屋内でも起こる熱中症。ゆっくり時間をかけて悪化する場合もあるので注意しよう

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ここ数年、暑い夏が続き、毎年5万人もが熱中症で救急搬送されている。2016年の夏は、観測史上もっとも暑く、熱中症による死亡者数が過去最多の1700人に上った2010年と気象条件が似ていると予測されていることから、警戒が高まっている。

応急処置のポイント

熱中症とは、室温や気温が高い環境下で、体内の水分や塩分(ナトリウム)などのバランスが崩れ、体温の調節機能が働かなくなり、体温上昇、めまい、だるさ、けいれんや意識の異常など、さまざまな症状をおこす病気だ。重症化すると臓器障害を起こし、死に至ることもある。

日本救急医学会の熱中症分類では、重症度は3段階に分かれている(表を参照)。本人ではなく、周囲の人が判断するための分類だ。掬戮聾従譴任留急処置で対応できる軽症、凝戮鷲賊,悗糧汰を必要とする中等症、慧戮脇院して集中治療の必要性のある重症とされている。

『熱中症環境保健マニュアル』には応急処置として、掬戮両評があれば、すぐに涼しい場所へ移して体を冷やし、水分を与える。誰かがそばに付き添って見守り、改善しない場合や悪化する場合には病院へ搬送する。凝戮如⊆分で水分・塩分をとれないときや、慧戮両評であればすぐに病院へ搬送する...とある。しかし、実際には熱中症かどうか、さらに重症度まで判別し、的確な対処ができるかどうか自信がない人が多いのではないか。

日本救急医学会「熱中症に関する委員会」前委員長の昭和大学病院救命救急センター長の三宅康史教授によると、判別のポイントは「意識があるか」、「自力で水分を取れるか」だという。

「周囲の人がもっとも判断しやすいのがこの2つです。熱中症は人によって出る症状が違うケースもあるので、体温や症状で判別しようとするのは間違いのもと。どのような状態かを見極めることが重要です」

高齢者と乳幼児は「熱中症弱者」

熱中症は若い人ではスポーツ、中壮年では労働など、体を動かしているときに発症する「労作性熱中症」が多いが、重症化することは少ない。一方、高齢者は日常生活の中で起こる「非労作性」が多く、屋内での発症頻度が増している。

「高齢者と小さな子どもは熱中症弱者。後者は保護者が気づきやすいのですが、一人暮らしの高齢者はリスクが高まります。若い人と比べ体内の水分量が少なく、暑さに気づきにくいうえ、夏はエアコンを使いたがらない方も多い。誰かが気づいてあげないと」と三宅教授は言う。実際、救急隊員が熱中症で倒れたお年寄りの家に駆けつけ、エアコンのスイッチを入れたら暖房だった、というケースも珍しくない。

また、高齢者の熱中症は、「ゆっくり時間をかけて悪化する」という特徴がある。最初は夏バテかな? と思っているうちに脱水が進行し、腎臓が悪くなる。すると細菌に感染しやすくなり、糖尿病などの持病も悪化...という経過をたどり、3、4日かけて次第に重症化する。複合的な症状で病院に搬送され、そのままひと夏入院ということも。

「むかしは、お年寄りが『ひと冬を越えられるか』と言われましたが、いまは『ひと夏を越えられるか』が問題になっています」と三宅教授。「部屋の中でエアコンも入れず、下着も寝具も夏物に替えていない。体重も減って弱り、寝てばかりのお年寄りが一番危ない」と指摘する。

高齢者を熱中症から守る対策のひとつに温度・湿度計の活用がある。誰かが電話で「いま何度?」と確認し、気温28度、湿度70パーセントを超えたら、エアコンをつけるよう促す。少なくとも6月末から8月中旬までは、エアコンによる温度管理が必須だ。

そのためには周囲の人が常に「気にかける」ことが前提だ。家族だけでなく、「熱中症予防声掛けプロジェクト」を実施している自治体や、クロネコヤマトや郵便局など、高齢者の見守りサービスを行っている企業もある。お年寄りが自分で情報を得るのは難しいケースもあるので、いかに周知していくかが課題だ。

今年は暑さの到来が早い

環境省によると、2016年は、6都市(東京・大阪・名古屋・新潟・広島・福岡)の暑さ指数(WBGT:熱中症の危険度を判断する数値)の平均は5月初旬から高温傾向にあり、6月に入り暑さはいったん緩和されたものの、8日ごろから再び高い傾向に。例年より早い時期から暑さにさらされている。6月18日には埼玉・群馬で今年初の猛暑日を記録。13〜19日までの1週間に熱中症で救急搬送された人は1000人を超えた。

熱中症の発生には気温・湿度・風速・輻射熱(日射、地面や建物からの反射)が関係している。発生リスクがもっとも高いのは梅雨明け直後の連続した猛暑日と熱帯夜で、この時期は重症率も高い。猛暑だった2010年や2013年には、暑さのピークが複数回あったが、初回のピークで搬送者数が多く、重症患者の割合が高かったというデータも(消防庁「熱中症搬送者数」)。これからの季節はとくに注意が必要だ。

「温暖化、高齢化が進む今、熱中症はますます深刻になっています。すべての人に、熱中症に対する正しい知識を持っていただきたい。知識さえあれば、確実に防げる病気ですから」と三宅教授。

こまめな水分補給と室温・湿度の調整、外出時の日よけ対策に加え、十分な睡眠とバランスの良い食生活、ストレス解消など、日ごろから熱中症に負けない体づくりをすることもたいせつだ。正しい知識を武器に、猛暑と熱中症に備えよう。[監修/三宅康史 昭和大学病院救命救急センター長]

(Aging Style)