「悲観」であるようだ。

 彼は中国経済のハードランディングを予測。また、英国のEU離脱も予測していた。そして、国民投票で英国民は、英国のEU離脱を支持し、ソロスの予測が的中することとなったわけだ。

 ソロスの予測が的中し、ソロス・ファンドが買い進めていた金と金鉱株はどのように動いたか?

 6月24日、EU離脱派が国民投票で勝利した後、金価格が大きく上昇し、一時8.1%高の1オンス=1358.54ドルと、2014年3月以来の高値を付けた。また、バリック・ゴールド株(ティッカーシンボル:ABX)は、同日、20.47ドル(+1.12ドル、+5.79%)と年初来高値を更新した。

 他方、代表的な米国株の指標であるS&P500は、6月24日、2037.41ポイント(-75.91ポイント、-3.59%)となった。このように、金と金鉱株の上昇し、米国株が下がると言う、ソロスの見立て通りの結果となった。

◆ EU離脱支持派の勝利はソロスにとっても「バッドニュース」

 ソロスは英国のEU離脱を予測していたが、EU離脱を支持していたわけではない。6月20日の英紙ガーディアン(電子版)に彼が寄稿した記事を読むと、EU離脱に反対の立場を表明している。ソロスは「離脱が決まれば英通貨ポンドは20%以上下落する」との見通しを示し、「すぐさま金融市場や投資、雇用に劇的な影響が広がる」と指摘し、「英国の有権者はEU離脱の本当のコストを著しく低く評価している」と警鐘を鳴らした。(参照:日経新聞)

 したがって、EU離脱支持派の勝利はソロスにとっても、彼の「金と金鉱株買い・米国株売りポジション」の成功とは別に、「バッドニュース」であっただろう。

<文/丹羽唯一朗 photo by Heinrich-Böll-Stiftung via flickr(CC BY-SA 2.0) >