睡眠障害は他の病気も招く。 睡眠で善玉コレステロールを増やし、動脈硬化予防

写真拡大


睡眠不足や睡眠障害が他の病気(心臓病、糖尿病など)を引き起こすことはよく知られるようになり、そのメカニズムはさまざまな角度から研究されています。そんな中、注目を集めているのが、睡眠障害がコレステロール値の調節に悪影響を及ぼし、それが心臓病などの重病を引き起こす要因になっているという研究報告です。睡眠障害はどのようにして大きな病気を招いてしまうのでしょうか。

睡眠不足は動脈硬化につながる!? 「善玉コレステロール」の減少はなぜ起こるのか

 

イギリスの自然科学ジャーナル『Scientific Reports』誌に掲載された研究によると、睡眠障害は血液中の高比重リポタンパク質(HDL)コレステロール、いわゆる「善玉コレステロール」を減らしてしまうといいます。善玉コレステロールには、血管中の余分なコレステロールを肝臓へと運ぶ働きがあり、このコレステロール値が下がると、動脈硬化などの病気のリスクが高まります。

 

最近の研究では、善玉コレステロールが減るのはコレステロール値の調節にかかわる遺伝子の発現が減少したことによるものと指摘されました。

 

フィンランドの研究チームは、被験者21人(平均年齢23.2歳)を対象として、部分的睡眠喪失実験という次のような実験を行いました。

 

1.被験者のうち、14人には一晩4時間の少なめの睡眠を、残りの7人には十分な睡眠をとってもらう。

2.これを5日間続け、それぞれの血液を採取して、コレステロール値と遺伝子発現を分析する。

3.被験者には、普段の睡眠時間や、寝足りたと思う夜はどのくらいあったか、しっかり休養するためには何時間くらい必要かなどを尋ね、「主観的睡眠不足」も判断する。

 

これらの実験から、以下のような結果が得られました。

 

●睡眠時間を十分与えられたグループに比べ、睡眠時間を4時間に制限されたグループでは、コレステロール値の調節を行う遺伝子の働きが悪くなっていた●主観的睡眠不足の調査で「睡眠時間が足りていない」と感じているグループのほうが、コレステロール値を調節する遺伝子の発現が少なかった●同様に、「睡眠時間が足りていない」と感じているグループでは、血中の善玉コレステロール値が低かった

 

善玉コレステロールは、「悪玉コレステロール」と呼ばれる低比重リポタンパク質(LDL)コレステロールを排除する働きをもっています。善玉コレステロールが減少することで悪玉コレステロールが動脈内に溜まり、こぶのようになって血流を阻害します。この症状が進むと、こぶが破れて血栓ができ、血管を詰まらせてしまいます。このように、悪玉コレステロールの増加を放置しておくと、動脈硬化、さらには心臓病や脳卒中など、危険な病気のリスクが高まります。

 

研究者は今回の研究結果について、「短期間の睡眠不足でも健康に大きな影響が出ることが判明した。睡眠が不十分な日が1週間続いただけで、免疫反応や代謝が変わってくる。今後は、その変化の規模を見極めることが目標」とコメントを残しています(※1)。

 

コレステロールの増加が、死につながる病気を引き起こすとは驚きですよね。とくに高血圧などの持病を抱えている人は、睡眠不足にも気をつける必要があります。

 

コレステロールだけじゃない! 成長ホルモンの分泌量も血管を健康に保つカギ

 

睡眠とコレステロールの関係についての研究は、日本でも行われています。京都大学の研究チームは、男性会社員275人を対象に、血中のコレステロールや中性脂肪が基準よりも多く、心筋梗塞や脳卒中のリスクが高いとされる「脂質異常症」の有無を調査しました。

その結果、143人が脂質異常症と診断され、脂質異常症グループと正常グループを比較したところ、睡眠時間が短いほど、総コレステロール値、悪玉コレステロールのLDL値が増えることも判明しました。

 

では、なぜ睡眠が不足すると、コレステロール値が上がるのでしょうか。

 

血中の脂質を分解するには、成長ホルモンが必要だと考えられています。成長ホルモンは睡眠中に分泌されるので、睡眠不足が続くとホルモンの分泌量も下がり、分解されない脂質が血中に溜まっていくことになります。

さらに、成長ホルモンには血管の修復機能があります。睡眠障害によって適切な睡眠が得られない状態が続くと、血管が修復されずボロボロになっていき、結果的に動脈硬化などの病気を発症してしまうと考えらます。

 

動脈硬化は外からの変化が分かりにくく、「沈黙の殺人者」と呼ばれることもある病気。自分は大丈夫だと思っていても突然発作が起こることもあります。年齢にかかわらず、定期的に血圧測定などを行って血管の健康状態をチェックすることがおすすめです。

 

睡眠不足や睡眠障害が他の病気を引き起こす――。知らないうちに、睡眠不足が血管にダメージを与えていると考えれば、「少しくらい寝なくても大丈夫」なんて思わず、しっかり睡眠をとりたいものですね。

 

参考:
Medical news Today
『Sleep deprivation may lower ‘good’ cholesterol』
コレステロールに悩む人集合!原因究明LABO『睡眠とコレステロールの深い関係!』
※1 Vilma Aho, et al; Scientific Reports, 2016; doi:10.1038/srep24828
・睡眠不足は体内時計の老化が原因?知って得する生体リズムのメカニズム
・睡眠6時間以下の人は要注意! 睡眠はダイエットに遺伝子レベルで影響する
・心筋梗塞や糖尿病を引き起こすことも!? いま、知っておきたい「いびき」の怖さ

 

photo:Thinkstock / Getty Images