Amebaクリエイティブディレクターが語る
スマホアプリのデザイントレンド
2016年6月28日
TEXT:佐藤 洋介(株式会社サイバーエージェント)

日々進化するデバイスやユーザーに合わせ、スマホアプリのデザイントレンドの移り変わりは非常に早い。本コラムでは、アップデートによって進化を遂げたサービスUIや新機能、新サービスなどにフォーカスし、より良いユーザー体験を提供する上での工夫やサービスについて考察する。今回は、前回の連載で紹介した「Snapchat」が今年に入り密かに買収した「Seene」という3D写真を生成する写真投稿型のSNSを取り上げたい。

まず「Seene」は2013年10月にリリースされ、今も尚進化し続ける3D写真に特化したSNSである。その独特な3Dマッピング技術により、リリース当初から話題となったアプリで、今後も注目して欲しいサービスだ。

いったいどんなアプリなのか? 早速、気になるそのUIとアッと驚く3D写真のユーザー体験についてひも解いていこう。

「Seene」
●iOS版アプリは こちら
●Android版アプリは こちら

まるで箱庭!? アッと驚くユーザー体験とシンプルな操作

まずアプリを起動して真っ先に驚くのが、まるで箱庭のようなハイクオリティな撮影事例である。特に、DISCOVERのページの「Staff Picks」で紹介されているおすすめの3D写真は圧巻で、まさに、その場に居るかのような臨場感を体感できる上、その写真のクオリティの高さと仕上がりに驚かされる。また、3D系のコンテンツ表現としては一般的だが、端末のジャイロスコープを用いた描写表現も、見ているユーザーに対して「予期せぬ発見」を助長し、眺めているだけでワクワクさせる仕組みとして一役買っている。

そんなハイクオリティな写真を撮るための操作は驚くほど簡単で、カメラモードに切り替えて対象にピントを合わせ、少しだけ回り込みながら(カメラを動かすのではなく、体をズラすとうまく撮れる)対象を撮影するだけなのである。

はじめはそのあっけなさに驚かされるが、撮影されたデータから奥行きを自動的に補完し、シンプルな操作だけで簡単に立体的な表現ができてしまうから不思議である。

その後、フィルターや被写界深度を自由に調整し、任意でテキストを入れたらすぐに投稿することができ、自分で投稿した写真は動画形式やアニメーションGIFなど、任意の形でカメラロールなどに保存できてしまう。さらに外部SNSにシェアした投稿からのランディングページでは、Embed用ソースコードの取得が可能なほか、任意のWebサイトなどでも活用できる。

VRとの相性抜群! 無限に広がるコンテンツの可能性

3Dと聞いて、昨今注目されているVR(バーチャルリアリティ)を思い浮かべる人も多いのではないかと思う。まだまだ身近なものとは言い難いVRだが、「Seene」で撮った3D写真は「Google Cardboard」用のVRコンテンツとしても楽しむことができるのである。

「Google Cardboard」を用いたVRコンテンツは年々増えてきているが、ユーザーが普段写真を撮るような感覚で、簡単にVRコンテンツが作れてしまうのも、このアプリの魅力の1つである。

機能が複雑化しながらも、より便利な進化を遂げるアプリサービスにおいて、よりシンプルかつ簡単に表現することがより良いユーザー体験にとって重要であり、技術に特化している「Seene」だからこそ、そのギャップを最大限に引き出してアプリの魅力へと昇華できているのではないだろうか。

最適化されたレイアウトと情報の再構築

ここまでは「Seene」の持つ3Dの技術的な側面について紹介してきたが、ここでは端末に最適化されたUIについてフォーカスしたい。

上記の画像はAndroid版のアプリの詳細画面だが、Portrait(縦向き)では縦のスワイプでコンテンツを読み進めるのに対し、Landscape(横向き)ではスプリットビューとなり、左右が独立して機能するようなレイアウトで表現され、画面サイズによって最適なレイアウトが採用されている。

特にLandscape(横向き)ではコメントが1階層目に集約され、より詳細な情報を1画面で見れるように工夫されている。

3D写真を最大限楽しみたければPortrait(縦向き)、コメントやリアクションを楽しみたければLandscape(横向き)といったように、レイアウトの差だけでなく、機能的な差をあえて出すことでユーザーの閲覧スタイルを広げることができる。

■まとめ新感覚の3D技術が開拓するコミュニケーションの未来

独自の3D技術を駆使し、アッと驚くようなユーザー体験を提供する「Seene」。ここで紹介した機能のほかにも、セルフィーのモデリングデータを生成するモードや、そのモデリングデータをWebで活用するために他サービスとの連携など、3Dに特化した独自の機能を数多く持っている。

今回、刹那のコミュニケーションに特化した「Snapchat」が買収した狙いとしては、「立体的なセルフィー(自撮り)」という新たなユーザー体験を生み出すという意味もあるかもしれないが、「Seene」が生成できるその様々な3Dデータを、VRや独自のプラットフォームの中で活用することが予想できる。

こうした先進的なイノベーションは、電話などのコミュニケーション手段がヘッドマウントディスプレイによる3D表現やホログラムなどに取って代わり、よりバーチャルでリアルなコミュニケーションへと進化する準備が着実に整い始めている。

そういった最先端のコミュニケーションを最適につなぐためにも、我々サービスデザイナーは今後さらにUIの垣根を越えて、アウトプット先に応じた多彩な表現が求められるのではないだろうか。

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[筆者プロフィール]
佐藤 洋介(さとう ようすけ) /チーフ・クリエイティブディレクター
「Ameba」のクリエイティブ統括室 室長として、スマートフォン向けサービスのデザイナーを統括。クリエイティブ責任者として各サービスのUIデザインを監修。

●Blog:「マテリアルデザインを踏襲した、おすすめアプリ10選
    「スマホUIデザインのトレンドを追うために、毎日行う3つの習慣
●Twitter:@sugaar