[電力自由化]で得する家庭、損する家庭
一般家庭における電力市場が4月、ついに自由化された。だがサービス内容は複雑、最適解を選ぶのは難しい。そこで市場に詳しい2人の識者に、お得にする方法を聞いた。

◆[電力自由化]で得する家庭、損する家庭。

 これまで、一般家庭では地域によって決められた電力会社からしか電気は購入できなかった。それが今春、ついに一般家庭における電力市場の自由化が始まり、購入先を選べるようになった。制度変更に伴って、サービスを提供する事業者は一気に増加。その数は、全国で160社を超える乱立ぶりだ。

 ところが、各社が提供するサービス内容は実に複雑。そもそも自宅の電力事情を把握していない消費者は多く、切り替えを行う家庭は少数派だ。

「使う電力量やライフスタイルによってあずかる恩恵にばらつきがあります。今回の自由化は電気料金への意識を高めるいいきっかけと考えるべきです」

 こう語るのは、元経済産業省の官僚で、現在は太陽光や風力、バイオマス発電を自身で手掛ける宇佐美典也氏だ。

「注目なのが、Looop(ループ)でんきです。電力量料金は東京電力よりも高いものの、基本料金が無料というプランがあります。一人暮らしでクーラーもあまり使わず電気消費が少ないという方は、お得になる可能性が高い」

 また、既存の自社サービスと組み合わせて、特典などでお得感を出しているところも多い。

「例えばauやソフトバンクですね。こうした会社の携帯電話を使っていて、今後も使い続けるだろう人は、各社のセットプランを利用するのもいいかもしれません。自動車での移動が多く、ガソリン消費が多い人には昭和シェル石油やJXエネルギーなどがあります。ガソリン価格が安くなりますから。他にも、東急電鉄グループの東急パワーサプライは、電力使用量に応じてPASMOカードのポイントが貯まります。いずれも電気料金そのものは大きく値下げされませんが、自社サービスとの抱き合わせで、お得になるように設定しています」

◆契約年数などの縛りには注意を!

 だが、こうした電力会社以外の事業者が提供する抱き合わせサービスには注意も必要だ。指摘するのは、関東3か所に太陽光発電所を建設した、電力市場に詳しいライターの藤本健氏。

「携帯電話会社に顕著ですが、契約した場合には2年間の縛りがあります。まさに携帯電話回線の契約と同様にユーザーを縛ろうとしているわけです。事業者による囲い込み戦略であることも意識すべき視点です」

 せっかく電力市場が自由化されたのに、こうしたサービスを選ぶことで、逆に“不自由”になってしまう可能性もあるわけだ。

「さらに、こうした事業者の場合、自ら発電所を持っておらず、外部から調達してくるんです。そうしたビジネスモデルで、そもそも電気を大幅に安く売れるはずがないですよね」

 電気の購入先を切り替えた場合、多くの家庭では安くなったとしても月に数百円程度というのも現実だ。それならば、少し節電すればいいだけの話という。

◆2020年まではトレーニング期間

 電力会社を替えても、それほどお得感がない。それでは、どうして電力市場の自由化をしたのか? 再び元キャリア官僚の宇佐美氏に解説をお願いした。

「今回の電力市場の自由化というのは、完全自由化に向けての第一歩にすぎません。次のステップ、ガス市場の自由化のある来年からはより本格的な競争が起こります。そして2020年頃をめどに、完全な自由化を行おうというのが政府の方針です。例えば、原油が上がったら即座に電力料金も上がるという仕組みになるかもしれません。これまでは電力会社が勝手に料金を上げられないように政府が見張ってきましたが、自由化はその規制がなくなるのです」