公園近くでスズメを放す市民たち

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 中国で、仏教の教えに従ったある行為が、問題になっている。

 6月12日、山東省青島市の町中で、数千羽のスズメが大量死しているのが発見された。中国各地で大気汚染が深刻化する中、野生生物がその被害を被っている……と思いきや、実は大量死したこれらのスズメは、捕らわれた生き物を自然に返すことで功徳を積むという、仏教の「放生(ほうじょう)」によって野に放たれたものなのだ。

 それまで飼いならされていたスズメたちは、自らエサを取ることも、遠くまで飛ぶこともできなかったのだ。また、路上を走る車に轢かれて死んだスズメもいたという。

 この「放生」、日本では奈良時代より行われているという。中国でも、最近では熱心な仏教徒たちによって頻繁に行われており、生きている魚や鳥などを養殖場から購入し、念仏を唱えたりしながら野や池に放す行事が各地で行われている。

 この一件には、ネット上でも非難の声が相次いだ。

「人間からエサをもらうことに慣れているスズメが、外で生きられるわけがない」
「飼っている生き物を途中で放り出すようなものだ」
「供養のために生き物を外に放つなんて、単なる人間の自己満足だ」
「放生なんて言いながら、実際は殺生しているのと同じ」
 
 4月にも、北京市北部の懐柔区で、外来種のホッキョクギツネなど約300匹が無許可で山に放生され、一部のキツネが付近で飼われていたニワトリをかみ殺す事件が起きている(北京晩報)。

 放生をめぐる問題について、中国事情に詳しいライターの吉井透氏はこう説明する。

「急激な経済成長も停滞気味となる中、中国では仏教が静かなブームとなっている。あの手この手で財を成した者たちの中には、これまでの人生に罪悪感を抱いている者もいるのでしょう。といっても、頭を丸めて修行の道に入るという人は少ない。放生は、功徳を手っ取り早く金で買いたいという富裕層の間で人気が高まっており、偽僧侶による無許可の放生業者も跋扈している」

 一方、「放魚日」に指定されている6月6日には、全国の海や川で大量の魚が放流された。ちなみに、こちらは魚の個体数を増やすことを目的としたもので、放生とは意味合いが異なる。

 この日、黄河には20万匹の魚が放流されたが、翌日、川下に位置する甘粛省蘭州市では、川辺に大量の魚の死骸が浮かんでいるのが発見された。その写真がネット上にアップされると、「汚染された黄河の水に耐え切れずに死んだのでは」という疑惑が広がった。

 これに対して甘粛省の当局者は、「川に運んでくるまでに弱った魚の一部が死んでしまっただけ。放流された魚のうち、大きくなるまで生き残れるのは5%程度。川の水質とは無関係」と、ウワサを否定するのに躍起となった。

 また、放魚日には、下流で多くの人々がタモや釣り竿を手に待ち受け、川に放たれた大量の魚を捕ってしまうという事態も起きている。

 ともかく、人間の都合で慣れない場所に放たれる生き物にとっては、迷惑この上ない話だろう。