「よろしかったでしょうか」はアルバイト敬語なので、ビジネスでは避けるべき言いまわしであると同時に、もっとも不快と感じる丁寧語のひとつとされています。

今回は電気メーカーに勤める32歳、三上佳奈さん(仮名)から寄せられた質問です。

「同じ部署で働く25歳の女性社員についてです。彼女は私が何か説明するたびに“なるほどですね!”と相づちを打ちます。それが耳障りでしかたがありません。メールで仕事の相談を受け、それに答えたときも“なるほどですね!”です。慕ってくれるし、私もかわいがっている後輩ではあります。でも、“なるほどですね!”と言われると小バカにされている気がしてしまうのです。私の心が狭いからでしょうか」

鈴木真理子先生に教えていただきましょう。

「なるほどですね」は避けるべき返答用語

「なるほど」は、男女問わず、ビジネスパーソンが相づちによく使う言葉ですね。

「なるほど」は、相手の言っていることを受け止めた、しっかり聞いていた、という意思表示として使われます。「なるほどですね」はその言葉に「です」をつけて丁寧語に、さらに確認の終助詞「ね」をつけて、同調、共感を表しているのだと思われます。

つまり、「なるほどですね」は文法そのものは間違っていません。でも、「なるほど」という言葉じたい、不遜に感じる人も少なくなく、相手に何度も「なるほど」と繰り返されると、三上さんのように不快感をもつ人も。

受け取る側が不快と感じる言葉は、ビジネスでは使わないほうがよいといえます。

身近の「なるほどですね」の浸透度をはかる

しかし、使われていくうちに言葉の意味合いは変化していくものです。また、周囲にあわせるということもビジネスパーソンとして大切なこと。

まず、自分の職場で「なるほどですね」が流通しているかどうか、周囲をみわたしてみましょう。上司や先輩など、自分より目上の方が商談等で相手の方に「なるほどですね」を使っている場合、ある程度、許容されていると考えてよいでしょう。しかし、使われている頻度が低い、あるいは若手だけが使っている場合は「若者言葉」と認識されていると考えられますので、使うべきではありません。「なるほど、そうですね」「なるほど、よくわかりました」「なるほど、おっしゃるとおりです」などと言い換えるとよいでしょう。

アルバイト敬語にも要注意

受け取る相手が「ひっかかる」敬語として、もうひとつ注意してほしいものに「アルバイト敬語」があります。これは、コンビニエンスストアやファミリーレストランなどで接客業のアルバイトをした経験をもつ若者が使いがちな敬語の総称です。たとえば、「お会計のほう」「飲み物のほう」など、名詞に不必要な「〜のほう」をつけて敬語風にする言い方。ビジネスの場では「〜のほう」はつけないのが正しい。

また、「こちらが会議資料になります」という「〜になります」言い方も「ひっかかる」と感じる人が多いものです。シンプルに「会議資料です」あるいは「会議資料でございます」としましょう。

「よろしかったでしょうか」も、現在形のことを話す場合は「よろしいでしょうか」が正解です。

謙譲語+「れる」「られる」をつけても尊敬語にならない

さらにもうひとつ。相手の好意には尊敬語、自分の行為には謙譲語を使うことはもちろん知っていると思いますが、混ざってしまっている人をみかけます。
たとえば、「お名前はなんと申されますか」という言い方。一見、正しいように感じる人もいるかもしれませんが、申す、は謙譲語です。そこに「れる」をつけても尊敬語にはなりません。正しくは「お名前はなんとおっしゃいますでしょうか」です。また、上司に来客を告げるとき「○○様がおられます」と言っている人はいないでしょうか。これも間違いで「○○様がいらっしゃっています」が正解。

間違った丁寧語は、受け取る側に「ひっかかり」を感じさせてしまいます。いちど妙な癖がついてしまうとなかなか修正は難しいのですが、正しい知識を身につけ、練習あるのみです。「受付でお尋ねください」と「受付で伺っていただけますでしょうか」はどちらが正しいでしょう?(正解は前者)といった問題や話し言葉を敬語に変える問題を出し合ってみたり、ゲーム感覚でブラッシュアップさせていくのがおすすめです。



■賢人のまとめ
「なるほどですね」は「なるほど、そうですね」などと言い換えて。また、尊敬語と謙譲語の取り違いをしている人や、謙譲語+尊敬の助動詞で敬語になると勘違いしている人が多い。社内や部内で「敬語で会話しあうワークショップ」や「丁寧語でメールを送りあうワークショップ」を提案&実践して、ゲーム感覚で学んでいくのがベター。

■プロフィール

女子マナーの賢人 鈴木真理子

三井海上(現・三井住友海上)退職後、“伝える”“話す”“書く”能力を磨き、ビジネスコミュニケーションのインストラクターとして独立。セミナー、企業研修などで3万人以上に指導を行う。著書は『ズルいほど幸せな女になる40のワザ』(宝島社)のほか、近著『もう必要以上に仕事しない!時短シンプル仕事術』(明日香出版社)、『絶対にミスをしない人の仕事のワザ』は7万部に迫るヒットとなる。 

(株)ヴィタミンMサイトhttp://www.vitaminm.jp/