■福田正博 フォーメーション進化論

 最近の日本代表の戦いを見て感じていることに、日本人選手の「インテンシティ」(プレー強度)の低さがある。キリンカップのボスニア・ヘルツェゴビナ戦では、国内組の若い選手たちが、インテンシティで上回る相手に押し込まれるシーンが目についた。

 そもそもインテンシティという言葉が日本サッカー界で使われるようになったのは、ザッケローニ元監督が日本代表指揮官だった2013年頃からだ。

 意味としては「プレー強度」を指すが、これは体格の大きい、小さいとは別もので、当たり負けしない体幹の強さ、走り負けない持久力、俊敏性など、プレーの強さや迫力、あるいは激しさのことを言う。

 日本代表でインテシティの高い代表格は長友佑都だろう。彼は自分よりも体の大きな選手と対峙しても、押し込まれることがほとんどない。長友は肉体を鍛えあげることでインテンシティを高めているからだ。長友だけではない。本田圭佑にしろ、岡崎慎司にしろ、欧州の主要リーグのクラブに在籍している選手たちは、インテンシティが高い。

 言い換えれば、日本人選手が海外リーグでプレーをするためには、インテンシティを高めなければ、外国人選手と互角に渡り合うことができないし、レギュラーになることも難しいということだ。

 しかし、Jリーグに目を向けてみると、海外の主要リーグと比較して、ほとんどの日本人選手はインテンシティが低いと言わざるを得ない。これは、Jリーグでは、試合で対峙するのは日本人選手同士のことが多いため、高いインテンシティを求めなくてもプレーできてしまうためだ。

 もちろん、インテンシティの高い外国人選手もいるが、彼らは出場枠が限定されているので、日本人選手のそれはなかなか向上しない。

 この問題の解決策のひとつとして、Jリーグの「外国人枠の完全撤廃」があると私は考えている。

 現在、Jリーグでは外国籍選手を1チーム3選手まで登録できる。このほか、アジアサッカー連盟に加盟する選手を1名(アジア枠)と、Jリーグで提携している8カ国(タイ、ベトナム、ミャンマー、カンボジア、シンガポール、インドネシア、イラン、マレーシア)の国籍を持つ選手1名を登録できる。

 この枠を使えば、最大5人の外国籍選手を起用できる。だが、実質的にアジア枠や8カ国枠の選手が、日本人選手のインテンシティのレベルアップにつながるかと考えると、疑問符がつく。

 海外組を見ればわかるように、よりレベルの高い環境に身を置くと、プロとして生き残るために否応なくプレーのレベルアップを意識する。それがリーグ全体のレベルを押し上げ、日本代表の強化につながっていくはずだ。

 外国人枠が完全撤廃となれば、日本人選手のプレーする環境が減ると危惧する意見も出るだろう。だが、外国人選手との競争から守られた状態でしか出場機会を得られないのであれば、その価値は言わずもがなである。

 もちろん、若手の出場機会を保護するルール作りは必要だ。しかし、より厳しい環境で競争を勝ち抜いた選手たちがピッチでしのぎを削り、その積み重ねで、日本人選手のクオリティと強さ、そしてインテンシティが、現状よりも一段階も二段階も上がっていくのではないだろうか。

「環境が人を作る」という言葉がある。Jリーグ発足以前、日本にプロサッカーリーグが根付くはずがないという声もあった。それが93年にJリーグが産声を上げると、瞬く間に浸透していった。Jリーグは93年に10クラブで発足したが、現在はJ1・18クラブ、J2・22クラブに加え、J3に16クラブが参加する規模にまで成長している。

 プロリーグという環境ができたこと、また、ワールドカップ(W杯)出場経験のある世界トップクラスの外国人選手と対戦する、またはともにプレーすることによって、日本サッカーのレベルは飛躍的に向上し、夢舞台であったW杯にも5大会連続出場するまでになった。

 これは環境が人を作り、日本サッカーを変えた代表例だ。ただ、この日本サッカー界を大きく成長させた20数年前の変革も、やや行き詰まりを迎えている印象がある。日本サッカー界がさらにステップアップをするためにも、そろそろ環境を変える必要があるのではないか。

 9月1日から始まるW杯アジア最終予選では、体格差の大きいオーストラリアとも戦わなければならない。インテンシティに欠けるという問題点は、W杯ロシア大会以降にもついてまわるテーマだろう。

 これまでは選手個々の努力に頼る面が大きかったが、世界トップとの差は一朝一夕で埋まるものではない。それだけに、Jリーグの外国人枠撤廃を真剣に考えてみてもいいのではないだろうか。

福田正博●解説 analysis by Fukuda Masahiro