2016グランドスラム第3戦・ウインブルドンが、6月27日からロンドンで開幕する。

 錦織圭(ATPランキング6位、6月20日付、以下同)は、昨年に続いて万全とはいえない状態で臨むことになりそうだ。今月中旬に行なわれた前哨戦のATPハレ大会1回戦で、錦織は左わき腹筋を痛めて、2回戦を棄権した。

「今年もハレで痛めたので、やっぱりヨーロッパでの(連戦の)疲れだったり、芝に入ると自然とショットを強めに打つので、そういう影響もあると思います。気づかないところで、疲れが出ているのかな。今週(大会直前の週)休みながらも、しっかり準備はできているので、1試合目の月曜日には大丈夫だと思います。もちろん来週から始まるので、少しずつ気持ちは入れ、リラックスもしながら集中したいと思います」

 昨年もATPハレ大会準々決勝で、左ふくらはぎに筋膜炎を起こして、準決勝を途中棄権し、ウインブルドン1回戦は勝ったものの、2回戦を棄権した苦い経験があるだけに、錦織としては、同じ轍を踏みたくないところだ。

「ケガは基本的には大丈夫。長い試合があったりすると、まだ不安はある」と語る錦織は、ツアー随一の素速いフットワークを誇るが、グラス(天然芝)での動きに一番難しさを感じており、その克服に今年もチャレンジする。

「芝でのフットワークは楽ではないですね。あんまり粘ってプレーすることができないので。フットワークがカギになります。だんだん良くはなってきてはいます」

 約11ヵ月におよぶワールドテニスツアーの中で、グラスシーズンはウインブルドンを含めても5週間と短く、ツアーの中では特殊な期間といえる。その中で錦織は、自分のテニスを模索している。

「(グラスシーズンが)なかったらな〜とまでは思わないですけど、今のところは(グラスが)そんなに好きではないですね。まだ、自分の中でしっくりいくテニスが100%見えていない。ハードやクレーコートに比べて、そこがやっぱりまだモヤッとしたものが正直ありますし、試合で勝っていって、さらにいいテニスができてくれば、より好きになるでしょう」

 ウインブルドンでは、過去2年間のグラスシーズンでの成績を重視する大会独自のシードが採用されるが、錦織はそれに左右されることなく、ラファエル・ナダル(5位)の欠場によって、1つ繰り上がって第5シード(自己最高)になり、大会ドローのトップハーフに入った。

 1回戦の相手はサム・グロス(123位・オーストラリア)に決まり、開幕日の6月27日に試合が行なわれる予定だ。対戦成績は錦織の1勝0敗だが、グロスは、テニス界最速となる時速263kmのサーブを放ったことのあるビッグサーバーで、「サーブがすごくいいので、芝では一番やりたくない選手ですね」と錦織は苦笑いする。

「なかなかブレークは難しいと思いますけど、リターンがカギになりますね。セカンドサーブのときに、どれだけリターンを返せるかカギになります。なるべくストローク戦に持ち込んで、プレーできれば......」

 錦織はここを勝ち上がると、2回戦では、ジュリアン・ベネトー(547位、フランス)とイリヤ・マルチェンコ(86位、ウクライナ)の勝者と対戦する。ベネトーとの対戦成績は、錦織の3勝1敗。マルチェンコとの対戦成績は、錦織の1勝1敗(チャレンジャー大会を含む)だ。

 さらに勝ち進んだ場合、シード選手同士の対戦になり、3回戦では第29シードのパブロ・クエバス(25位、ウルグアイ)で、錦織の1勝0敗だが、クエバスは、直前のATPノッティンガム大会で準優勝しており、グラスで調子を上げてきている。4回戦では、第9シードのマリン・チリッチ(13位、クロアチア)で、錦織の7勝3敗。チリッチは2014年から2年連続で、ウインブルドンベスト8に進出している。

 そして、準々決勝ではウインブルドン最多タイとなる7回の優勝を誇る、第3シードのロジャー・フェデラー(3位、スイス)で、錦織の2勝4敗。両者はまだグランドスラムで対戦したことがない。準決勝では、ウインブルドンで3回優勝、ディフェンディングチャンピオンとなる第1シードのノバク・ジョコビッチ(1位、セルビア)。錦織の2勝9敗で、現在錦織の8連敗中だ。

 ウインブルドンは、錦織が唯一ベスト8以上に進めていないグランドスラムであるため、トップ10プレーヤーとして、この現状にもちろん満足しているわけではない。

「ここで結果を出したいというのは、やっぱり頭には常にありますね。以前フレンチ(全仏)でなかなか結果が出なかったのと同じように。最低やっぱり、(ベスト)8、4に入るのを目標としています」

 過去にウインブルドンで、錦織のようにリターンが得意で、フットワークの速い選手が優勝したことはある。1992年のアンドレ・アガシ(アメリカ)や2002年のレイトン・ヒューイット(オーストラリア)がそれで、ともに"世界ナンバーワンのリターナー"として、一時代を築いた元王者だ。

「歴代の優勝を見ると、自分のスタイルに近い選手もいるので、早く(グラスで活躍できる自分のスタイル)見つけられたらなと思います」

 26歳の錦織が鬼門となっているグラスコートをどう攻略するのか、8回目のウインブルドンで、どんなテニスを発見するのか注目したい。

神 仁司●文 text by Ko Hitoshi